15.神聖ロムルス皇国 首都レムス
読んで頂きありがとうございます。
この章から読まれた方は、是非【ユキア・サガ 航海① ネフシュタンの魔片 第一巻 第1章】から読んで頂けますと、幸甚です。
ーー世界の首都と呼ばれている、大都市レムス。
アトラス海、ティターン海周辺諸国の国境の多くがメシア教で、他宗派も含め最大宗派のカットリチェシモの総本山『ラティウム都国』が、神聖ロムルス皇国のこの都に鎮座している。
それが、その故由の一つだ。
この為、神聖ロムルス皇国は『ラティウム都国の件と盾』と尊称されている。
Ωに所属するトレジャー・ハンターの私には、情報収集に一役買ってくれる都でもあった。
レムスには、ずっしりとした重みと、朽ち果てることのない堅固な石に、常しえの希望と願いを委ねられた石造建築物が、海滅時代の古代から、レビアタンの咆哮を経て、奇跡的に生き残っている。
都には、世界の歴史を刻み込んだ由緒ある教会や様々な遺跡が立ち並ぶ。
メシア教カットリチェシモの教会は150を超えていて、ラティウム都国の聖ペトロ大聖堂を頂点に、七つの初代協会がある。
こうした教会は、民草が洗礼の秘蹟を授けられたり、時に告解し、婚礼を挙げ、弥撒に集い、心の癒しと平安を求める場所だった。
武人と法術士の聖地、円形闘技場。
多種多様な運動選手、戦車競技者たちの聖域、大競技場。
これらは、そこで行われる闘いを、観る者達の両眸と心魂に、勇気と感動を今も焼き付けている。
レムスの教会や、遺跡には古色蒼然たる今も尚、歴史の証人として生き続けているのだ。
それ故、この都に海路を経て世界中の人々が往来し、世界中から種々雑多の貨物が集荷されている。
レムスの玄関口として知られる、神聖ロムルス皇国の交易の入り口オスティア新港で。
この港に、ユキアから買い取った私の船は錨を降ろしていた。
オスティア新港の規模と盛況は、バルセルンのように大きな港でさえ霞んでしまう。
神聖ロムルス皇国海軍の港を兼ねているので、大型艦船が300隻は繋留可能で、約三分の一が海軍の軍艦と、海軍賊の艦船だった。
その為、この港が敵国海軍やその海軍賊、或いは海賊に襲撃されたことは一度もない。
海軍。
海軍賊。
交易商人。
聖地レムスへの巡礼者。
聖職者。
修道士。
修道女。
武人。
法術士。
観光客。
旅芸人や踊り子達。
政治家。
芸術家。
知識人。
トレジャー・ハンター。
その他あらゆる職種や目的を持った人々が、オスティア新港とその港町を賑やかに活気づけている。
港湾労働者達は、日の出から日没まで手際よく貨物の積み荷降ろし作業を捌いていた。
オスティア新港は、世界一の港。
それを否定する者はいないと、私も認めている。
首都レムスでは、品切れでない限り、入手できないものはないという評判だ。
世界中の法術士が訪れるから、法術用具や法術生物が入手できる。
大人にも子供にも大人気の法術用具・生物市場が大繁盛していた。
でも、人が混雑するところが苦手な私は、この港があまり好きじゃない。
私達一行は、港と港町を結ぶ中央大橋を雑踏の中足早に渡る。
港町に入ったところで銀狼の獣人に変化しているレイと、ナーヌス親子は、港からモンテとピッコロの家に向かうので、私とは別の道を行くことに。
その傍らには、ギルド・アルカの造船所もあるらしい。
私は別れ際「ユキア達がレムスに到着して、船が完成するまで生活できる良い宿が手配出来次第、モンテの家か、ギルド・アルカのセルモに連絡入れるから待っててね」レイに約束した。
「お手数をおかけしますが、例の条件に合う宿をよろしくお願いしまする」レイは、条件を付けているところが心苦しい限りという思いを、ぞの気色に滲ませている。
