3章 冒険者ギルド
「パイルクさんだ〜。久しぶり〜」
ディミがまるで友達のように大男に手を降る。
「ルイスのとこの嬢ちゃんか。大きくなったな」
大男はディミの頭をガシガシと撫でる。
「相変わらず雑だな〜」
ディミが頬を膨らませる。
「悪い悪い」
「マスターそれくらいで」
フィルシーさんが止めに入って、大男は僕に向いた。
「オルさん。こちら私達のギルドマスターのパイルクさんです」
ギルドマスターは右手をこちらに差し出した。
「よろしくな。ヴィンセントの弟子なんだって?」
僕は握り返したが、まるで石のように固くがっしりしていた。
「はい」
「報告書で読んだが、ヴィンセントから魔法を教わっているんだろう」
「はい。まぁ、先生と大分、形は変わりましたが」
マスターは顎に手をやり、僕を確かめるように見る。
「マスター。彼の魔法はなかなか強力ですよ」
ダルクさんが一言付け加える。マスターがガハハと笑った。
「みたいだな。そこでだオル。ちょっと頼みたい事があってな。お前はギルドの人間じゃないから断っても良いぞ」
僕に頼み?一体どういう事だ?
「何日か前、ダルクがこの街の近くの洞窟で変な魔力を感じてな。ちょいっと調べてきてほしいんだ」
振り返るとダルクさんは苦笑いを浮かべていた。
「知っての通り、僕は魔力を感じる事はできるけど、魔法が使えないんだよ。魔法関係で何かあった時は対処ができなくてね」
「魔力感知が得意なやつに、そこら辺を探らせてはみたが、魔力はそんなに強くないらしい、明日にでもダルク含めて三人くらいで行ってもらおうとしてた所なんだ」
ギルドマスターはがっしりとした腕を組みこちらを見る。
「今は見ての通りほとんどが出払っててな。どうだ?危険はあまりないと思うが行ってくれないか?報酬は出す」
「私も明日は父さんの用事で、しばらく忙しいと思うから丁度良いんじゃな〜い?」
そうか、そうだよな。ディミも仕事で来てるんだもんな。僕も仕事をしよう。
「分かりました。お手伝いします」
マスターのがっしりした手が、僕の肩をポンポンと二回叩いた。彼は軽く叩いただろうが強さが伝わってくる。
「そしたらよろしく頼む」
マスターのパイルクはぐるりと回り扉の方に戻っていった。
「ディミ、このあとの予定は?」
「私の方の顔出しかな〜」
ディミの用事がまだだったな。特に予定がないので着いていこう。
「了解。そしたら行こうか」
僕達がギルドの扉を出ようとしたら、後ろから急に声を掛けられた。
「オルさん。ちょっといいですか?」
振り返るとフィルシーさんだった。
「どうしましたか?」
フィルシーさんは何か言いにくそうに手を、もじもじとしている。
「オルさんってヴィンセントさんのお弟子さんなんですよね」
「そうですが、それがどうかしましたか?」
フィルシーさんはちょっと目線を反らしながら答える。
「彼、何か私の事で言ってたりしましたか?」
どういう事だろう?質問の意図が読めない。
「いえ、特に何も言われてないですが」
それを聞いた彼女はやっぱりなと顔と残念そうな顔が混ざった表情を浮かべた。
「ハァ、やっぱり何もないですか」
横にいるディミが慌てて付け加える。
「今、ヴィンセントさん忙しいからお手紙とか書ける余裕ないんですよ」
フィルシーさんは少し首を振った。
「気にしないでください。彼の事だからあまり自分の事話さないんでしょう?」
フィルシーさんの言う通り先生からは、あまり昔の事を聞いた事がない。
「確かにそうですね。先生ってどんな事をこっちでやっていたんですか?」
「こっちで、彼は何体も巨大な魔物を倒す部隊を率いたり、たくさんの生徒さんを育てていました。このギルドでも上位の人でしたよ」
やっぱり先生はすごい人だったんだな。
「そんな人だったら、なんで僕達の小さい村に来たんですか?」
彼女は急に暗い表情になった。
「それは、彼は参加していないんですが、一年くらい前にあったガントフォレストの討伐で、何人もの人が亡くなったんです」
彼女は悲しそうに虚空を見つめる。
「その中に生徒さんも居たみたいで、何か思うところがあったんでしょうね。それからギルドでは教えなくなって、すぐにオルさん達の村にいったんです」
そんな事があったなんて、何も聞いてない。
「でも、またすぐに教え始めたって聞いて、なんだか彼らしいなって思ってました」
フィルシーさんは優しく頬えんだ。
「詳しい事は、彼に聞いてください」
フィルシーさんは綺麗に僕達に一礼する。
「教えてくださってありがとうございます。明日よろしくお願いします」
フィルシーさんはスタスタと歩いて去っていった。
「ヴィンセントさんも隅に置けないな〜」
ディミがなんとも歯がゆそうにしていた。
「ディミどうかした?」
「オルって鈍いよね〜」
ディミは深いため息を付いた。
「何の事?」
幼馴染の反応が分からなった。
「何でもないよ〜。次は私の用事に付き合ってよ〜」
ディミが腕を急に引っ張った。
「分かったよ」
僕はその後、ディミに付き合うついでに街を見て回ったが、すれ違う人の洋服が綺麗なものが多く、ぶつかったりして汚しはしないかとドキドキしていた。
次の日、僕はディミと別れて、ダルクさんと森を進んでいた。
「ジクハさん、装備は重くないんですか?」
横にいる足、腕、体に鎧を着込み、そして大きな盾を持っている冒険者が気になって、声をかけてみた。
「なんだ。オル君、気になるかい?」
今朝、ダルクさんと街の入口付近で待ち合わせした時に、ジクハさんと弓使いのアーチェさんを紹介された。
「はい。そんな重そうな装備は、僕の村にはいなかったので」
「そうなのかい?そうだな。重くないと言えば嘘になるが、まぁ私は慣れているからな」
軽々と盾を左右に動かしてくれるジクハさん。
「冒険者をしているとな、巨大な敵なんかと戦う時があるんだよ。そんな時、俺が守りながら戦うんだ」
ジクハさんが言ってる言葉を聞いて、ジュエルベアーの戦いを思い出した。あの時、確かに防御をしてくれる人がいたらどれほど戦いが楽になっただろうか?
「なんか思うところがあるみたいだな」
「オル君の魔法は強力だから、防御はいらないんじゃないかな」
少し先を歩いているダルクさんだ。ダルクさんが道を踏みしめてくれているのか、初めての森なのにすごく歩きやすい。
「そんなに強力なのかい?一度見てみたいな」
「そんなに褒めないで下さい」
なんか照れくさくなってしまった。後ろからアーチェさんがフフフと笑ってる声が聞こえる。
「さ、談笑はそろそろ終わろうか。洞窟が見えてきた」
ダルクさんの声が緊張した声になる。
目の前には岩壁が広がっていて、地面にはポッカリと穴が空いていた。
「こんな所、今まであったか?」
ジクハさんがアーチェさんに聞く。二人は良くパーティを組んでるらしく、今回も連携が取れているという事で、声をかけられたらしい。
「いや、何もなかったはず」
アーチェさんは首を傾ける。
「だよな」
ジクハさんが目を細める。
「なら用心しないと行けないな」
僕達は目線を合わせてコクリと頷いた。
読んでいただきありがとうございます。
突然の依頼、そして先生の過去を知ることになったオル。
オルは何を感じ何を思うのか?
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