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L I M I T  作者: 植井 途央
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第001話 異変

あくまで中学生の時に書いていたものです。

稚拙な文章等ほとんど改編していないので見苦しいのは仕様です。


20××年  7月

時刻は、午前零時


太陽系内で、巨大な隕石と彗星が衝突、

1900年代からの観測史上最大の大爆発を起こし、その爆発は、

膨大なエネルギーと共に、宇宙空間に、拡がった。



  ◆01◆


事態は進行している。

誰の目にも触れず、ただ、ひっそりと。



7月7日

太陽が既に昇り、気温が上がり始めている初夏の朝、

当日の午前零時に起こった巨大隕石と彗星の衝突は、ニュースになった。


“…只今入りました情報によりますと、今日午前零時に太陽系火星付近を通過しかけていた彗星郡の内、最も巨大とされる彗星が、小惑星同士の合体により多重結合した巨大な隕石と衝突した模様です。

これが衝突時の映像です。”

黒い背景に無数の白い点を浮かべた写真の中、中央からやや右に逸れた辺りに、“それ”はあった。

赤と白と黄色の絵の具に発光塗料を混ぜてパレットの上でぐちゃぐちゃにしたような“モノ”が、そこには映っていた。

“この衝突と爆発を観察したのは、ハワイ、マウナケア山山頂に位置するすばる光化学赤外線望遠鏡で、写真は、日本国立天文台と東京大学研究グループによって撮影されたものです。

写真から推測される爆発の規模の範囲は、数千キロメートルに及ぶと言われています。現在のところは、地球への被害は予測されていない模様です。”

次のニュースです、というアナウンサーの言葉で、画面は日本地図に切り替わる。“お天気お姉さん”なる人が背丈と同じくらいの丈の指し棒を持って登場する。

「今日は七夕ですね。」と笑顔で言葉を混ぜながら日本各地の予報に移る。さっきのニュースのアナウンサーの緊張した喋り方とは打って変わり、満面の笑みを周囲に振りまくように話し始める。


「ふわ~ぁ。」

今やっているTVニュースの緊張感とはまるで正反対の欠伸を漏らしながら、まるで他人事のようにニュースを見ているのは、忍坂(おさか) (わたる)

近所にある海枌(みそぎ)高校に通う、ごくごく普通の高校1年生だ。

(まだ眠いのに…)

航は落下するかのような勢いで閉じていく瞼をありったけの精神力でどうにか押さえ込む。

(どうして早起きしてまでもこんなモンを見なければいかんのだろうか。)

はぁ。と、大きな溜息一つ。


高校生だから、ニュースぐらい見て当然。


航の心の呟きを聞いてそう思う大人は沢山いるだろうが、航本人は違った。

ニュースを見るとか新聞を読むとか、そんな物は大の苦手なのだ。

そんな航でも、現在ニュースを見ている訳は…


「航。食事中だ。行儀が悪い。」

隣にいる親に“叩き”起こされたからだ。

何故“叩き”の部分を強調したかというと、まぁそれは文字の意味そのままなのだ。

(止めろって何回言っても毎朝ぶっ叩きやがって……)

航は痛む背中を擦る。

これが相当痛むんだよ。1日中な。


それはまぁさて置き、横から無駄にさえ思えてくる注意を投げかけてくるのは、約10分前に航を“叩き”起こした張本人、航の父親、忍坂(おさか) 純一(じゅんいち)である。

要するに、現在忍坂家ではTVニュースを見ながら朝食を取っている最中ということだ。


「こういうニュースは見ておけ。きっと学校でも話が出てくる筈だからな。」

朝食の焼き魚をご飯と一緒に口の中へ運びながら、純一が言った。

少しは父親としての威厳とやらを見せたいんだろうが

少なくとも俺の学校にはニュースを話題にするような真面目な奴はいなかったと思うんだよな。

アニメやマンガの話題を持ってくる奴なんかは数え切れない位いるのに。

副食の漬物を口にしながら、航は内心毒突いた。


それから他愛もない会話が10分ほど続き、航は食卓を後にした。

(あれ、そういえば・・・)

