表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ピッツァ戦記〜魔王も並ぶ伝説の窯〜  作者: たむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/101

第46話『雪の日のラ・ステラ』

森の魔女からの不思議な贈り物を受け取った数日後、街は珍しく大雪に見舞われた。

客足は遠のき、店は静まり返る――しかし、レンたちは諦めなかった。

雪の中でも人を呼び寄せる“温もりのピザ”を焼き上げる。

 その日、朝から雪がしんしんと降っていた。

 窓の外は白一色。通りを行く人影もまばらだ。

 ラ・ステラの薪窯も火を落としたまま、店内はひんやりしている。


「……今日は開けても意味ないかもな」

 ガルドが肩をすくめる。

「でも、こんな日にこそ食べたいピザってあるんだよ」

 レンは笑って薪をくべ始めた。


 外を歩く人々の頬は赤く、息は白く染まっている。

 レンは看板に「本日限定・雪の日のホワイトピザ」と書き出した。


 生地に塗るのはホワイトソース。

 具材にはジャガイモ、ベーコン、玉ねぎを炒めたものをたっぷり乗せ、

 仕上げに幻のモッツァレラを雪のように散らす。

 さらに上からローズマリーをひと振り――冬の香りだ。


 石窯の中でピザが焼けると、

 チーズがとろけ、ベーコンの香ばしい匂いが漂い出す。

 ドアを開けた瞬間、外の冷たい空気と温かい匂いが混ざり合った。


「……いい匂いがする!」

 通りかかった親子が足を止め、雪を払いながら入ってきた。

 それを皮切りに、ぽつぽつと客が集まり始める。


「冷えた身体が溶けていくみたいだ……」

「雪景色見ながら食べるピザって、贅沢だね」

 笑顔がテーブルに広がっていく。


 夜になる頃、雪はやんだが、店内の温かさはそのままだった。

 レンは窓際に立ち、外の雪明かりを眺めながら呟く。

「……やっぱり、ピザって人を呼ぶんだな」

 リリィがにやっと笑う。

「呼んでるのはピザじゃなくて、あんたの心意気だよ」

雪の日のピザは、街の人々に冬の思い出を刻んだ。

次回は、その余韻が冷めぬうちに訪れる不思議な旅芸人たちとの出会い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