あと二ヵ月も経てば、レイとザザがパークスに戻らない以上、次の刺客がパトリア島から放たれるだろう。
私はレイから、
ーー追手が真っ直ぐにレムスにやってくることはないと思いまする。
されど、もし万が一レムスに直行してきた場合、今より三カ月少々で追手が現れまする。
ユキア様がメシア教カットリチェシモを信仰されておられることは、パークスでも知られていること故、その可能性がないとは断言できませぬ。
されども、我等の船が三カ月少々で完成することは、無理な話。
されば、宿はできるだけ宿泊客の出入りが少なく、且つ人目がつきにくいところが条件となります。
難題を押し付けてしまい心苦しい限りですが、宜しくお願いいたすーー。
とレムス到着の前夜の夕餉の時に依頼された。
他にも、風呂は浴槽付きであること、風呂とバグノは別々であること、寝室は4つ以上あること、パン窯のある台所が必要なこと等々、細かい要望も伝えられている。
私は嫣然と一笑すると「心配しないで。全く心当たりが無い訳じゃないから」とレイを安心させた。
こうして一行は二手に別れ、私は港の中央大橋からそのままつながっている、港町の目抜き通りを北へと向かう。
通りの両側には、宿、居酒屋、賭博場、遊郭が軒を争い、その合間に船舶、艤装関係の雑貨屋、鍛冶屋、金細工屋、銃器弾薬店、他に食料雑貨店がいくつか割り込んでいる。
どこもかしこも賑わっていた。
レムス市街に入るには、テヴェレ河」をゴンドラ戦で向かうか、
馬車で行くか、
鳥人族が飛翔して運ぶ空籠ーー料金は高額だが目的地には一番早く到着できるーーに乗るか、
メッカ教やラウズ教の聖術士達が主になって営んでいる空飛絨毯ーー悪天候の時は休業ーーに乗るか、
四つの移動手段がある。
私の上空には、空籠や空飛絨毯が港町を抜けてきた乗客を乗せ、次々飛び交っていた。
その中には、箒に乗った法術士達も混じっている。
私はそれを見てーーーー私も聖術を研鑽して、箒に乗れるようになっておいた方が良かったかも?ーー独り胸底で愚痴を零す。
私は迷わず、馬車乗り場に向かうことにした。
並んで待たず、馬車に乗れたので一息つく。
オスティア新港を起点として、陸路、笠松が両脇に並ぶオスティア街道をテンポよく馬車は進む。
街道を上れば、聖パウロ門からほぼ一本道で左手の大競技場を過ぎた先に、円形闘技場の勇姿が見えてくる。
大競技場を左に曲がり、テヴェーレ河添いに進む。
天使橋を渡れば、左手にコンテリアツォーネ通りが走っている。
この堂々たる広い直線通りの前方中央に、その威容を誇り聳えているのが、メシア教カットリチェシモの総本山、ラティウム都国の聖ペトロ大聖堂だ。
私からレムス市街に向かうように指示されていた馬車は、聖パウロ門からそこへ入る。
私は「オロアルマダ階段に向かってください」馭者に告げた。
「畏まりました」馭者は丁寧に会釈する。
オロアルマダ階段に着くと私は「ここで降ります。ありがとう」馭者に料金を支払い下車した。
私は、旅行鞄を左肩にかけ、バウレを右手に握り、玉の汗をかいて階段を上って行く。
赤、皓、紫のつつじが階段を彩り、絵画の展示会が行われている。
私は少し呼吸を乱しながらも、わき目を振らず階段を昇りきり、トリニタ・ディ・モンテ教会を左に、オロアルマダ階段を右に、休むことなく前へ進む。
少し歩いて細い裏通りに右折して入る。
私の目に古ぶれているが良くて良く手入れのされた木製の大きな西洋扉が、見えてきた。
それ以外に看板もなければ、窓もない、建物は黒大理石一色に染まっている。
私は漸く安堵した。
西洋扉には、小さな銀の表札があり、そこには『銀の匙』と刻まれていた。
私は、ギィィィィーという音を立てる扉を、押し開いて中に入る。
外から一見して宿とは見えず、隠れ家的な趣があった。
