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異世界ピッツァ戦記〜魔王も並ぶ伝説の窯〜  作者: たむ


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52/107

第52話『魔王城の門前にて』

長い旅路を経て、ついに魔王領の境界へ辿り着いたレンたち。

重苦しい空気と不気味な静けさの中、城門の前に立ちはだかったのは――

まさかの“ピザ好き”だった。

 深い森を抜けた瞬間、空の色が変わった。

 夕暮れではない。

 魔王領特有の、紫がかった不穏な空。

 遠くに見える魔王城は、黒い鋼鉄のようにそびえ立ち、

 その周囲を雷光が覆っている。


 街道の先に、巨大な黒い門が現れた。

 門の前には鎧を纏った魔族の兵士たちが並び、

 その中央に、一際目立つ人物が立っていた。


 赤毛をポニーテールにまとめ、鋭い目つきの魔族の女性。

 腰には二本の短剣。背中には――なぜか大きな木製のピザ皿。


「お前たちが……異世界のピザ職人か」

「そうだけど……その背中のは?」

 レンが指さすと、彼女はにやりと笑った。


「これは我が家の宝だ。かつて人間界で食べたピザが忘れられなくてな……

 まさか魔王陛下が貴様を呼び寄せるとは。運命を感じるぞ」

 そう言って彼女は自己紹介をした。

「私はセラフィナ。魔王直属近衛隊長にして――自称ピザ愛好家だ」


 ガルドが半眼になる。

「なんだその肩書き……」

「本気だぞ。私は何よりもピザを愛する」

 セラフィナは真剣そのものの目をしていた。


「だが、魔王城に入る前にひとつだけ試させてもらう」

「試す?」

「そうだ。陛下に会う者は、必ず“味の門”を通らねばならん。

 ここで私を唸らせるピザを焼け。さもなくば、城門は開かない」


 レンは一瞬考え、旅の途中で手に入れた食材を思い出した。

 魔王領の森で摘んだ香草、村で買った燻製肉、そして持参したモッツァレラ。


「よし……行くか」

 携帯石窯をセットし、生地を広げる。

 香草を刻みオリーブオイルと混ぜてソースにし、燻製肉を薄く乗せる。

 焼き上がる頃には、門前に芳しい香りが広がっていた。


「……食わせろ」

 セラフィナは迷わずかぶりつく。

 一口、二口……そして目を見開いた。

「……悪くない。いや、非常に良い!」

 その声に門番たちもざわめく。


「貴様、魔王陛下を唸らせられるかもしれん……通れ」

 重厚な城門が、ゆっくりと開いた。

 その先に広がるのは、暗黒の回廊と、遠くに輝く玉座の影だった――。

こうしてレンたちは魔王城の中へ足を踏み入れた。

次回、ついに魔王との対面。そして、最後のピザ対決が始まる。

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