廊下に出て、ふと思う。

よく考えたら、この日に通常授業なんか無い筈だよな・・・

カレンダーの7月7日の文字は、赤だった。



自室に着いて机の上の掛け時計を見てみる。航のいつもの習慣だ。過去、電池切れの際に純一が電池を換えようとして時計を落としてしまい、アナログ針の短針が折れて使い物にならなくなってからは液晶表示しか頼りにしていない。

液晶画面には太めのデジタル文字で“7:48”と表示してあった。時間は既に8時開始の高校の始業に遅れそうになるくらいに進んでいた。

まぁ……これはこれでヤバイ。

直感的にそう感じた航は、まだ半分ちょっと残っていた眠気をB○ACKBLACKガム2枚分で覚まし、着替えを高速で済ませた後、通学用自転車の鍵を机の中から引っ掴んで家を飛び出した。


中学の頃からの愛用の通学用自転車に鍵を差し込み、回す。カシャンと言う聞きなれた金属音を耳に入れて、自転車に跨り、全速力で、漕いだ。



「航~。遅いぞー、急げー。」

「悪ぃ。遅くなった。」

途中で待ってくれていた友人と合流。一緒に学校へ向かった。


“友人”というのは、航の幼稚園児時代からの幼馴染であり同じ高校の同じクラス、席まで隣同士という、こいつが女子だったら良かったのに…と航がつくづく思っている“腐れ縁”という言葉が一番よく似合いそうな()() (ひびき)である。

コイツについて少し紹介すると、まぁ所謂「オタク」。本人はPCに詳しいだけとか言っているが、周りからの認識はそうなっている。勿論そんな物ばかりやっているせいで視力は結構悪く、度数がかなり高いメガネをかけている。


といっても、伊達にオタク呼ばわりされている訳ではなく、最初の方こそその手の話題にギリギリ話を合わせていられた航だったが、響きがPCを使って様々なハッキングに挑戦し始めてから、もう話題には付いて行けなくなっていた。


過去に航がいくら止めようとしても、「俺はただ情報収集をやっているだけなんだ!」の一言で全て跳ね除けられた。意外と意志が強いんだよな。こいつ。無鉄砲と変換できなくもないが。


