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極大魔法しか使えない残念な冒険者  作者: 白山月


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教皇死亡の取り調べ2(改正)

◇ 精神魔法使用同意書

サドミスト教国では、国民同士で精神魔法を使用することは厳格に禁止されている。 「サムソンの『魅了』がどんなものか、一度確認しておいた方が良さそうだな。シナノ、精神魔法の使用同意書を作成してくれ」


ジェーコフ司令の指示を受け、シナノ副官が手早く詠唱を始めた。 「我が主神サドミスト。精神魔法の影響がのちに禍根を残さぬよう、公的な記録を刻みたまえ――『パーパス・コンセント(使用同意記録)』!」


光り輝く魔力の羊皮紙が空中に浮かび上がる。


【精神魔法使用同意書】


術者: サムソン(ロイヤルヴァルト所属)


被術者: アカリ(ロイヤルヴァルト副官)


魔法名: 魅了チャーム


監視者: オリヴィエ(近衛騎士団長)


承認者: ジェーコフ司令、オリヴィエ団長(クラス2名)


全員が魔力を乗せて署名し、様式が完成した。 オリヴィエは懐から奇妙な魔道具を取り出し、テーブルの中央に置いた。


「アカリ、この魔道具を使えば、サムソンが見せている幻覚がこのテーブル上に投影される。もし危なくなったら私が即座にサムソンを斬るから、安心してくれ」 「……どちらもうちの大切な隊員なんだから、穏便に頼むよ」 ジェーコフが小声で呟くが、当のアカリは(司令、今すぐ中止にしてほしいんですが……)と引きつった笑顔で固まっている。


◇ 阿鼻叫喚のマッスル・プロジェクション

「オークリン、今からアカリに魅了をかける。お前には見えないはずだが、念のためテーブルは見ずに窓の外を向いていろ。……始めろ、サムソン」


「我が主神サドミスト! あなたより賜りしこの筋肉、この魅力、そして我が歓喜を、目の前の者に分け与えたまえ――『魅了チャーム』!」


サムソンの咆哮とともに、アカリの意識へ魔法が流入する。同時に、魔道具によってテーブルの上に「魅了のイメージ」が映し出された。


「……っ!? なんだこれは!」


そこには、**ブーメランパンツ一丁の「サムソンに似た男たち」**が、部屋を埋め尽くさんばかりの密度で蠢き、筋肉踊りを披露する地獄絵図が映し出されていた。男たちはサムソンの号令に合わせ、一糸乱れぬ動きでポージングを決めていく。


(……こんなもので魅了される奴がこの世にいるのか? 嫌がらせの間違いだろう) オリヴィエが呆れ果てていた、その時。背後から悲痛な叫びが上がった。


「いやぁぁぁぁ! やめて! こっちに来ないで! もう嫌ーーーーっ!!」


窓の外を見ていたはずのオークリンが、最大級の拒否反応を示してのけぞった。 「オークリン! 何か見えるのか!?」 「裸の、変態が……部屋中に溢れかえって……ヌルヌルしていて気持ち悪い! 助けて……誰か助けて……!」


類まれな認識能力が仇となり、彼女には魔道具を通さずとも「中身」が丸見えだったのだ。 「サムソン、中止だ! やめろ!!」


◇ 浄化と、予想外の結末

サムソンが魔法を解くと、オークリンはその場に崩れ落ち、咽び泣いた。 サンドラ副官がすかさず駆け寄り、彼女を抱きかかえる。


「大丈夫? オークリン。嫌なもの見ちゃったねぇ。はい、お目々にお薬差し進ぜましょうね」 じょーー……じょーー……。(大量の目薬) 「お口もゆすぎましょうか。ガラガラしてー」 ガラガラガラ……ぺっ! 「仕上げに浄化魔法もかけますからね。サドミスト様、云々……」


サンドラの献身的な(というよりは洗車のような)洗浄作業を受け、オークリンは涙を拭いてサムアップした。 (優しいふりしてサンドラさん、手際が凄すぎる……)


一方、アカリのもとへはサムソンが歩み寄っていた。 「アカリさん、大丈夫ですか? なんだかお顔が赤いですよ」


「……だ、大丈夫です。サムソンさん」


「「「……さん!!?」」」


アカリの口から出た、まさかの敬称。 あの筋肉地獄を見せられて、本当に魅了されてしまったというのか。


「サムソンさん……次は、サイド・チェストを見せていただけますか……?」 頬を染めて俯くアカリ。


室内が、かつてないほどの動揺に包まれた。

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