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異世界ピッツァ戦記〜魔王も並ぶ伝説の窯〜  作者: たむ


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85/109

第85話『交易都市ベレンティア』

霧の島を後にした黒牙号は、大陸の玄関口と呼ばれる巨大港町ベレンティアへ向かう。

そこは商人、冒険者、貴族が入り交じる交易の中心――。

 数日間の穏やかな航海を経て、水平線に巨大な影が見え始めた。

 近づくにつれ、それが高くそびえる城壁と無数の帆船であることが分かる。

 その規模は、レンの想像をはるかに超えていた。


「うわぁ……あれ全部、港に並んでる船?」

 リリィが目を丸くする。

「ああ。ベレンティアは東西南北の海路が集まる中心地だ」

 ヴァレッタが淡々と答えるが、その瞳には微かな高揚があった。


 黒牙号は港へと滑り込み、無数の声と香りと色彩に包まれた。

 市場のざわめき、波止場の怒鳴り声、焼き魚や香辛料の匂い。

 リリィはすでに目を輝かせて走り出しそうだ。


「レン、早く降りよう!」

「いや、まずは許可をもらわないと……」

 しかし言い終える前に、リリィは階段を駆け下りていた。

「おい!」


 港役所で入港手続きを済ませたレンが市場に向かうと、

 広場の真ん中でリリィが異国風の楽団と一緒に踊っていた。

 その周りには観客が集まり、笑顔で拍手を送っている。


「お前はほんと……」

 ガルドが呆れたように笑う。

「でも、こういうのが客寄せになるのかもな」


 昼過ぎ、レンたちは広場の一角を借り、

 石窯を組み立てて「星の麦ピザ」の試験販売を始めた。

 香りが漂い始めると、通りすがりの人々が足を止め、

 珍しい黄金色の生地に興味津々で覗き込む。


「お兄さん、それ何て料理?」

「ピザ。大陸のあちこちで人気が出てる新しい食べ物だ」


 一枚、また一枚と焼き上げるごとに列は伸びていった。

 港の労働者、旅の商人、豪華な衣装の貴婦人までが並び、

 気がつけば広場はピザの香りで満たされていた。


「……やばい。粉がもう半分しかない」

 リリィが焦った声を上げる。

 その時、背後から落ち着いた女性の声が響いた。


「その粉……もしや、星の麦ではありませんか?」


 振り向くと、青いローブをまとった女性が立っていた。

 腰には銀の装飾が施された短剣、胸元には古代文字が刻まれたペンダント。

 彼女は静かにレンを見つめ、微笑んだ。


「あなたに……依頼があります」

交易都市ベレンティアでの販売は大成功。

しかし、星の麦を知る謎の女性の登場が、新たな物語を呼び込む。

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