表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ピッツァ戦記〜魔王も並ぶ伝説の窯〜  作者: たむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

96/106

第96話『緋砂の祭壇』

闇守を倒したレンたちは、迷宮の最奥・第三層へと進む。

そこには、この地に眠る“証”と、最後の試練が待ち構えていた。

 石階段を下りるにつれ、空気はさらに冷たく、そして重くなった。

 壁の赤土は徐々に黒ずみ、やがて滑らかな石に変わる。

 降り切った先――そこは広大な円形の空間だった。


 中央には、赤砂を敷き詰めた祭壇。

 四方を囲む巨大な石柱には、古代の文字と獣の彫刻が刻まれている。

 天井の裂け目から一筋の光が差し込み、祭壇をまっすぐ照らしていた。


「……ここが、緋砂の祭壇」

 ザハルが低く呟く。

 レンは足を踏み出すが、不意に背筋を冷たいものが走った。

 砂が――脈打っている。


 次の瞬間、祭壇の中央から、真紅の光を帯びた砂嵐が巻き起こった。

 それは渦を巻きながら天井近くまで伸び、やがて人の形を象る。

 砂でできた巨人だ。目は燃えるような赤。


「来訪者よ、我が証を求めるか」

 巨人の声は、地鳴りのように広間を震わせた。

 リリィが息を飲む。

「しゃ……しゃべった……」


「その代償は――命。

 生きて試練を超えた者にのみ、証を授けよう」


 そう言うと、巨人は腕を振り下ろす。

 床の砂が波のようにうねり、刃のような砂柱がレンたちへ迫った。


 ガルドが斧で砂柱を叩き割り、ヴァレッタが身を翻して回避する。

 ザハルは短剣で巨人の足を斬りつけるが、砂が弾けるだけで手応えはない。

「くそっ、どうやって倒す!?」

 レンが叫ぶ。


「砂の核を砕け! 胸の奥に光が見える!」

 ザハルが指差す先――巨人の胸の奥で、小さな赤い光が脈動している。


「よし……やるしかないな!」

 レンは肩に背負った窯を外し、炎を最大出力にする。

 炎が砂を焼き固め、巨人の動きが一瞬止まった。

 その隙にヴァレッタが跳び上がり、剣を突き立てる。


 しかし巨人は咆哮を上げ、振り払おうとする。

 リリィが素早く布袋を取り出し、香草を窯の炎に投げ込んだ。

 香りの煙が砂を重くし、動きをさらに鈍らせる。


「今だ、レン!」

 ヴァレッタの声に応え、レンは灼熱の鉄板を核めがけて叩きつけた。

 ジュッという音とともに、赤い光が砕け散る。

 巨人は一声、地を揺るがす唸りを上げ――

 砂となって崩れ落ちた。


 静寂。

 祭壇の中央に、拳ほどの大きさの赤い宝珠が残されていた。

 ザハルが慎重に拾い上げ、レンへと差し出す。

「……これが“証”だ。お前のものだ」


 レンは深く息をつき、その宝珠を握り締めた。

 この瞬間、迷宮の試練は終わったのだ。

緋砂の祭壇での戦いを制し、“証”を手に入れたレンたち。

だが、この宝珠が呼び寄せる運命は、まだ誰も知らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