まぁ、今のこいつのやってる事を例えるなら、“厚い氷が出口をふさぐ真冬の北極海へ裸で全身ダイブ”といったところだ。

自殺行為を進んでするようなもんだぜ、まったく。

まぁ、危険そうであり面白そうでもあるヤツ、ということ。



数回会話しただけで、2人は学校に着いた。自転車通学とはいっても、どちらとも家から学校まであまり遠くない。


自転車置き場に並べて自転車を停めた航達は、今日行われるあることについて話す機会を互いに窺いながらそれぞれの教室へと足を進めた。


現在の外の天気は晴れ。快晴と言ってもいい“爽やかな朝”である。航達も、ついさっき、その天気の下を通学してきたのである。

しかし、今の航達を始めとする(一部を除く)全校生徒の心の中には、曇りもしくは雨のマークがあることだろう。中には台風マークが出ている人までいるのではないだろうか。


航たちは教室に入った。教室内は、正面玄関から入って右側1つ目にある。

さっきの会話の続き、今日行われる“あること”について、響から話していた。

「わざわざ休日にするか?普通。」 

なぜか、口調に怒りが混じっていた。

「別に、毎年のコトだからいいだろ。」 

航は言葉に“諦め”を混ぜ込んでから、やや落胆気味にそう返した。

“あること”とは、毎年あるが、“良い”ほうでは無いらしい。

「教師の陰謀だぜ。まったく。俺らを祭りに参加させない気かよ。」 

さらに愚痴を言いながら、響は自分の席に着いた。

・・・・・・・・・

航は苦笑しながら無言の返事をして、響の隣にある自分の椅子を引いた。


まぁ響の気持ちも分からんでもねぇか・・・

今日この学校では校内で“中間”でも“期末”でもない、また“実力”でもないテストが実施される。


テストだけでも嫌だというのに、今日行われるこのテストは、実質内申には響かないことになっている。

一応、順位は出て、親にも(強制的に)見せなければいけないテストなのだが、“内申に殆ど響かない”ということであまり意味を成さないテスト(しかし、無駄に長い)となっている。それだけだと、心の中に曇りや雨のマークが出現すること、なおさら台風マークが現れることはまず(例外はあるかもしれないが)ないだろう。

それには、日付も大きく関係していた。


7月7日

七夕の日である。 

だから何だというツッコミも、ここではスルー。話が進まない。

七夕とは、まぁ全国に知らない奴はいないくらいにポピュラーな行事なのだが、しかし、しかしだ。

一般高校生が揃って全員、キラキラ輝く笑顔で短冊に願い事を書き、笹につるしている姿はあらゆる観点からどう考えても想像しにくい。

むしろ想像できたとしても異様な光景でしかないはずだ。七夕にはしゃいで可愛いと思われるのは小学生以下の特権だとも言えよう。


勿論、航達が通う海枌高校の生徒はそんなことを(多分)しない。

テストがあるだけで生徒全員の心が晴れない、つまり、

彼らの興味のあるところは、七夕という日自体ではなく、その日に行われる行事だった。


(みそぎ)祭り。

海枌市のミソギと“身を清める”という意味の禊を掛け合わせただけというシンプルなネーミングの祭りだが、七夕祭りと夏祭りを融合したくらいに規模が大きく(実際そういうことになっている)、夏祭りと七夕祭りの両方のイベントが一気に放出される祭りということもあって、学生だけでなく大人にも広い人気があった。毎年、県内からだけでなく他県からの観光客も数多く訪れるくらいだ。

そして、禊祭りが行われる、まさにその日、海枌高校は2時間連続の長ったらしくて嫌になりそうな補習と5時間連続の校内模試を行うのだ。

いくら祭りが無くとも、目を瞑って現実逃避したくなる数値で、もちろん、生徒の中には仮病を使って休んでいる者も多い。

テストだけならともかく、その直前に臨時で行われることになった2時間の補習は、前々から祭りに参加しようとしていた大半の生徒の予定を狂わせた。間に1時間の昼休みを挟むのだからなおさらだ。



「ったく、何で今日なんかに……」

響は航の隣でまだ毒突いている。

「祭りの前後で、いわゆる“お祭りボケ”をして欲しくないから、その対策だろ。学校の。」

「けどさ、矛盾してねぇか?俺ら中学んときは普通に祭りに行ってたのによぉ。高校生にまでなってそれがわかんねぇヤツは中学生より少ないと思うんだがな。」


そう言われて、航は気付いた。

僕は、“学校側の言い分”としては、真っ当な意見を言った。しかし、“自分の観点”で見ると、響の言い分の方が正しく思えてくる。

(……確かに、中学んときは毎年祭りに行ってたな……)

そう思ってから、僕は初めて祭りに行けないことに少なからず寂しさを感じていた。

しかし、それを響に言うと“初めて”という単語を目ざとく拾い上げ、「お前は祭りというのが何にも解ってない!」と言って昼休み全部を使ってでも講義してくることが1+1の計算を解くよりも安易に分かったので何も言わない。


「ああ、そういえば…」 航の隣で響が、今思い出したかのように話しかけてきた。

時間は8時になるかならないかである。航は、時間を気にしながら「何?」と訊き返した。

訊きながらテストの事を考えて“何?”の所をWHATと変換してしまう。これで英語のテストの点が上がると思えるのは頭の悪い僕だけか…と内心嫌なコトを考えつつも、もうすぐ響の口から出るのであろう言葉に集中しようと耳を傾けた。

