12.それぞれの志
読んで頂きありがとうございます。
この章から読まれた方は、是非【ユキア・サガ 航海① ネフシュタンの魔片 第一巻 第1章】から読んで頂けますと、幸甚です。
オレが海賊として世界に名乗りを上げた日..
行き成りクレブリナ海賊団との激闘という洗礼が待っていた。
然し、レイとザザの助勢を得て、海賊たちを撃退!
その日(昨日)は、オレの18歳の誕生日。
もろもろの祝宴は、日付が変わるまで続いた。
オレは翌朝、いつもより少し遅めの早朝に目覚める。
まだ6時前だった。
が、階下の厨房ではローザとランブラが、もう朝餉の準備している美味しそうな音が届く。
パンをこんがりと焼く馨ばしいの臭いが、楽しそうに踊っている。
オレは、ローザとランブラをさすがだなと、心の底で感心していた。
おそらく2人は、3時間も眠ってない。
オレは、船長室入り口右側の洗面台で、洗顔等を済ませ、身支度をする。
それから、神に毎日の朝の祈りを捧げた。
オレは、昨夜は遅かったから美人姉妹以外、皆まだ夢の途中だろうと笑みが浮かぶ。
気持ちよく目覚めたので、外の空気を吸おうと、上甲板に向かう。
海上の朝の少し肌寒い空気が、僅かに残っていた眠気を追い払ってくれる。
ところが以外にもそこには先客がいたのだ。
中央大帆柱に近い右舷の船縁から、キラが楽しそうに談笑している。
美しく長い黒髪が、ティターン海の潮の馨の強い澄んだ風に、さらさらと流されながら。
オレは、こんな時間に一体誰が海に誰がいるのだろうと奇異に思い、暫く様子を眺めていることにした。
人気のいない海に向かって、何を誰と話しているのか、皆目見当がつかない。
オレがそんなことを推量していると、不意にキラが振り返った。
眩しい程の耀きを放つ笑みを帯び、元気のいい大きな声音で「ユキア、おはよう!」
「おはよう、キラ」オレは北に歩み寄りながら訊く。「こんな朝早くから、海に向かって誰と話してるの?」
キラは「お友達よ」生き生きしている。
オレがりかキラの傍らから海を覗くと、そこには皓いいるか達がいた。
全部で5頭のいるか達はは、純白の美しい姿をしている。
だが、群れの中で一番大きい一頭は、数か所に痛々しい人間の手によるものだと思しき傷跡が、消えることなく刻まれていた。
どうやらそのいるかが、この群れの頭らしい。
風が弱いので、船の速度が落ちているから、いるか達は器用に立ち泳ぎで会話していた。
「ピューイ」「ピーピー」などの高音を発し、キラとの会話がいるか達も楽しんでいる。
いるか達は何かをキラに伝えたそうにも見えた。
オレがそう考えた理由は、キラの美貌が綻んでいることもあったが、いるか達から優しい癒される感覚の、柔らかな波動を感じたから。
いるか達に思わず面輪が緩むオレに「かわいいでしょ?」キラは少し燥いだ言葉つきだ。
「うん」オレは肯じて「いるか達はキラの言ったことを理解してるの?
それとも、キラがいるか達の言っていることを理解できるの?
どうやって会話が成立してるんだ?」
「んーとね、いるか達は私達人間の言葉を、理解する能力を持っているのは間違いない。
キラはオレの問いに答え続ける。
「いるか達は、私達人間には聴くことができない音で会話する能力を持っている。
だから私にはいるか達の言葉の全ては理解できていない。
そういう訳で、私にわかるいるか語と、私達に言葉を交えていつも話してる」
「ほー、其れで会話できるのか。すごいなっ!」
オレは、その声調に驚きと尊敬という音色を込めた。
「ユキアにもそれはできる。その才能はもうあるし」
才能がある? ってオレのどこにいるか語の一つでも理解できる可能性があるんだ?
