断罪イベント365ー会場が工事中
この国の王子は、365日断罪イベントのことしか考えていない王子なのです。
今日も断罪イベント始まります。
断罪イベント当日。
高鳴る鼓動、見守る観衆、涙ぐむ婚約者、そして──
「……って、え?」
馬車を降りた王子が、思わず言葉を失った。
広場だったはずの場所は、
今や巨大な足場とシートに覆われた**工事現場**と化していた。
あちこちに「立入禁止」「足元注意」の札。
空には足場を覆う青いネットが風に揺れ、
足元には転がる木材、セメント袋、
そして……
「トンテンカンテン! はい、どいてどいて〜、
そこのお兄ちゃん危ないよ!」
陽気な作業員が、ヘルメットをかぶったまま王子に声をかける。
その手には巨大なハンマー。後ろではユンボが唸りを上げている。
王子はお付きの騎士にこっそり耳打ちした。
「……ここ、本当に断罪会場で合ってるのか?」
「はい。間違いなく、いつもの公開断罪イベント会場でございます」
「いつものって、こんなだったか!?」
苛立ちを隠せない王子の背後で、例のコンサルが悠然と歩いてきた。
片手に持つ巻物の資料には、こう書かれている。
『断罪イベントリハーサル会場スケジュール
再調整案(最新版ver9.4)』
「おや、殿下。いかがでしょう?
“未来の断罪を、もっと効率的に”をコンセプトに、
リニューアル工事を進めております」
「なんだと……?」
「こちら、特設の映像装置を導入予定でして。
あの壁の裏に観衆が収容され、
感情の動きに応じて照明が変化するなど──」
「今やるな!!」
王子の声が現場の反響板に響き、
カーン!というハンマー音と同時に鳴り渡った。
観衆は、いつものように整然と並ぶどころか、
仮設の足場に迷い込んだり、
トイレと間違えて工具倉庫の扉を開けたりと大混乱。
「すごいね、あの人、空中で叫んでる!」
「違う、足場の上だよ!」
「推しの断罪見たかったけど……
これ、推しの工事見学会じゃん……」
婚約者は、足場の隙間から降ってきた木屑を払いつつ、小声でつぶやく。
「ねえ……これ、いつ断罪されるのかしら?」
その隣で、黒幕令嬢は憤然と叫ぶ。
「工事してるって知ってたなら、
事前に教えなさいよ! この日のためにドレス新調したのにッ!」
「お嬢、木屑が! 頭にノリ付いてます!」
なぜか職人たちの間では、黒幕令嬢のドレス姿が
「今どきの現場監督っぽい」と話題に。
もう、誰も断罪のことなど気にしていなかった。
陽も傾き、足場の影が長く伸びていく中、王子はぼそっとつぶやいた。
「……帰ろうか。今日は、無理だ」
「では、次回のリハーサルに向けて、資料を準備いたします!」
「……だから今やるなって言ってるだろ!!!」
教訓:スケジュールは共有しましょう。
黒幕令嬢のドレス姿、大人気。
ファッションリーダーとしての地位を築く。
読んで頂き、ありがとうございますm(_ _)m