しかし、同時に鳴り出したチャイムによって話を中断せざるを得なくなった。

少し内容が気になったのだが、響が、「また後で話すよ」と言ったので、休み時間あたりにでも訊こうかな…と思いながら、今日最初にある英語のテストに向けてテスト勉強に移る。

そして、教科書とのにらめっこを開始してから約5分後、遅れてきた教師の軽い謝罪から僕らの悪夢の10時間が始まった。


……カリカリカリカリ………

教室全体からシャーペンの乾いた筆記音がこだまする。

一種の緊張感に包まれた教室の中で、

(………どうしよう……)

航の持つシャーペンは全くといっていい程動いていなかった。

テストを解き終わったわけではない。わからないのだ。

「勉強してないんだろ。当たり前に決まっているよ。」

頭の中から航の形をした天使がボンッと現れて、そう呟く。


うるさいやつだ。黙ってろ。

天使のヴィジョンをかき消して、航は隣をちらりと見る。

響は机に向かった一心にシャーペンを走らせている。迷いがない。

(…)

自分の解答用紙に目を落としてみる。

……勿論分かる筈もなかった。


―――――悪夢だ。これは悪い夢なんだ。



“悪夢”の表現は、間違っていなかった。実際、航は、想像以上に難しかったテストの勉強のせいで、「また後で話すよ」と言った響の言葉が結局訊けなかった。



 キーン…コーン…カーン…コーン…

夕焼けが全てを真っ赤に染める放課後、僕らの長く険しい10時間の奮闘は、ついに幕を閉じた。

その後のショートホームルーム(約10分)は、言うまでも無く相当ざわついていた。

まだ禊祭り最大イベント、“8000発の花火大会”の開始時間まで、少し間があったからだ。

女子生徒の中には、「家に帰らずにそのまま直行しようか?」と相談する者さえいた。

そんな中、航を含む一部の生徒はというと、

真っ白に、燃え尽きていた。


航を含む云々のテストの結果は、事前にまったくと言っていい程勉強をしていなかったことが一番の原因となり、“まっしろけ”の解答欄が続出すると言う目も向けられないような結果になってしまったからである。

彼らの気分はまさにホワイトアス(白い灰)。

ただどんなに間違ってもプラスでないことは解って欲しい。

灰は灰でも積もりに積もった経験をフル活用して出来た灰ではなく、「強風、突風注意報が出ています」の状態の中に置かれたほんの一握りの灰だ。と、後の彼らは語る。しかし、その経験が次回以降に生かされるかは、全くの別問題だ。

そして、さっき言った“航を含む一部の生徒”の中に、航の隣にいる人物は含まれていなかった。

「あぁもう、こんな簡単なテストやるくらいなら遊ばせろっての。俺ら灘校の生徒じゃないんだからさ…。」

響だ。(響はパソコン関係とかにはものすごく強いため、その影響を受けてか理系の勉強が天才的に出来る。)

航は、その秀才ぶりが極まる発言に並を少し外れた殺意を抱いたが、もともとこういうヤツだったので言葉や態度には見せなかった。


そして、ショートホームルームは航たちが思っていた通りに、10分という設定にも関わらず、担任の教師に向かって生徒からとんだ数多くのヤジによって半分以下に短縮された。



「どうする?」

航の隣から響が唐突に訊いて来た。

勿論禊祭りのことだと一瞬で判った航は、OKの一つ返事で椅子から立ち上がった。


外はもう暗くなりかけていた。その中を、航たちを始めとする大勢の生徒が、祭りの会場、学校から西の方角約2キロメートルの場所に位置する一級河川、栄川に向かって歩いていた。


思えばあれは中3の秋。受験からの逃避行として書き始めたのがこれでした。異世界に憧れでもあったのでしょうか、今の自分では到底理解し得ないようなモノをtxt換算で119kbも書いていました。その時の1章だけでも2万文字を超えたのでこうして小分けしていきたいと思います。中二痛いなwwくらいの感覚でさらっと読んでいただければ幸いです  植井

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