ここは世界中でも知る人ぞ知る超高級宿で、中には入るともう一つの扉が約10ヤード先にあり、カメリエーレが2人立っている。
完全会員制の宿だから、会員が同伴していなければ当然そこから先へは進めない。
「「ガイア様お帰りなさいませ。」」カメリエーレ達は見事に聲を揃えて清爽な笑みを湛え、もう一つの扉を開けた。
白と黒を基調とした総大理石の落ち着いた雰囲気の広間には、値のつけられえないそれぞれ重厚な、魅力のある調度品が惜しげもなく配置されている。
私は受け付けで部屋の鍵を受け取り、荷物はカメリエーレに運んでもらい、昇降機に乗って4階で降り、自室に入った。
レムスが私の活動拠点だ。だから、この宿は殆ど自宅と言えるだろう。
10年以上年間契約の更新を続けていた。
この宿でカメリエーレに心付けを渡す必要はない。
なんとなれば、彼等はそれを必要としない十分な報酬を得ているから。
それ故、この宿で働く者は皆、誠実で礼儀正しく、会員の顧客に対して忠実で、鋼の口の堅さが完璧に求められる。
私が独りで利用するには広過ぎる客室は、二つの寝室の他に、書斎、ソッジョルノ、浴室があった。
全ての部屋に温もりのある乳白色で統一された、調度品が絶妙に配置され、気韻溢れるとても居心地の良い空間を創出している。
私は荷物の片づけを終え、珈琲を自分で用意し、それを飲んで一息ついた。
それから、ソッジョルノの高窓に歩み寄る。
オロアルマダ階段で咲き乱れる美しいつつじを静かに眺めた。
窓を開けると、少し甘いつつじの馨が爽風と共に掠めていく。
階段の中間辺りで、一人の若い女性が、提琴を優しく奏でていた。
きっと、提琴奏者を目指しているんだろうな。
私は、その女性の直向きな努力が報われます様にと祈りを捧げる。
さぁ、私も自分の仕事をしなくちゃ!
私は徐に振り返り、右手を肩より少し上にあげ掌を開くと、そこに壁があるかのように、視えない空気を押す。
その手の甲から、
『りィィィィイィーン』
と鈴が微かになり続けている思わせる音がして、金の七芒星が二重の真円に囲まれて浮かび上がる。
外と内の真円の間には、神聖文字が並んでいた。
ヴ、ヴーーーーーン
空気が振動する低い音が響き、パラパラとモザーイコ画を描くかの如く、横幅が長い長方形で透明な薄い板状の物体が現れる。
オスクの画面にも似たそれは、私の前で浮かんでいた。
私はソッジョルノの中央、クリスタッルムの卓子の高窓から見て右側の2人掛けディバーノに向かう。
弾力性のある座り心地の良いそれに、身を預ける。
面前には、3人掛けのディバーノがあった。
と、先刻私が出現させた物体は意志を持っているのかと思わせるように、私の後を回転しながら追う。
卓子の上、私の正面でぴたりと静止した。
もし、この場にユキア達がいたら、私が発動した法術に驚倒したことだろう。
その衝撃はジゼルが魔女じゃなく女魔導士だと判明した時以上のものになってたのは間違いない。
詠唱も、陰も術札もなく、何もないところからそれを出現させたのだから。
私は暫く沈思していたが、
「リオいるかな?」
とそれに向かって聲を掛けた。
その物体の中心から拡散していく眩い光の粒子の中から、胸まで真っ白なひげを伸ばした、知性的な眸を持つ男性の姿が映し出された。
男性な姿が少し透けて見えるからか、神秘的な印象を与える。
その人物は書斎にいるらしく、俯き熱心に調べ物をしているようだ。
机の上には大小様々の本が、両脇に高く積みあがっている。
背後には書棚がずらりと並んでいた。「あぁ、いるよ」リオは貌をあげて心配そうに「どうしたキラ、何かあったのかい?」
頭髪も真っ白で目尻に優しさを刻む笑いじわが数本あるものの、貌は端正でなぜか老けて見えない。
「ネフシュタンの魔片の新たな情報でも入手したのかな?
