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第八章

帰路は、腹立たしいほど穏やかだった。


神殿での緊張。あの白い光。人々の無数の視線。その視線が、彼とアヤノをもはや人間としてではなく、すでに起きてしまった一つの事実として見送っていたこと――それらのあとで、出立そのものは何事もなく終わった。あまりに滑らかに。あまりに清潔に。まるでホウセイという場所が、一度だけ都合の悪い真実を覗かせたあと、すぐにまた何もかもへ「秩序」の顔を被せ直したかのようだった。


彼らは、正式に去った。


忍び出たわけでもなければ、夕闇に紛れて密かに運び出されたわけでもない。


去ったのだ――儀を終え、意味を閉じ、あとには「逃走」ではなく、完成された身振りを残して。


それは正しかった。


だからこそ、転移陣が再び閉じ、あの異国の白さが慣れた重さへと潰れていく時も、彼の中には安堵は来なかった。あるのは疲労だけだった。それも、最初から身体へ落ちる類の疲れではなく、まず一度身体を通り抜けてから、あとになってじわじわと自分のものになる、冷たい水のような疲れだった。


ヴァルガルドの宮へ戻ると、迎えは早かった。だが騒がしくはなかった。エドラス・ケルヴィンの側近たちは、すでに伝令を受けていたのだろう。必要な形式だけが、ごく短く済まされた。アヤノはほとんどすぐに別室へ通された。無理やりでもなく、隔離でもなく、ただ横になり、息を整え、他人の目のないところで身体を落ち着かせるための場所へ。


対照的に、マレクは少しだけ残った。最初の報告を渡すためだ。だが、彼には分かった。肝心な部分はまだ手元に残している。忠義からではない。理解からだ。外交官が報告できることと、王がその結果を、自分の目で、他人の言葉の膜を通さず見なければならないこととは、別なのだ。


だから呼びが来た時、彼はすでに知っていた。この話になるのだと。


エドランは執務室にいた。評議の間ではない。一人だった。それもまた、一つの合図だった。最初に不快なものを一人で聞くつもりでいるのか、あるいは、聞かされる内容が「まず他人に混ぜるべきではない」ともう悟っているのか。


彼は中へ入り、扉を閉め、そのまま立った。


反抗ではない。ただ、必要なことが言葉になる前に座る気になれなかっただけだ。


エドランはそれにすぐ気づいた。


「それほど悪いのか」


彼はそう問うた。


「はい」彼は答えた。「ただ、その前に一つ保証がほしい」


王はわずかに眉を上げた。


「どのような?」


彼はまっすぐ見た。遠回しな導入は使わなかった。


「これから話すことは、不愉快な話になります。内容だけじゃない。その話題を持ち出されること自体を、あなたが不快に思うかもしれないほどに。だから先に聞いておきたい。今からの会話によって、俺の命も、俺の女たちの命も、危険に晒されないと」


エドランは、長く黙りはしなかった。


迷っているというより、その要求自体を見ていた。そこに何が含まれているのか。どういう形の警戒なのか。


「私の怒りを見込んでいるのか?」と彼は聞いた。


「はい」


「それでも話すつもりか」


「だからこそです」


エドランはゆっくり頷いた。


「いいだろう。言葉を与える。お前の命も、リラ、カイラ、アヤノの命も、この会話を理由に脅かされることはない。これで足りるか」


「足ります」


彼はそれでようやく座った。


数秒、二人とも黙っていた。部屋は静かだった。柔らかな静けさではない。仕事の静けさだった。こういう部屋では、たいてい、人は決断の重さを誤魔化さない。だからこそ、これからの会話も余計に重かった。エドランは、真実を投げつけて喜ぶような人間ではない。だからこそ、真実を投げなければならない時がいちばん厄介なのだ。


「あなたは魔術師たちに、もっと力を使えと命じた」


彼はそう切り出した。


「そうだ」


「より多くの“資源”が必要になることは理解していた」


「当然だ」


彼は頷いた。


ここまでは、予想通りだった。


「だが、あなたは想定していなかった」彼は続けた。「その“より多くの資源”が、実際には命として扱われていたことを。消耗でもなく、重い負担でもなく、立ち上がれる余地を残した代価でもなく、文字通り、命が燃料に変えられていたことを。他国と同じように」


そこでようやく、エドランの顔に変化が走った。


大きくではない。だが確かに。彼が好んで抱いていた図ではないのだと、それだけで分かった。


「深刻な代価は想定していた」


彼は言った。


「それは違う」


「説明しろ」


彼は短く息を吐いた。


ここは、本来なら怒りへ滑り込みやすい場所だった。だが彼は、なぜ最初にあの保証を要求したのかをよく覚えていた。せっかく線を引かせておいて、こちらが獣のように喋るためではない。


