私の魔法
オリビエ近衛騎士団長が言うには、王都北部の学校の建物が崩落して、聖職者や多くの人が巻き込まれる事故が起きたらしい。
私と副官のサムソンさんはお城を出ると馬車に乗せられ、現場に向かった。
オリビエ騎士団長は、隊員たちにテキパキと指示をだしている。
・王都にいる治癒魔術師を現場に集めろ
・事故の原因、状況がわかる者を呼んでおけ
・王都北部城壁外にいる人達を全て、城壁内に避難させろ。
・避難完了したら、北の城壁を閉じて封鎖しろ。
・騎士団に依頼して北の城壁外の魔物の討伐をしろ。
・サムソン、こちらの準備ができるまで魔法の発動は待ってくれ。
あれ?私、事故現場に向かってるのでは?
程なく、現場に到着した。
学校の行動らしき建物が崩壊して、多くのけが人が運び出されている。
流血しているもの、意識を失っているもの、手足を失っているものひどい状況だ。
崩壊現場から学校の教師らしき人物が連れられてくる。
「オークリン様、私、北部魔導学校の教師を務めている、ザラ ザイチンガーと申します。産まれは王都南部のザイチンガー家に・・・」
「今は、事故の原因と状況を教えて下さい。」
副官のサムソンさんが遮って修正してくれた。
「はっ!わたくしとしたことが!!!今日は入学式で、今年から初めて、学級担当を持つことになった私は、抜けるような青空のもと、不安と期待入り混じった気持ちで、出勤いたしました。いや、その前に家を出る時に姿見に写ったコサージュが、青より、情熱を示す赤のほうが」
「いえ、そのあと、事件の部分からお願いします。」
サムソンさんナイス!
私一人だったら、今の離し30分くらい聞かされていたかも。
「わたくしとしたことが!王都内では東西南北各エリアで微妙に文化がちがいます。
入学式が今まで交流のなかった子供たちが一同に解することになるんです。
毎年、大小の争いが発生するのは珍しくないことです。」
まだ遠いなぁ〜
でも、ザラ先生は続けた。
「今年も今日も、他愛もない言い争いが発生ていました。
それは、地区ごとに目玉焼きに何をかけて食べるかという議論でした。」
「ちょっと、待って、なんで目玉焼きでこんな大事故がおきるの?」
「質問は、話が長くなります。自重ください」
またもやサムソンさん、ナイス!
西地区では目玉焼きに塩コショウをかける。
一方 東地区ではウスターソースをかける。
その程度の言い争いはよくあるのです、むしろお約束というレベルです。
今回は食べるもので魔法の出力が変わるという言い争いに発展し、
西地区のように 塩コショウで食べていたら、力が出 ないと言い出す 輩が現れたのです。
東地区の生徒が、醤油で魔法陣を書いて、魔法を発動させると、西地区の生徒が対抗して、塩で魔法陣を書いてしまって、発動させてしまった次第です。」
塩で魔法陣を書くなんて。。。。そりゃ危ないでしょ。
「だいたいの事はわかりました。魔法の詠唱できそうです。」
突然サムソンが私の手を引いて、馬車の上に登った。
「こちらの現場全体が見渡せる場で、詠唱お願いしますが、合図があるまで少しお待ち下さい。」
サムソンがオリビエ近衛騎士団長を見ている。
近衛騎士団の伝令が駆け寄り、何か報告している。
すると、オリビエが、剣を抜きこちらに合図した。
それを確認したサムソンが、魔法の発動を指示してくれた。
「我が主神、サドミスト。目玉焼きの調味ごときで、魔法を濫用し、周囲の安全確認もできぬ、バカが人の形になったような者の愚行でありますが、巻き込まれた多くのあなたの子供達を救うために癒やしを与え給え!ヒール!」
詠唱ではヒールと言っているが、半径数キロにわたって、治癒魔法が発動している。
しかも、信じられないほど強力な治癒だ。
周囲の輝きが増していき、怪我をしている人たちがみるみる回復していく。
手足の欠損も回復していく。
詠唱はヒールだが、発動しているのは究極の治癒魔法だ。
あっという間に、現場の人たちは完全に回復した。
怪我をしていない人も元気いっぱいになってる。
近衛騎士団は慌ただしく何処かに出かけていってしまったし、通常の騎士団も、お城から慌ただしく出動していっている。
でも、私達は、夕方まで部屋の掃除をして、家に帰った。
今日、何か起きているのかな?
今の私には何も知ることができない。