勿論いるか達と話せたら絶対楽しいけど。
「難しく考える必要なんてない」眉を顰めているオレにキラは自信を持った言い回しで「私達人間を含めた生物や、この世界を創造をしている物質には目見視えるものも観えないものも、一つ一つ残らずすべて個々の波動がある。
換言すれば、私達や物質は個体であり、波動そのものでもあるってこと
法力も、忍者が言うチャクラもそう。
それはわかるでしょ?」
「うん」オレは思索をしながら頷いた。
「でしょ!? それは相手が発している心魂の波動を、ユキアの心と魂が感じ取ったから。
そこに言葉はなくとも、相手の感情を察知できるなら、況して面と面を見合わせたら、もっとその人のことが理解できる筈よ。
時と場合によって、例外もあるだろうけど」
「誰かの心魂の波動と表情でお互いをある程度理解できるなら、いるかとも分かり合えるってこと?」
「その通り。いるかは人間と同じように瞬きするし、表情がとっても豊かだし。
そう考えているかの聲を注意深く聞いてると、段々と会話が成立してくるって訳。
私はそうだった。ユキア達もきっといるか達と話せるようになる」
「ニックス、ユキアに朝の挨拶しないとね」
ニックスと呼ばれたいるかはコクンコクンして「ユキア オハヨウ」と喋った。
少しこもった音だったが、明らかにニックスは話したのだ。
キラに促されてオレは、はっ、と我に返り慌てて「ニックス、おはよう。初めまして、オレはユキア・ヴェルス。よろしく」
ニックスや他のいるか達もパチパチ瞬きしながら、楽しそうにからだを揺らしている。
「いるかは、私達に言葉を話せる。その意味も理解している」とご満悦のキラ。
「他のいるかも紹介しておくね。
ニックスの右にいるこの群れで二番目に大きのはネーヴェ。
その次に大きくてニックスの左にいるのが、ジュネー。
二頭ともニックスの奥様達よ。
ネーヴェの子がその後ろにいるスノウで女の子。
ジュネーの子がその隣にいるニエベで男の子」
オレはこの群れのいるか達を直ぐ見分けられるようになった。
一頭一頭の名を呼んで「おはよう」と挨拶する。
「ところで、キラには仲間がいるみたいでけど、行動はそれぞれ単独なの?」
「そうね、大体独りが多いかな。それぞれの役割があるから」淡々とキラは答えた。
オレは「独りで寂しかったりしない?」
昨日の海賊襲撃もあったから、本当はーー心細くなったりしない?ーーと訊きたかったのだが、キラの自尊心を考えるとそれはできない。
「寂しいのは嫌い。でも独りは嫌じゃない」キラの言葉は凛としていた。
「仲間もいるし、こうしてユキアに出会ったりとか、ずっと独りって訳じゃない。一人じゃ何できないから」
「うん。そうだね。オレもキラと出会えて本当に良かった。」
オレは少し照れ臭くなったから、話題をいるかに戻す。
「ニックス達は、キラの船旅にいつもついてきてるの」
「出会ったのは、ある魔遺物を追っていた約4年前。
それ以来いつもではないからわからないから何故かはわからないけれど、船旅の時はちょくちょく出会うようになった。
んー、そういえば私が危局に直面した時は、いつも姿を現していたような気がする……」
キラの聲は徐々に小さくなっていき、そのまま沈黙してしまった。
オレは、考量に耽るキラに、敢えて何も言わない。
キラが今、何か大切な答えを探しているのだろうと感じて、邪魔は出来ないと思った。
※※※※※
バルセルンまでの航海は、平和な旅が続いていた。
一行はローザとランブラのお陰で、美味しくて楽しい食事を毎日満喫できている。
毎夜食事が負えあると決まって、オレはナーヌス親子と船の建造の詳細を熱心に遅くまで話し合いを続けた。
オレが求めた船は、要約すると次の通りにまとめられる。
①世界最速を誇る船であること。
②居住性が良く、衛生的で気であること。
③世界最強の火力を誇る船であること。
④船体は緋色と金色を用いた美しい船であること。
⑤船首像は聖母マリアであること。
話し合いが積み重なっていくと、ピッコロは父モンテの息子で、弟子でもあったが、もうその腕はギルド・アルカでモンテに肩を並べるものと発覚した。
三歳の頃から船の模型を組み立て、六歳の頃には船の地面を書いていたとのこと。
モンテに言わせると、最近はピッコロの思い付いた考えの方が水準が高く、技術も自分と大した差はないという。
オレ自身の船の建造についての思い付きや考えに、ナーヌス親子が目を見合わせ、舌を巻くことも屡々あった。
ピッコロはアララトの聖樹で船を建造する日々が待ち遠しいらしい。
「世界最強、最速、不沈の船でごわす! 世界で一番美しく、世界で一番過ごし易い優しい船になるでごわそう!」
暇があれば、その時に備え黙々と図面を描いている。
レイやザザも、船が完成するする日が楽しみで高まっていく喜びの中、期待感で胸を膨らまている趣だ。
クレブリナ海賊団から分捕ったお宝は、オレ、レイ、ザザが残すものと決めたものを別にして、キラが80.000.000ドエルンで買い取ってくれることに。
