第8話『遺跡の奥、石のレシピ帳と燃える鍋』
青い門の奥に広がるのは、忘れられた古代の厨房!?
不思議な料理道具と、石に刻まれたレシピ。
レンのピザ魂が、今、かつてない謎に挑む――!
「うわ、なんか……ここ、すっごいピザ屋っぽい……!」
青い門を抜けた先に広がっていたのは、まるで石造りの“厨房”だった。
広い空間の中央には巨大な円形の竈があり、その周囲にテーブル、調味料を模した彫刻、壁には古代文字がぎっしりと刻まれている。
「ここ、なんなんだろう……厨房の神殿?」
「遺跡っていうより、めちゃくちゃ本格的なキッチンだね……なにこれ好き……!」
レンの目はすでにキラキラしていた。
――ピザ好きには、夢のような空間。
「火口がいくつもあるし、この形、何かを煮るための設備かな」
リリィは中央の鍋のような石造りの窯に触れる。
その瞬間、竈がひとりでにボウッと赤く光り、炎が灯った。
「ええっ!? 触っただけで点火!? 魔法仕込みの厨房!?」
「ま、魔法アイテムとかじゃなくて、これ、ちゃんと管理されてる? 現役!?」
遺跡のはずなのに、埃ひとつない。竈は完璧に機能し、道具も整っている。
まるで、誰かがずっと――ここで料理していたかのように。
「見て、レン! これ……壁の文字!」
リリィが指差した壁には、石板にびっしりと古代文字が刻まれていた。
その多くは、どうやらレシピらしい。
「“紅き玉果と白き塩を混ぜて、煮詰め、黄金の生地に広げるべし”……って、これ……」
「……トマトソースじゃん!」
「うわ、ほんとだ……てことはこの“黄金の生地”は――」
「ピザ生地だ!」
二人は思わず顔を見合わせた。
この遺跡は、単なる遺跡ではなかった。古代のピザ職人の聖地かもしれない。
「ちょっと……レシピ通りに作ってみようか」
レンは持っていた食材を使って、書かれていた通りに調理を始めた。
トマトと塩を煮詰めると、鍋が赤く光り出す。
生地を敷いた石板にソースを広げ、チーズ代わりに“白光茸”というこの世界の乳白色キノコを散らす。
そして、遺跡中央の窯に投入。
「焼きあがるの、はやっ!? もういい匂いしてる!」
取り出すと、そこには――黄金色に輝く、完璧なマルゲリータピザがあった。
「これ……うまっ!! いや、なんだこれ、やば……!!」
「古代文明、ガチでピザ極めてた説」
リリィも感動しながらピザにかぶりつく。
その味は、どこか懐かしく、でもこの世界でしか出せない――不思議な“食の記憶”を呼び覚ます味だった。
アッシュも驚いた顔でそれを見ていた。
「こんなピザ、見たことないよ……まるで、魔法みたい……」
「いや、ピザは魔法だよ(ドヤ顔)」
「出たよ……レンくんのピザ信仰……」
レシピの最後の一文に、レンは目を止めた。
“創造の火を継ぐ者よ、新たな味を刻みし時、扉は再び開かれん”
「“新たな味”……ってことは、このピザをベースに、もっと発展させろってこと?」
「試されてるんだ、ピザ職人として!」
「誰に!? 古代の誰か!?!?」
でも――レンは嬉しそうに笑った。
「面白くなってきたじゃん。この遺跡、全部レシピ帳かもしれない。つまり……」
「“古代レシピで世界一のピザを作る”っていう、壮大なスローライフ冒険の始まりってことね」
「そういうこと!」
今回の遺跡、ただの石の神殿ではなく、まさかの“ピザレシピ聖地”でした
古代の味と、現代の感性が交わるとき、新たなピザが生まれる――!
そんな予感に胸を躍らせながら、レンたちは次の味を探しに旅立ちます。