それともほかの聖遺物や魔遺物、或いは幻玉の情報でも入手したのかい?」
私は何から話すべきか迷ったが、まずはリオの問いに答えることにした。
「調査は必要だけど、船大工達の間で有名な『アララトの聖樹』は聖遺物だと思う。近日実際にそれを見れるかもしれない。
私は、ノアの箱舟じゃないかと推測してるんだけどね」
私は、アララトの聖樹についてナーヌス親子から得た情報をすべてリオに報告した。
「ギルド・アルカのギルド長、モンテ・ブカのことは私も知ってる。
近い将来、神聖ロムルス皇国の人間国宝に」なると噂されている人物だからね。
ところで、君はどういう経緯でモンテ親子と知り合ったんだい?
君はウルティオー海賊団が所持しているネフシュタンの魔片を追っていた筈だが……」
「その通りよ」キラは首肯して「臨時総会の後、ウルティオー海賊団の出没情報をティターン海近隣諸国の冒険者ギルドや、各国海軍筋から船長のウィル・フライが所持しているであろうネフシュタンの魔片の調査をしていた。
出没情報はそれなりに入手出来ていたから、それを頼りに点々としていたんだけど、ネフシュタンの魔片の情報はさっぱり……」
何しろ判明してるのは青銅で鋳造された炎の蛇が砕かれたものーーということだけなのだから。
リオとトバルが聖書に記述されたわずかな情報と、海滅時代の古代に遡って古い文献を漁り、その模造品を製作しようと動いているが、至難極まっていた。
リオは苦渋に貌を歪め「私とトバルの方も君を喜ばせることができない。
炎の蛇と言ってもどんな意匠だったか?
旗竿に掲げたとあるが、その長さはどのくらいだったのか?
砕いたということだから、粉砕はされていないと考えられるが、どの程度の数に砕かれてたのか?
他にもわからないことだらけだが、まずはその長さ、大きさをある程度目星をつけようと、2人で調査、研究しているところなんだ」
「リオも元気そうね」私は青色吐息をつく。「私の方も先刻言った通り、進展がなくて大変だけど……。
実はリオ私に訊いたモンテ・ブカ親子と知り合った経緯も関係している大変なことがあったんだ。
また、私を海帝に渡しを引き渡そうとする海賊が現れてね……」
「何だって!? 半年前にも狙われてこれで4回目か……」
「そう、4度目。いつも船旅の時に狙われている。
その船に私が乗船しているのを、海賊達知ってた。
それが何を意味するのか、そろそろ本気で考える必要がある」
「我々は、トレジャー・ハンターとして、あちこちの冒険者ギルドに出入りしてるから、動向を探られていた可能性を否定できない。
或いは君の渡航情報を知りえるのは、Ωの構成員以外いない訳だから……」
私とリオの頭には、イスカリオテのユダがΩに存在するのではないか?
という最悪の答えが浮かんでいることを、暗黙の了解のうちに気付きあっている。
「そういう訳で、何れにしても私としては、大賢者ボアネルゲス様とリオ、トバルを除き私の渡航情報を他に洩らしたくない」
「そうだな、君の言う通りにしよう。リオは懸念を消さず「然し、海帝が執拗に君を狙う理由は一体何なのだろうか?
ともあれ、今回も無事で何よりだよ。
またしても牢から忽然と消えた君に、海賊達もさぞかし驚いtたことだろう。」
私は首を横に売り「今回は、違うの。
私は海賊の牢に入ることなく救われた。
別の海賊にね」真相の一部を打ち明けた。
「どういうことなんだ?