「ホウセイで、古いやり方を見た」と彼は言った。「こちらではほとんど失われたか、意識的に捨てられた方法だ。一人の娘から最後まで力を抜いて死なせるやり方じゃない。複数に分けて、少しずつ取るやり方だ。セイゲンはそれを使えた。ということは、かつてこちらでも使えたはずだ。つまり、あなたの魔術師たちは、“もっと力を出せ”という命令を受けたからといって、即座に女たちを使い切るしかなかったわけじゃない。あれは命令の必然ではなく、実行の選択だった」


エドランは黙って聞いていた。


とても注意深く。


「つまりお前は」彼はようやく言った。「私は戦時に命令を下したが、その時点では女たちの死までは命じていなかった。にもかかわらず、最も都合のよい実行法として、それが選ばれた。そう言いたいのだな」


「はい」


「その場合、責任は私にある、と」


「はい」


王は、急にではなく、少し深く椅子へ身体を預けた。打撃を受け止めるが、それで崩れはしないという姿勢だった。


「そうかもしれない」彼は言った。「だが、私には、お前が見ているほど明確な断絶が、そこには見えない」


その言葉を聞いた瞬間、彼の中の何かがすっと冷えた。


「断絶は簡単です」と彼は言った。「“人は戦争で死ぬ”ということと、“国家が女たちの命を直接資源として組み込み、それ以外の道があるのに、そちらを捨てる”ということは違う」


「お前にとってはな」


「あなたにとっては?」


エドランは目を逸らさなかった。


「私にとって、人は戦争で死ぬ」彼は言った。「城壁の上で男たちが。野で兵が。焼けた村で子どもが。崩れた屋根の下で女たちが。もし戦時に出した私の命令が、その実行によって勝利をもたらし、都市を守り、敵が次の線へ達する前に打ち砕いたのだとすれば――その代価がどれほど醜悪であろうと、それはなお戦争の代価だ」


そこだった。


無知ではない。


嫌悪でもない。


否認でもない。


もっと悪い。


組み込みだった。


彼はその瞬間、はっきりと見た。エドランは、命令がどう執行されていたかの全貌は知らなかった。だが、知ったあとでも身を引かない。残酷だからではない。それを自分の思考の中へ取り込み、そのまま立っていられるからだ。


「違う」彼は低く言った。「それはただの戦争の代価じゃない。ある人間たちが、流れ弾で死ぬのではなく、最初から“消費可能な燃料”として計算に含められている構造そのものを認めることだ」


エドランはわずかに眉を寄せた。


「私が防壁を守れと送る兵は、計算に含まれていないとでも?」


「含まれている。だが、あれは戦の論理の中に立っている。こっちは違う。あなたは事実上、ホウセイや他の国々と同じ形に近づいている。ただし名前を変え、そうだと認めないままに。あなたは“必要経費”と呼ぶ。だが実際には、装置全体に、女を資源として考えることを許している」


「装置は、戦争が許す範囲でしか考えない」


エドランの声はそこで初めて鋭くなった。


「勝利、時間、壁の持ちこたえ、夜明けまでにあとどれだけ搾り出せるか。お前は、国家の生存がかかっている場で、倫理の清潔さを求めている」


「ある種の代価だけは、常態にしてはいけないと言っている」


「私は、国家が消える前に、統治者が“美しい限界線”を考えすぎないほうを選ぶ」


緊張は、そこでほとんど手で触れられそうなものになった。怒鳴り合いではない。癇癪でもない。もっと悪い。互いに十分大人で、十分賢い二人が、すでに両立しないものの衝突の中にいながら、なお落ち着いて話している時の圧だった。


「あなたは理解しているのか」彼は言った。「その論理こそが、あなた方を、あれほど憎んでいた相手と似たものにする」


エドランはすぐに返した。


「違う。似せるのは戦争だ。我々を分けるのは、代価を払う時に、何を目標と呼ぶかだ。単純化するな」


彼は、笑いそうになった。楽しいからではない。


「都合がいい」


「そうだ。都合がいい」


王は乾いた声で言った。


「国家はたいてい、可能であるなら、都合よく生き延びる。それは何も新しい話ではない」


彼は彼を見ていて、ようやくはっきり分かった。なぜこの会話が必要で、なぜここまで不快なのか。エドランは怪物ではない。密かに犠牲の魔術を愛する者でもない。女たちを消耗品に変えたいわけでもない。けれど、一度その事実を知らされても、彼はそこで立ち止まらない。戦争の代価の一形態として、それを許容する。