オレは心底からキラに感謝していた。
その金貨を船の建造費をとして支払いにと、ナーヌス親子に申し入れたが、固辞されてしまう。
オレが諦めず何度も何度も交渉した結果、ようやく30.000.000ドエルン支払えることになった。
ナーヌス親子は、それ以上は頑固として受け取れないと強く主張し、到頭モンテが「これで話がまとまらないなら、この話はなかったことにするでごわすっ! 助けて頂いた恩は別の形で返すでごわすっ!」とまで言い始めたので、オレも感謝しながら納得するしかない。
バルセルンへの到着の2日前。
キラは料理ではローザに敵う訳がないとよく理解してたからだろう。
オレと約束していた料理はドルチェに変更。
夕餉のドルチェとして、ルムウベッタ入りのチョッコラート・ビスコットに、ルムウベッタのトルタを用意してくれたのだ。
いずれも絶品!!
オレが驚喜したのは言うまでもない。
然もローザやランブラも含めみんなが大絶賛した程。
馨、サクサクした食感と喉越し、味、全て良く、あっという間に売り切れる。
相次ぐ賞賛の聲に、面映ゆそうなキラは口数も少なく、嬉しそうに少し頬が紅潮していたのが、オレの印象に残った。
ローザはパンが好きなオレに、パンに加え、パン料理、パン菓子のリッセタを与えることに惜しげも見せない。
ランブラも、のトゥルケットのリセッタを手渡している。
オレは2人のリセッタは秘伝の書だからと、それらをすべて別紙に書き残す。
秘伝の書はきちんと包装して保管した。
バルセルンに到着する前夜の夕餉の直前に、キラは合計380.000.000ドエルンを、330.000.000ドエルンと50.000.000ドエルンの小切手に分割してオレに支払ってくれた。
「キラ、ありがとう!」オレは心魂をぶつけて、キラへの感謝の気持ちを伝えた。
「だ・か・ら・感謝してるのは私の方なの!
ユキアの力になれるなら、それは私にとって大切で嬉しいこと。お礼の言葉なんていらない」キラの頬が緩む。
ユキアは直ぐに330.000.000ドエルンの小切手をモンテに支払う。
ーーいよいよ、ユキアが思い描く義の海賊船の建造が、正式に動き出す!
然しオレはまだ海賊団の名も、船の名も決めてない。
「レイ、ザザ、海賊団の名前と船の名はもう少し時間をかけて考えたい」とオレは告げた。
1度決めたら、コロコロ変えられるようなことではないから、後で臍を噛みたくない。 船の方はいくつか候補があるんだけど、海賊団の方は、まだ候補もないんだよなぁ……」
「お任せいたします」
「ござる!」
2人はその全てを、信頼する若き主であるオレにゆだねている。
バルセルンに到着すると、オレとザザ、美人姉妹は聖エレミエル号に戻る。
ランブラは、レイとザザから預かっていた1ドエルン金貨で聖書を2冊入手して2人に届けた。
レイとザザは喜び、感謝を伝えると大切そうに聖書を開く。
その日の夜は再び銀狼の獣人に変化したレイと、キラ、ナーヌス親も、聖エレミエル号で食事をすることになった。
聖エレミエル号の船長は、オレ達の食事の為にと船長以下士官専用の食堂に用意してくれている。
そこは、六層構造の聖エレミエル号の船尾楼第2層にあり、」清潔で広く磨き上げられた樫の卓子縦に二列並んでいた。
それぞれ8人掛けの大きな卓子で、奥側がオレ達に用意されている。
壁には、開閉する真鍮製でほぼ正方形の窓が左右に4つずつ並んでいた。
その船窓から限りなく黒に近い濃紺の夜天とそこに煌々と耀く星々が覗いている。
ニックス達の話声が、微かに俺やキラに届く。
開け放たれた船窓から吹き抜けて舞う風と共に。
オレ達の卓子には、他の客とは違う豪勢な料理が、既に用意されていた。
船長は聖エレミエル号を建造したのか勿論知っていたので、経緯を聞きその無事を喜んでいる。
が、モンテからキラがオスティア商会の出資者の1人だと聞かされると、途端に血の気が失せ顔面蒼白になった。
それから平身低頭して、キラへ謝罪を繰り返す羽目に……・
「謝罪は必要ありません」キラは平淡な言い方で「私の方こそご迷惑をお掛けしました。
全てはユキア達のお蔭です」
キラはそう詫びて頭を下げた。
船長は「レムスに到着するまで、最大限のことはさせて頂きますので、何なりとお申し出ください」大汗をかいて答える。
然しキラが「私とレイ、モンテとピッコロはあちらの船に戻って、明日の朝餉の後レムスに直行します。
この船に残るのは、ユキアとザザ君だけです。ローザとランブラはこちらに戻します。
ユキアとザザ君のことを、よろしくお願いします。
それと、ユキアからお願いがあるそうです」ユキアに話を振ると、船長がぎくりとしたのを全員が見た。
オレに、船長という立場で大義名分を振り翳して論破され、有言実行した結果を見せつけられているのだから。
その見返りとして、どんな難題をつきつけられるのか?
