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極大魔法しか使えない残念な冒険者  作者: 白山月


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診療所の初仕事(改正)

◇ 治療院「ガンダーラ」の完成

いつもの訓練で見慣れた西の砂漠に、ついに治療施設が姿を現した。……といっても、現地に到着してからあっという間に組み上がったそれは、私の想像とは少し違っていた。


「ちょっと、サムソンさん。これって……ただのテントですよね?」 「はい、立派なテントですよ」 「治療施設なんですよね?」 「ええ、治療施設ですとも」 「もっとこう、白い教会みたいな巨塔がドーンと建ったりはしないんですか?」 「なりません。もし魔物が活性化するたびに、極大魔法で建物をぶっ飛ばすわけにはいかないでしょう。計画書の765ページにも書いてありますよ」 「そりゃそうですけどぉ……。なんだか、地味で残念です」


◇ 砂漠の筋力トレーニング

不満げな私をよそに、ノヴァさんとアカリさんがやってきた。 「サムソンさーん! 稽古をつけてくださーい!」 ノヴァさんは気合十分だ。今日は近衛騎士団と最初の治療対象者が到着する大事な日なのだ。


見ていると、なぜか魔法使いであるはずのアカリさんまで稽古に参加している。サムソンさんに剣の型を見てもらい、不足している筋肉を確認しては筋トレに励む二人。仕上げにはボディービルのポージングの流れを組んでいる。 「アカリさん、そこ、肩の捻りが甘いですな」 サムソンさんがアカリさんの肩を掴んでサポートする。


(サムソンさん! 男女でそんなに密着するなんて、いやらしいです! いけません!) ……といっても、普通の人が見れば全く卑猥ではない、ただの熱血指導なのだが。私のこの手の知識は、残念ながら5歳児レベルで止まっているのだ。


一方、プレストンさんは「治療者用のベッドは寝心地がいい」と言って、テントの中で優雅に昼寝を決め込んでいた。


◇ 治療作戦の段取り

やがて、近衛騎士団のトロア司令率いる一小隊30名が、2名の患者を連れて到着した。初日ということもあり、ジェーコフ司令とオリヴィエ近衛騎士団長も視察に訪れている。


全員がテント内に集まり、最終的な段取りが確認された。


【治療および防衛プロトコル】

治療フェーズ


患者はテント内待機。オークリンによる治療魔法の発動。


容態確認後、速やかに移動準備。


避難・防御フェーズ


テントを即座に撤去。全員、防御結界内へ収容。


ノヴァの結界: 患者、護衛小隊、トロア司令、オークリン、サムソンを保護。


プレストンの結界: ジェーコフ司令、サンドラ副官、オリヴィエ団長、シナノ副官、アカリを保護。


掃討フェーズ


全員の点呼確認後、魔力に引き寄せられた魔物をプレストンが極大魔法で一掃する。


◇ 奇跡の治療:ガンダーラ初仕事

今回の治療対象者は、元近衛騎士団のメンバー2名。


患者A: 重病により体力が衰え、余命1ヶ月。視力を失い、自力歩行も困難な状態。


患者B: 戦闘中に両腕を肘から先で失い、顔面にも凄惨な傷を負っている。


病と怪我、それぞれ絶望的な状況にある二人だ。 いよいよ、治療院「ガンダーラ」の初仕事が始まる。サムソンさんが、景気よく開始のサイレンを鳴らした。


「我が主神サドミスト! 不摂生や油断は一瞬の過ち。あなたへの忠誠を一時見失った者たちも、今はこうして深く改心しております。なにとぞ、ただ一度の慈悲をお与えください! 『ヒール(極大癒癒)』!」


柔らかく、それでいて圧倒的な密度の光が砂漠の遥か彼方まで広がっていく。 すると、二人の血色がみるみるうちに良くなっていった。失われていた瞳に光が戻り、欠損していた両腕が魔力によって再構築されていく。見事なまでの復元だ。……というか、毛根まで活性化して髪の毛までフサフサになっている。


光を浴びたトロア司令や小隊のメンバーも、「行軍の疲れが吹き飛んだ」とスッキリした表情を浮かべていた。


砂漠の強烈な日差しの中、ジェーコフ司令はその成果を満足げに見届けていた。 (オークリンの魔法は、相変わらず心地いいねぇ……。ビールの酵母まで元気になって、最高の出来になりそうだ) 彼は自分のビール樽に冷却魔法をかけながら、のちに続く「爆裂魔法の嵐」が終わるのを、静かに、そして楽しみに待っていた。

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