海賊が海賊が闘って、君を救ったっていうのかい?
その海賊は海帝に比肩する海賊艦隊を率いているということか。
だが、そんな海賊がティターン海やアトラス海でもいたか?
私は全く知らないが」
「リオの言う通りそんな海賊はいない。
彼等は海賊だけど、賊は族でも、海の義賊なの。
そして、まだたった3人しかいないし、船もない。
彼等の船はギルド・アルカのモンテ・ブカとその姉弟、弟子たちによって秘密裏に、アララトの聖樹で建造される」
俄かには信じ難い話にリオはあっけにとられがらも心配そうだ。
私は笑みを咲かせて「彼等3人は、千幻万朧の強力な法術を操り、比類なき剛強無双の武術を体得している。
その胆力は、総勢60を超える海賊相手に、些かもひるむことなく、寧ろ余裕さえ窺えた」
「術を操る武人が3人もいたってことかい?」
「そうなの。リオ」
私は、ユキアとの出会いからクレブリナ海賊団の襲撃と激闘。
3人の国パークスのこと。
彼等が絶滅していた筈の忍者だということ等、今回の出来事中で知りえた概要をまずは語った。
話を聞き終えた時リオの面は緩んでいた。
奇跡の如く現れたユキア達3人の海賊が、信頼できると認めたからだろう。
私はそれが嬉しい。
「話を戻すね」私はそろそろ話を本題にもっっていこうと決意した。
「アララトの聖樹は、義人ノアの箱舟そのものの建材と、箱舟から遺跡的に芽生えて育った樹木ではないかと、私は推察している。
数百年に一度氷雪が溶けた時にしか、入手できない貴重な建材って話だった。
ノアの箱船の聖片は聖遺物として、アルメニア王国ーーメシア教東方正教の一つ。アルメニア正教の総本山、エチミジアン大聖堂があるーーのエチミジアン大聖堂にから移管されトバルが完璧に製作した模造品と、今はすり替わっているよね。
私がある程度の大きさで入手するから、本部の聖片と照合して研究してみたらどうかな?
今回アララトの聖樹は全てユキア達が買い占めたから、他に奪われる心配はない」
「わかった。私から大賢者ボアネルゲス様にだけ話をしよう」
「もしアララトの聖樹が、ノアの箱舟と同じ建材なら、ユキア達の船は、どんなに激甚な嵐に遭遇しても沈むこともなく、不沈艦として大活躍することは間違いない。
更に、モンテ・ブカ親子の腕で建造されるから間違いなく世界一の海賊船になる」
私は自分のことのように得意満面だ。
「その船に、千幻万朧、剛強無双を誇る3人の忍者が乗り込む訳だからーー」
リオが話を引き取って、
「その海賊達と手を組みたいって、君は言いたいんじゃないのかい?」
その真意を見抜き、身を乗り出している。
「リオが世界で一番頭の冴えてる人だってことを、私は今日も思い知らされた。
話が早くて、いつも助かっている」
「お世辞に浮かれる私じゃないってことを、君は知ってると思うが違ったかな?
然し、独りで逃亡するなら、我々は余程想定外の焦眉の急に陥らない限り、誰かに手を借りなくても問題ないはずだが……」
「彼等は60人以上いたクレブリナ海賊団相手に、たった3人で戦い抜いた。
信じられる?
ユキア達は、海帝を敵に回すこと等、全然気にもしてなかった。
私を一人の女性として、同じ船の乗客として救ってくれたのよ!