という不安が相貌に表れている。
「安心していいよ」オレは寧ろ気の毒だと思いつつ「ローザとランブラには、オレ達と同じものを、オレ達と一緒に飲食させること。
2人に為に、士官室を一部屋開けること。
この2つだけ。
もしこの願いを拒否するなら、今度はこの船も乗っ取ることになるよ」
更に俺は、ニッと笑って忠告する。
「一つ船長に為の教えてあげるよ」オレは真剣に「海賊達はさ、船を拿捕したら船員たちに必ず訊くんだ。
その船の船長や士官達が船員達に与えた待遇を。
そして、船員達が正当に扱われてなかったことを知った場合、その船の船長と士官達は、この上ない苦しみと痛みを味あわされて、殺されるんだ。
船員達に恨まれるようなことはくれぐれもしないように、自分自身の為に」
船長は「畏まりました。全て仰せの通りにさせて頂きます」飛ぶように厨房へ走った。
焦って大慌ての後ろ姿に、一同大爆笑!
数分経って、ローザとランブラも食事に加わった。
2人は当惑していたが、事情をキラが伝えると、オレに礼を伝える。
が、他の乗組員の視線が気ななって、居心地が悪そうだった。
でも、オレの「乾杯!」を合図に食事が始まると、卓子を囲む面々に笑みが咲く。
レイは余程心配なのか、食事をしながら何度も口煩くオレの世話や身辺警護について、ザザに注意や支持を細かく出す。
でも、ザザがそんな例を「レイはユキア様のおかんでござるか?」等とふざけて真面目に相手をしない。
終に、怒りが心頭に達したレイの強烈な拳骨が、ザザの頭に炸裂してしまう。
そこには見る見るうちに大きなたんこぶが出現し、居並ぶ者達を笑いの渦に巻き込んだ。
レイまで吹き出す始末で、ザザは恥ずかしさのあまり、一時姿を隠してしまう。
後にご本人が語ったところによれば、中央帆柱に登っていたらしい。
涼やかなる海風が、たんこぶを優しく冷やし痛みを和らげてくれたそうだ。
レムス到着後、オレ達と合流してからの為、キラが良い宿を手配してくれるまで、レイはナーヌス親子宅でお世話になることに。
ロックの場所が判明し、連絡が取れる段になったら、オレはクルムを持っていないから、カエルム便を置く手筈となった。
カエルム便は、希少種族の鳥人族が営む、空の各種物流業務のことで、世界中どこでも手紙から大小の荷物等を最速で配送してくれる。
但し、高価だった。
オレは、50.000.000ドエルンの小切手をキラに預け、換金してから」レイに管理させるよう依頼した。
レイ、ピッコロは、この夜の夕餉が終わっても聖エレミエル号に残り、オレやザザtとそれぞれの未来への思いを、時を忘れて語り合った。
オレは、パークスが、いやこの世界も破棄しようとしている『義勇』について滅を帯びた言葉で紡いだ。
「この海が天からの雨、一粒一粒から生まれたように、オレは国祖ユキムラ公の遺訓をこの心魂に刻み、世界平和の為の一滴でありたい。
レイはオレが目指し歩む道に必要な全てを、冷静沈着にあげていく。
「国祖ユキムラ公には、一騎当千のヴェルス十勇士がその傍らにいたように、ユキア様もヴェルス十勇士を集めなければなりませぬ」
「レイ、ザザがいるから、あと8人か」オレは未来の仲間達に思いを馳せる。「ロック、ロクネ、オクトー達を仲間にできたら、どんなに嬉しく頼もしいものか……」
レイはそれには答えず、「操舵手、航海士、砲手長、船大工、船医、甲板長、こうした人材が必要かと」オレに必要な人材を感情を抑えた語調で列挙した。
