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第5話『村にピザ屋ができた日――集まれ、お腹と笑顔!』

試作を重ねてついに完成した、異世界ピザ第1号。レンとリリィの努力は着実に実を結びつつある。

そしてついに、あの瞬間がやってくる――そう、“開店”のときが!

果たして、村の人々の反応は? 想定外のトラブルも待っている!?

「ふー……なんとか形になったな」


 レンは釜の前で腰を伸ばした。朝早くからピザ生地をこね、火を入れ、ソースを煮て、チーズを切り分けて――まるでバイト時代の土日営業みたいだ。


「看板、立てたぞーっ!」


 リリィが嬉しそうに掲げた木板には、雑な字でこう書かれていた。


【ピザ屋 レン】

あつあつ焼きたて、おひとつどうぞ!


「……シンプルだな」


「わかりやすいだろ?」


「まあ、間違いなく伝わるな」


 二人は顔を見合わせて笑った。

 今日は“開店日”。この森の外れにある空き小屋を改装して、ようやく人を迎え入れる準備が整った。


「村にチラシ配ったけど……来るかな」


「来るよ! 昨日あれだけ“ピザは神の食べ物”とか言いふらしてきたし!」


「それ、逆効果なんじゃ……」


 そんな会話をしていると、遠くから人の気配がした。


「……お、来たか?」


「おう、少年。今日開いてるって聞いたが」


「おじさん、ありがとう! 焼きたて用意してる!」


「うちの子も連れてきてな、昨日の試食が忘れられないらしくてな……」


「ママ、ピザたべたーい!」


 親子連れ、老人、若者たち――次々と村人が訪れ、あっという間に小さな店は人でいっぱいになった。


「リリィ、注文表渡してくれ!」


「ほいきた! 第一号、焼きまーす!!」


 レンは釜に火を入れ、次々とピザを焼いていく。

 トマトソースの香り、チーズの焦げる音、香草の立ち昇る匂い――すべてが魔法のように空気を染める。


「できたてですよー!」


「おおっ、これが噂の……!」


「うんめぇぇぇぇ!!」


「これは、パンでもパイでもない……なんだ、これは……!? ピザ!? ピッツァ!? どっちだ!?」


「どっちでもいいよ! うまけりゃそれで!」


 村人たちは手づかみでピザを頬張り、笑い声が絶えなかった。

 気がつけば、子どもたちが店の前で踊っている。


「うちの子、踊りながら“ピザまんせー!”って叫んでるんだけど」


「いいじゃん、未来の信者だよ!」


 ……だが、事態はそれだけでは終わらなかった。


「おい、薪が足りねぇ!」


「うおっ!? そっちの生地、発酵しすぎて膨らみすぎてる!!」


「チーズが足りねええええええ!!」


 次々と押し寄せる客、足りなくなる材料、暴走するリリィ。


「店長! このままじゃ戦力が足りません!」


「バイトじゃねぇし!」


 レンは汗をぬぐいながら、久々の“修羅場”を味わっていた。


 ……でも、なぜだろう。


 大変なのに、楽しい。


 異世界の見知らぬ人たちが、自分のピザを食べて笑っている。

 その光景が、たまらなく嬉しい。


「なあ、レン。これって、もう店になってるよな?」


「そうだな。……立派な、ピザ屋だよ」


 二人は釜の前で、背中合わせに立った。

第5話、いかがでしたか? ついに「ピザ屋レン」、本格オープン! 村人たちの素朴な反応と、レンとリリィの奮闘ぶりが描かれました。

開店初日の大混乱も、どこか懐かしくてあたたかい――これぞスローライフ異世界グルメ。

次回は、ちょっと変わったお客さんが登場するかも……?

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