見返りも求めなかった。
この事件の時居合わせた、いるか達は私を含め誰一人落命しなかったことを大喜びしていた。
純真で、愛と平和の象徴であるいるかが、ユキア達を認めなついていたのよ!」
「いるかが海賊になつくなんて、私は古今東西聞いたことがない」リオは目を丸くして「海滅時代に極東の島国ヤマトで絶滅していた忍者がこの世界に生き残っていたことは驚天動地だと言えるだろう」
「3人の海賊は船長のユキアはまだ18歳になったばかりで、他の2人はその一つ下なの。
この2人は出会った時、獣人に完璧に変身していたことは話したけど、他にも驚愕の事実がある。
2人のうち一人は、聖獣ゴクウ・ソンの一族を召喚していたの。
この少年は、水と土の二属性を体得していて、あらゆる植物を思いのままに操る術を会得しているみたい。
残念ながら私は見れなかったけど、聖エレミエル号の乗組員と乗客はそれを目撃している。
もう一人の少年も、聖獣レン・ビオリスの一族を召喚するらしい。
この少年も、水と風の二属性を体得していて霧を操り、様々な結界術を駆使し、人の幻映を出現させることもできた」
私の話にリオは目を見張り口を開けたまま。
きっと、リオ自身自分の様相にkづいてないだろうと、と察した。
「船長のユキアは、火、畦、土の三属性を体得していて、雷の術を自由自在に操っていた。
忍者は、聖属性と同等の陽属性と、魔属性と同等の陰属性の修得しているから、正に千幻万朧の術を操る。
それに加えてユキアは、屈強の海賊団相手4人にたった一度の攻撃を命中させることを赦さず、逆に敵をあっという間に倒した。
他の少年達は、クレブリナ海賊団の幹部で一人は副船長の武人と、独りは女魔導士と闘ったことは話したけれど、実は殺そうと思えばできていたにも拘らず殺さずに勝利したの。
私は、今リオが思ってるように、その全てが信じられないと自分の目を疑った」
未だ興奮冷めやらずといった語勢で、私は話し重要な現実を口にする。
「ユキア達3人を含め」、パークスの忍者達は、単に忍者の末裔という訳ではなく、技も術も現役よ!」
「そのパークスという国の今後の動向が、非常に気なかかる。
現役の忍者の軍団が出没すれば、アトラス海、ティターン海金諸国の目なる。
世界中の台風の目になるのは誰にでも想到できる答えだろう。
リオの推量には騒乱を危惧する不安が揺れる。
「然しならばこそ、君が考えているように、若き3人の忍者海賊と手を結ぶことに大賛成だ。
トバルには私から話しておこう。
大賢者ボアネルゲス様にも報告をしなければならないが、先刻話した渡航情報を含め、その動きも大賢者ボアネルゲス様とトバルだけにして方が良いだろう。
君を含め4人だけで議論できるように、私が調整するから少し時間が濃しい。
できる限り、早く機会を作るよう努力する」
私は本題が良い方向へ進んだことに、ほっとしていた。
ところがリオの貌を翳が覆う。
「私の方からも君に話しておこうと思っていた事件がある」リオは机の上で組んだ両手に眼を落とし、重そうに話し始めた。
「魔遺物、イエフの弓ーー列王記下第9章ーーが海帝のに手にあることを、ロジャー達がギデオンのエフォドの調査中に偶然入手した。
それは海帝自ら所持しているらしく、手放す気配はないという。
ギデオンのエフォドの行方は、杳として知れず、ロジャーの推測によれば、海帝艦隊を率いる船長の誰かに貸与しているのではないか、という話だった。」
私は柳眉を顰め「厄介なことになったね」呻くように呟いて暫く沈黙に入る。
これまで」魔遺物の存在を知り、それを入手しようとする者はいなかったのに……と、私は嘆息する。
海賊や山賊、トレジャーハンター達は、今まで、国家や教会、大富豪に売却し金貨に変えるだけだった。
聖遺物や幻玉の与える具体的な力を知らなかったことや、知ったとしてもそれが莫大な価値を生まなければ、無意味な我楽多にしか見えなかったんだろうな。
でも国家と教会は違う。
国家は聖遺物や幻玉の秘めたる力を研究し、それを国力増強の道具にできる上、自国と他国の力の均衡を図る目安になるから。
教会は所有することで、信徒の新恋を深め、メシア教の教会として、或いは宗派内でも、名誉ある発言力を持つことができる。
大富豪の場合、芸術的な価値を求めてるだけで、その力については殆ど無知識だから、あまり心配することはないけど。
だから、国家や教会、大富豪が聖遺物、幻玉を入手した場合、模造品とすり替えておけばいい。
アルメニア王国も、ノアの箱舟の聖片の力について研究したみたいだけど、現物が大きなものではなく解体できるものでもないから、結果は出せてない。
結果芳しい答えは出てなかった。
そこでオメガで研究をしようということになって、トバルが製作した模造品とすり替わってたんだけど、結局Ωでもまだ結論は出てないんだよな。
ノアの箱舟の聖片がもしアララトの聖樹と同じだと断定できれば、進展はありそうだけど。
アルメニア王国はその答えを出せなかった。
でも、聖遺物を所有しているから、メシア教を国教とする国々の中で、発言力は強い。
その一方で、今のところ魔遺物だけとはいえ、それを所有している海帝の目的とは?
