潜入中央教会(改正)
◇ 現実逃避と鉛の心
最近、マグロの水揚げが増えているのか……。 いやいや、現実逃避をしてはいけない。
晴れ渡った空、爽やかに吹き抜ける風。 それとは裏腹に、私の心は鉛のように重い。今日はついに、中央教会潜入作戦の決行日なのだ。
【作戦内容】
国王の参拝に合わせ、近衛騎士団が中央教会へ向かう。私とサムソンさんは近衛騎士団に変装して同行する。
神託祭の最中、ロイヤルヴァルトが「極大魔法とクリスタルソードに関する緊急報告がある」と称して教会に押し入る。
現場が混乱している隙に、赤い線が見える私が案内役となり、サムソンさんや隠密担当の騎士たちと共に地下へ潜入・調査を行う。
……本当に大丈夫かな? ロイヤルヴァルトが騒いだくらいで、地下への警備が薄くなるなんて本当にあるの? 失敗して神官である私が教皇様に睨まれたら、一体どうなってしまうんだろう。今は不安しかない。
◇ バレバレの変装
そうこうしているうちに、国王を乗せた馬車が中央教会に到着した。 大勢の近衛騎士団が脇を固め、オリヴィエ団長は王様と同じ馬車に同乗している。馬車が教会の玄関についたので、私たちは通路の両脇に整列し、人の壁となった。
馬車の扉が開き、国王が出てくる。続いてオリヴィエ団長。 すると、突然国王がこちらへ歩み寄ってきて、私の前で立ち止まった。そしてオリヴィエさんに向かって声をかけた。
「……オリヴィエ。どうして儂のヴァルト(オークリン)が、近衛騎士団の格好をしているのだ?」 「陛下。本人は完璧に変装しているつもりですので、気づかないふりでお願いします」 「おー、そうかそうか。サプライズがあるのだな。がんばれよ!」
国王はそう言い残して、楽しげに笑いながら出迎えの教皇様の方へ歩いていった。 (……陛下に一瞬でバレてるじゃない!)
◇ 赤い線の先へ
教皇様と王様が教会内に入っていく。 教皇様の背中からは、あの**「赤い線」**がはっきりと伸びているのが確認できた。私には見えるが、周りの騎士や教会関係者には一切見えていないようだ。やはり、私が道案内をするしかない。
赤い線が繋がっている方向へ進むと、二人の衛兵が守る扉があった。 事前の調査によれば、あの扉の奥に地下へ通じる階段があるはずだ。扉の中に入りさえすれば人目も避けられる。あとはジェーコフ司令たちが、警備に隙を作ってくれれば突入できるのだが……。
◇ 衝突するロイヤルヴァルト
その時、猛烈な勢いで、といより乱暴な運転でロイヤルヴァルトの馬車が乗り込んできた。 玄関前に横付けされると、礼装に身を包んだメンバーたちが降りてくる。先頭はジェーコフ司令。続いてサンドラ副官、プレストン先輩、アカリ副官、そして長い包みを抱えたノヴァさんだ。
教会から慌てて老齢の神官が飛び出してきて、怒鳴り散らした。 「何事ですか、貴公ら! 控えなさい!」 「我ら国王直轄、ロイヤルヴァルト! 国王陛下に緊急の奏上があり参上した。お通し願おう!」 ジェーコフ司令が毅然と答える。
「これから神託祭が執り行われるところです。伝言なら賜りますので、用件をここで話し、速やかにお引き取りなさい!」 「国家最高機密である『極大魔法』に関する報告だ。陛下に直接お伝えせねばならぬこと、どくのだ!」
神官は怒りで顔を真っ赤に染めた。 「極大魔法などという、忌まわしく不要なもののために陛下の時間を割くわけにはいかん! そもそもここは、ロイヤルヴァルトのような汚らわしい輩が足を踏み入れてよい場所ではない。失せなさい!」
(あらら、すごい迫力で怒られちゃった……) これでは地下に潜入するどころか、正面突破も難しそうだ。 どうしよう、作戦が詰んでしまう……!




