第57話『漁に出て、海の恵みを掴め!』
港町フェルナンドの漁師娘ミーナの誘いで、
レンたちは漁船に乗り込み、海へと漕ぎ出した。
目指すは、港から少し離れた“銀鱗の群れ”が集まる漁場。
だが、そこには海の男たちしか知らない試練が待っていた――。
早朝、港はまだ薄暗い。
それでも、漁師たちは手際よく網を積み、縄を結び、船の準備を進めている。
レンたちも、ミーナに連れられて漁船に乗り込んだ。
「今日はいい日だよ、風も潮も漁向きだ」
ミーナは操舵輪を握りながら笑う。
潮の香りと冷たい風が頬を打ち、船は港を離れていった。
「海の上って……想像以上に揺れるな」
ガルドは船縁にしがみつき、顔色を青くしていた。
「大丈夫か?」と声をかけるレンに、
「……たぶん死ぬ」とガルドは弱々しい声で答える。
リリィはと言えば、潮風を浴びながら上機嫌だ。
「気持ちいいわねー! 空も海も全部青くて!」
エルマーは双眼鏡を覗きながら、静かに海面を見つめていた。
やがて、ミーナが指差す。
「あそこだよ、銀鱗マスの群れが来てる!」
海面がきらめき、小さな波紋が広がっていく。
漁師たちが一斉に網を投げ入れ、船の上は活気づいた。
「よし、あんたたちも手伝いな!」
ミーナの掛け声に、レンとリリィが網を引く。
思ったより重く、二人の足元に海水が跳ねた。
引き上げられた網には、銀色の魚がびっしりと跳ね回っている。
「すごい……これ全部今日の獲れたてか」
「この新鮮さ、港町でしか味わえないよ」
しかし、その時――船が急に傾いだ。
「おっと、こいつは厄介だ!」
船員の一人が叫ぶ。
網の中に、予想外の巨大なタコが絡みついていた。
吸盤で網をがっちり掴み、船上に引き上げさせまいと暴れている。
「レン! 足元に来てる!」
ミーナの声に、レンは思わず足を引っ込める。
その瞬間、巨大な触腕が甲板を叩き、海水が派手に跳ね上がった。
「こいつ……ピザの具材にはちょっとデカすぎるな!」
レンが冗談を言いながらも、ガルドと一緒に網を押さえる。
最後は漁師たち総出で引きずり上げ、なんとかタコを甲板に転がした。
漁は無事終了し、港への帰路につく船上では、
新鮮な銀鱗マスと巨大タコが樽に収められていた。
「今日は大漁だ。きっと美味しいピザが作れる」
レンは潮風の中、そう呟いた。
港町の海で手に入れた、新鮮な魚と巨大なタコ。
次回はいよいよ、これらを使った港町ならではの魚介ピザ作り。




