サキュバス(改正)
私たちが扉を解呪・開錠し、中へ踏み込む。 その奥の椅子には、妖艶な姿をした**「女性体の悪魔」**が腰掛けていた。
私たちが突入した瞬間、彼女は「眠りの魔法」を発動させた。同行していた近衛騎士たちは瞬く間に眠りに落ち、強制的に夢を見せられている。 (……こいつ、サキュバスだ!) それも、寝ている人の夢にこっそり忍び込むような下級ではなく、自ら積極的に人を眠らせ、力ずくで精神を支配しようとする高位個体。レベルが違う。
サキュバスは忌々しそうに私たちを睨みつけた。 「お前ら……あの時の女神讃神事で、淫夢を見せられなかった4人のうちの2人か。あの近衛騎士団長とその副官はやばかった。何か仕掛けようものなら位置を特定されるし、団長に至っては『殺気を見せただけでこちらが消される』ような化け物だった……。だが、お前ら2人ならなんとでもなる!」
サキュバスが椅子から立ち上がり、叫んだ。 「まずはお前だ! そのおっさん、気持ち悪いんだよ!」
サムソンさんの表情が険しくなる。眉間に深いシワを寄せ、彼は静かに口を開いた。 「……おっさん、とは吾輩のことか? 17歳に向かっておっさんとは、見る目がない奴だ」
「17歳!!?」 どう見ても働き盛りの年齢なのに……。私はあまりの衝撃に膝が抜けそうになった。 サキュバスもうろたえている。するとサムソンさんは、ガハハと大笑いした。 「すまんすまん! ちょっと鯖を読みすぎたな。本当は27歳だ!」
(27歳!? それでも充分驚きなんですけど……。お父さんくらいの年齢かと思ってたわ)
サキュバスが悔しそうに地団駄を踏む。 「人間のくせに悪魔を担ぐなんて、最低な奴! お前は淫らな夢を見せようとすると、いつも筋肉の夢に書き換えてしまう。夢の中で筋トレしたりポージングしたり……。強靭な精神力ではなく、その『変態的な趣味』で淫夢を防ぐような奴は初めてだよ! だが、私の魔法を打ち破ったことだけは褒めてやる。死ね!」
強烈な氷の礫が飛んできたが、サムソンさんは盾で難なくいなした。
「次はそっちのガキだ!」 「ガキってなによ! 鯖を読んでも二十歳よ、ハタチ!」 「うるさい! 年齢なんてどうでもいい! お前に淫夢を見せるために過去の**『男性経験』**を探ったら、なんで5歳くらいの子供とおててを繋いでる記憶しか出てこないんだよ! 普通、成長すれば恋愛の一つくらいあるだろう!? どんな暮らしをしたらそんなガキンチョのまま育つんだ!」
がーーーん……。私って異常なの? 「二十歳は嘘よ……本当はもうすぐ誕生日で15歳。でも、私、魔法の天才だったから飛び級でどんどん進級して、周りの同級生はみんなお兄さんやお姉さんだったの! 特に先輩たちは、男子が私に悪いことを教えたりいじめてきたりしないように守ってくれたし、私はクラスのみんなの妹みたいに育ってきたのよ! みんな親切で優しかったんだから! 文句ある!?」
サキュバスは毒気を抜かれたようにうろたえた。 「そんな特殊な環境で……。同年代の友達と引き離されて10年以上もそんな暮らしをしてきたなんて……不憫すぎる……」
サキュバスは憐れみの目を向けたが、すぐに表情を豹変させた。 「……いや、関係ない。見た目27歳と15歳のくせに、異性との交流が5歳児レベルだろうがなんだろうが、私と教皇が繋がっていることを知られた以上、生かしてはおけない」
「アタシが、お前ら二人をぶっ殺してやる!」




