長い話のあと(改正)
プレストンは、これまでの経緯である「ワイプアウト事変」と「ロイヤルヴァルト結成」について、ようやく話し終えた。
「今の僕があるのは、サムソンのおかげです。彼に助けを求めなかったら、僕は同じところで悩み続けていたかもしれない。あるいは、心が闇堕ちしていたかもしれません」
話し終えてカタリーナ王女を見ると、長い話で関心を失ったらしく、今の関心はおやつのようであった。 しかし、プレストンの話が終わったことにはさすがに気づいたようだ。
「プレストン、お主のこと、よく分かった。色々大変だったのじゃな。 お主の、妾への忠誠が心を救ったということだな。 これからも妾に感謝するのじゃぞ」
どういう脳内補正だ? 理解できないのか、さすが王女、唯我独尊な形で理解するのか!? あまりにも話を聞いていない様子に圧倒され、訂正も反論もする気力ごと持っていかれてしまった。
プレストンは自分の部屋に戻っていった。 何のために呼ばれて、どういう理解をされたのだろう? 大きな疲労感に包まれた。
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その頃、オークリンは、姉のクエルクスと一緒に、副官のサムソンを引き連れて姉妹の実家に到着した。
玄関まで出迎えに出てきた母親は、その光景にビックリして、急いで家に入り、父親のところにまで駆けていった。
「お父さん! お父さん! クエルクスが……! 男性を連れて帰ってきましたよ!」
完全に勘違いだ。 だが、父親もつられて動揺してしまった。
おそるおそる、二人は玄関を覗き込んだ。 玄関には、どこの組織かは分からないが、制服を着た大柄の男が、娘二人と一緒にいる。
「お父さん、おっきな人ですね」 「クエルクスより、だいぶ年上そうだな」 「でも、禿げてますよ」 「失礼なことを思うと顔に出るぞ! とにかく迎えに行こう」
二人は玄関に出ていった。
「おかえり、よく帰ってきたな。クエルクス、オークリン」 「クエルクス、そちらの方はどなた?」
(なんで私に聞くんだろう?)と思いながらも、クエルクスは答えた。 「こちら、聖騎士のサムソンさん。とっても優秀な方よ」
聖騎士といえば、騎士の中でも特別な能力を持った上位職のはずだ。 両親は驚きながらも、立ち話をするわけにもいかないので、家に招き入れた。
「サムソンさん、狭い家ですが、どうぞくつろいでくださいね」
両親の関心はサムソンに注がれている。 サムソンの年齢、出身地、家族構成、趣味……矢継ぎ早に質問攻めになった。 サムソンは状況が飲み込めたのか、居心地が悪そうになってきている。
クエルクスも、両親が「自分が結婚相手を紹介しにサムソンを連れて帰ってきた」と勘違いしていることに、ようやく気付いた。
「ちょっと、オークリン。サムソンを紹介しなさい」
オークリンは、なぜ姉がそう言うのか理解していないようだったが、その言葉を母親は聞き逃さなかった。
「ま、まさか、この人、オークリンの!?」
「サムソンさん! オークリンはまだ子供なので……ええと、その、なんというか……」
それを聞いて驚いたのは、父親だ。 「サムソンさん、オークリンはまだ子供なので……その、なんというか、誠実なお付き合いを、お願い致します」
「な・な・なんで!」
ここまできて、ようやくオークリンも状況を理解できた。
「違うの! 違うの! サムソンさんは、私の副官です。いつも私の仕事の手助けや、警護をしてくれている人なんです」
「副官?」 両親の頭の中では、疑問符が回っているようだ。
「オークリン殿は、吾輩の上官になります」
両親は悩んだ……。 上官? 今年、就職したばかりの子に? 聖騎士様が部下? からかわれている?
クエルクスが説明を始めた。 「この世界で、極大魔法が使えるというのは特別なこと。単身で国を滅ぼすほどの力があり、まるで戦略兵器のように管理する必要がある。 そのための組織が『ロイヤルヴァルト』よ。 『ロイヤルヴァルト』では、極大魔法を使える人には、警備も兼ねて副官がつけられる。 オークリンも、その一人なの」
「この子、この前入ったばかりだけど、階級的には大隊長クラス。かなり偉いのよ」
「この子がねぇ……」 両親はオークリンを見ながら、ギャップを感じてきた。 この子がねぇ……。 いくら優秀と言っても、飛び級で上がって仕事をさせてもらっているけど、まだまだこんな子供なのに。
両親は、口いっぱいに菓子を頬張っている娘の姿を見て、急に(サムソンさんに対して)申し訳ない気持ちになってきた。




