ボサ ロイアルヴァルトを体験する
ノヴァは非常に不機嫌な表情をしている。 「どーせアホですよ……。重し(お守り役)がいなきゃ、お城の中で迷子になりますよ……」 何やらブツクサと独り言を言い続けている。
「そんな、ノヴァさんはアホなんかじゃありません! 今日お話を聞いて、私の足が治ったのは、ノヴァさんのおかげでもあったんだってことがよく分かりました。 足を失ってからの私の落ち込みようといったら、それはひどいものでした。13日の金曜日と14日の土曜日、12日の木曜日に仏滅がいっぺんに来たような気分だったんです! 毎日毎日、家の中でうつろな目をして、外を自由に歩く人を妬んだり不幸を祈ったり……。本当に最低の人間でした。自分で自分が見にくく(醜く)思えていた私を救ってくれたのが、オークリンさんとノヴァさんなんです!」
何やら、自己否定を交えた熱烈な感謝をボサはブツブツと続けている。 紆余曲折あったが、こうしてボサ・テーラがノヴァの護衛として、ロイヤルヴァルトに入隊することになった。
◇◇◇◇
だだだだだ! 城内の廊下に騒がしい足音が響き渡る。 (ロイヤルヴァルトに新メンバーじゃと!?) カタリーナは転送陣に飛び乗った。 ロイヤルヴァルトの部屋に飛び出すと、目の前には新入りのボサ・テーラがびっくりした表情で立っていた。
「お主が新メンバーじゃな? 苦しゅうない、自己紹介することを許すぞ!」
「えっ? ……なんでこんなところにお子さんが?」 ボサには状況が理解できていなかった。 「お嬢ちゃん、迷子? ここは勝手に入ってはいけないところよ。ご両親と一緒に来たのかな? お姉ちゃんと一緒に探しに行こうか」
ボサが優しく手を取ろうとすると、カタリーナはそれをバシッと振り払った。 「プレストン! こやつに説明せい!」
プレストンは異変に気づき、顔を青くした。 「ボサさん、手を離して! 僕と一緒に片膝をつき、敬意を表してください!」 ボサは言われるがまま、プレストンと一緒に片膝をつき、頭を下げた。
カタリーナは胸を張り、高らかに宣言した。 「わらわがこの国の第二王女、カタリーナ・サワーシップである。お主たちが仕えるべき存在である。心得よ!」
その背後で入室用の魔法陣が光り、近衛騎士団のオリヴィエが入ってきた。
「姫様……ロイヤルヴァルトには突然入っていかないというお約束でしたよね。今、外では護衛も侍従も入れず、入室権限のある侍従長のところに皆が泣きついてきたんですよ。 その侍従長は、大急ぎで駆け出そうとした瞬間に肉離れを起こしてしまいました。彼は泣いていましたよ。『幼い頃から姫様のもとに真っ先に駆け寄れた自分が、もはや自由に動けなくなった』と落胆し、それ以上に『姫様に約束を守らせることができなかった』と己を責めて。 侍従長だけではありません。姫様に逃げられた護衛たちも責任を感じており、後日叱責を受けるでしょう。姫様は類まれな才と血を受け継いでいるのです。もっと御自重くださいませ」
オリヴィエは、心底怒っている。 カタリーナもさすがに思うところがあるようで、気まずそうに視線を泳がせた。
「姫様、戻りましょう」 オリヴィエに促され、カタリーナは重い足取りで帰ろうとする。
「カタリーナ様、せっかくお越しいただいたのです。これから行う『ノヴァの能力確認』を視察していかれませんか?」 ジェーコフ司令が声をかけたが、オリヴィエはその司令を鋭い目で見据えた。 「……では、先ほど外で待たせていた護衛たちを帯同させることを条件に、許可いたしましょう」
「さあさあ、城内の地下訓練場へ参りましょう。ボサは珍しい地属性の魔法使いですから、その魔法を間近で見るのはいい機会ですよ」
こうしてロイヤルヴァルトの全員が訓練場へと移動した。 これは遊びではない。チームの連携を強化するための、重要な情報共有の場なのだ。
「オークリン、今日はお城の中ですから、お菓子は置いていきなさい」 オークリンはサンドラ副官に釘を刺され、しぶしぶクッキーの袋を机に置いた。