そして、そのことは、露骨な残虐よりもむしろ恐ろしかった。


そこには狂気がない。


あるのは合理だ。


そして合理は、狂気よりずっと容易に制度になる。


「結局、ここへ来るのか」彼は言った。「あなたは最初からそれを望んではいなかった。だが、それが実際に起きていたと知っても、なお許容可能な代価だと見なす」


エドランは一拍置いた。


それから頷いた。


「そうだ」


それで終わりだった。


説得のために続ける意味はもうなかった。説得とは、少なくとも、同じ道徳の地平に立っていなければ成り立たない。だが彼らは、今まさにその外へ出ていた。まだ言葉を交わせる。まだ外敵に対しては同じ側に立てる。だが、この一点では、もはや言語が完全には重ならない。


エドランも、それを理解していた。


「お前は、今、私を前とは違う目で見ている」


彼はそう言った。


「はい」


「それでも、必要になれば共に動くのだろう」


彼はすぐには答えなかった。


「目的が重なる限りは」


王は頷いた。


それで傷ついたようには見えなかった。むしろ、全面的な信頼を装う綺麗な嘘よりは、気に入ったのかもしれない。


「今日はこれで充分だ」


彼は言った。


充分。


その言葉は、あまりにも正確で、あまりにも不快だった。


彼は立ち上がった。扉のところで一度だけ立ち止まり、すぐには振り返らなかった。


「最初にあの保証を求めたのは、予防だけが理由じゃない」彼は言った。「こういう食い違いを、近くにいる誰かを罰することで処理したがる支配者を、俺は知りすぎている」


「それで正しかった」


エドランは答えた。


「理にかなった手だ」


彼はようやく振り返った。


「そんなに俺があなたを信用していないことが、腹立たしくないんですか」


エドランは落ち着いて彼を見た。


「このあとで、お前が簡単に人を信じるような男でいるほうが、私には不快だ」


それには、もう返す言葉がなかった。


部屋を出ると、宮は妙に空っぽに感じられた。もちろん本当に空なのではない。人はいた。廊下は動いていた。召使いが行き交い、遠くで書記が言い争い、誰かが少しだけ笑いすぎて、すぐに声を引っ込める――そういうものはすべてそこにあった。それでも、感覚としては空だった。ああいう会話のあとでは、周囲のものすべてが、すでに知ってしまった事実に比べて、少し厚みを失うのだ。


彼は自分の部屋へ向かって、ゆっくり歩いた。


帰りたくないからではない。ただ、内側に、一つの感情へ簡単に寄りかかれるものが何もなかった。エドランへの怒りは役に立たなかった。あまりに単純すぎた。嫌悪も違う。疲れがいちばん近いが、それでも足りない。たぶんいちばん正確なのは、“倫理の重さ”だった。恥でも罪でもない。ただ、自分と同じ側に立てる男が、自分にはもはや許容しえないものを、静かに受け入れてしまえるのだという、その事実の重さ。


自室の扉の前で、彼は一度止まった。


中から声が聞こえた。


カイラが何かを早口で言っている。リラが柔らかく返している。アヤノの声は聞こえない――黙っているのか、ただ聞いているだけなのか。


ごく普通の光景だった。ほとんど家庭的な。


だからこそ、そこへ入るのがひどく重かった。


その扉の向こうには、理屈も、政治も、国家の計算もない。そこにいるのは人間であって、その前で今聞いてきたものを、立場ではなく自分の状態として抱えなければならないのだ。


彼は扉を開けた。


真っ先に振り向いたのはカイラで、その瞬間に口を閉じた。リラは顔を上げた。アヤノは窓辺にいて、彼の顔を見た瞬間、質問をしようとさえしなかった。


よかった。


誰も、すぐには何も尋ねなかった。


彼は扉を閉め、数歩進んで、そのまま部屋の中央で止まった。座るべきか、倒れ込むべきか、それとも立っていたほうがまだ形を保てるのか、自分でも分からない人間の立ち方だった。


最初に立ち上がったのはリラだった。


彼女は近づいてきた。


近すぎず。


遠すぎず。


彼自身が、触れるかどうかを自分で選べる距離で。


そしてその時になって初めて、彼は自分がどれほど本当に疲れていたのかを知った。身体ではない。人を人の形に保つ、あの内側の場所が、もう持ちこたえることに飽きかけている、その疲れだった。

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