それがわからなくても、二つだけははっきりしていることがある。
一つは、魔遺物を売却する気はないこと。
二つ目は、私やモンテ、ピッコロを拉致しようと、目的の為なら「手段を選ばない冷淡な」人物だということ。
ーーだから、このまま海帝の動きを看過することは出来ない。
私は気炎を吐く。「魔遺物を所有している海帝を放置するのは危険よ。
私達の方も魔遺物ネフシュタンの魔片を追跡しているから無理だけど、ロジャー達の応援に人員を回すよう、大賢者ボアネルゲス様に具申してみたらどうかな?
たとえ一人でも、二人でもロジャー達の手足にになる人材が必要になると思う。
何だか嫌な予感がするというか、とにかく海帝が魔遺物を入手している目的を早くつかむべきじゃないかな?」
「私も同感だ」リオは厳しく「今日この後直ぐにそうしよう」
私は予定通り話がまとまり安堵して愁眉を開く。「時にキラ、君は何処にいるんだい?」
「レムスよ。ウルティオー海賊団が、ガリアス王国に向かう商船を狙っているから。
何れこの近海に現れる」
「そういうことか、じゃ銀の匙だね?」
うん、そうよ。どうかした?」
リオは、子供が悪戯をするときの貌で「大賢者ボアネルゲスと私とトバルで忍者海賊達の話をする前に、一度彼等にあっておきたいのだが?
私はーーなーるほど。そうきたかと微笑む。
「きっとリオもユキア達とすぐになかよくなれると思う。食事のことを除けばね」
リオナルド・ダ・ヴィンチは菜食主義者だった。
何しろ売り物の鳥を購入してしては、その鳥を放してやる程、命あるものに愛情を持つ人なのだから。
どうかすれば植物にさえ命を感じてる所為で「食事しなくて済むのなら、それでいい」と考えてるようなところがあった。
「そういえば、」私はふと思い出す。「忍者の忍術と私達の法術に関する思考はとても相似していると思う。
私達の術は、全は一、一は全という短い言葉に集約してるでしょ?
それは、神の創造された世界に一切無駄はなく、美しい均衡によって成立している術だからこそ。
忍者は、互いを否定せず支えあう、という言葉で表現していた。
私達の術と忍術って、その源泉は同一ではないか? 私にはそんな気がした」
リオは驚嘆しつつ笑いじわを刻み、然も嬉しそうに「美しい!」
私は歓喜に震える心魂を、ぎゅっ、と抱きしめた。」
リオのそのたった一言こそまさしく美しいと感激してしまったから。
読んで頂きありがとうございます。
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評価✩✩✩✩✩やブクマをして頂けると更に喜びます!
長い物語ですが、様々な要素で楽しんで頂けるよう努力してます。
これからの物語も是非読んで頂けますように・・・。 m(_ _)m




