第47話『旅芸人とサーカスピザ』
大雪の後の静かな日々を破るように、街に旅芸人の一座がやってきた。
彼らのために、レンは「食べるだけで楽しい」一枚を考案する。
それは、サーカスのように驚きと笑顔を運ぶピザだった――。
昼下がりの商店街を歩いていると、
突如、ラッパの音と太鼓のリズムが鳴り響いた。
色とりどりの旗を掲げた馬車がゆっくり進み、
道化師、曲芸師、ジャグラーたちが楽しげに手を振る。
「おお、サーカスだ!」
子供たちが歓声を上げ、後をついていく。
ラ・ステラの前を通りかかった道化師が、レンに声をかけた。
「おや、あなたが例のピザ職人さんかい?」
「そうだけど……」
「一座のみんなで食べられる、面白いピザをお願いできないかな」
面白いピザ――レンの頭に火花が散る。
厨房に戻ると、ガルドとリリィが興味津々で覗き込む。
「何作るんだ?」
「決まってる。見た目も味もサーカスみたいなピザだ」
まずは生地を円形ではなく、星型に成形。
色とりどりの野菜――赤パプリカ、黄色パプリカ、ブロッコリー、紫タマネギを
ピエロの衣装のようにカラフルに並べる。
チーズは溶けると模様が浮かぶよう、あえて場所ごとに種類を変えた。
さらに、中央には丸く成形したミートボールをピラミッド状に積み上げ、
上からとろけたモッツァレラをかける。
切ると、中から湯気とともに具材がこぼれ出す――まるで舞台の幕開けだ。
一座のテントでの夕食。
星型のピザが運ばれると、芸人たちは目を輝かせた。
「おおっ! 見たことない!」
「まるで花火だ!」
曲芸師がピザを回し、道化師が大げさにほおばる。
「こりゃ、明日の演目より盛り上がるぞ!」
笑いと歓声が夜まで響いた。
レンはその光景を見ながら、ピザが人を繋げる力を改めて感じていた。
サーカスピザは一座の間で話題となり、彼らは街を去る時、
「また来るときは必ず寄る!」と約束してくれた。
次回は、そんな賑やかな日々の後に訪れる静かな春の訪れ。