「オイラも、もっともっと修行に励むでござる! より強力な技や術を会得して、ユキア様の先陣となり戦場を切り拓くためにっ!」
ザザの面輪は真剣そのものだ。
「何としてもレンを口寄せできるようにならねば! それなくしてヴェルス十勇士は名乗れぬっ!」
レイは自分自身に向かって命じ鼓舞して誓う。
「オイラも必ずゴクウを口寄せしできるように、身命を賭して鍛錬すでござるっ!」
ザザも、己の意欲を搔き立てて、堂々と宣言する。
ピッコロは、夢見るときと同じく目を閉じる。
アララトの聖樹数々の伝説や、その材質の神秘を余すところなく語った。
「そのアララトの聖樹で、ユキア達の船を建造できことは、身に余る光栄でごわす! 」そう言って開眼。
でもその表情には、どこか寂し気な気配を、オレは一瞬感じた。
隠しバチノで見た時と同じように。
4人の少年達の話題は尽きることなく、延々と続く。
ーーローザとランブラが昨夜、ユキア達にたっぷり盛り合わせたドルチェと数種の飲み物の後かたずけに来た。
勿論ドルチェと飲み物もすっかり消えていたが、その時初めて、オレ達は日の出に気付く。
オレ達4人は、朝餉の支度が調うまで、聖エレミエル号上甲板で過ごそうと足を運ぶ。
払暁が4人の眼眸にまず示したのは、黄金の煌めきを放ちながら天へと昇る太陽だった。
摩訶不思議なことに、その鮮烈な金色の光矢は、4人の眼前に広がる滄溟を、緋の炎が熾っているかの如く染めていく。
ーー金と緋。
オレは、神の手が創造した、その神秘的な壮観に感銘して心魂が震えた。
「どうして黄金に輝く光が、海原を緋色に変えられるのかな?」
他の3人も同じ思いに違いない。
それを感じる為に言葉は全く必要なかった。
オレは沈黙のうちに祈りを捧げる。
一晩中語り合ったそれぞれの志が、きっと成就しますように。
その為の恵みと賜物を与えて頂けますように。
世界中の蒼氓に、不可避の不幸や困難が襲い掛かったりしても、この夜闇を追い払う陽光の如き、希望の光を絶えず与えて下さりますように。
あの漆黒の闇を撃滅してくださいますように。
4人は光が闇を討ち破る光景に勇気づけられ、心魂が力強く高鳴るのを感じ協調している。
各々の横顔に気概と昂揚が満ちていた。
※※※※※
朝餉の後、キラ、レイ、ナーヌス親子を乗せた船は、一路レムスへと出航した。
この時ばかりは、聖エレミエル号船尾楼甲板からザザも寂しそうにレイたちを見送る。
昨夜、レイから喰らった痛烈な拳骨のことは、すっかり忘れているらしい。
先立つ船と共に、いるかのニックス一家もその周囲を泳いでいた。
レイ達の船からピッコロがザザと同じく手をぶんぶん振っている。
オレも何度か手を振った。
が、レイは腕を組んだまま。
キラとモンテも手を振っている。
オレは、船が見えなくなるまで見送る気だ。
お互いの姿が、辛うじて視認できる距離になったその時、レイが初めて手を振った。
不覚にも、オレの緋隻眼が潤んでしまう。
ザザも涙目になっていた。
オレ達は、船が見rなくなっても、無言のままその場から離れようとは思えない。
読んで頂きありがとうございます。
駄作ですが、批評も含め、ご感想を頂けると喜びます!
評価✩✩✩✩✩やブクマをして頂けると更に喜びます!
長い物語ですが、様々な要素で楽しんで頂けるよう努力してます。
これからの物語も是非読んで頂けますように・・・。 m(_ _)m




