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異世界ピッツァ戦記〜魔王も並ぶ伝説の窯〜  作者: たむ


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43/106

第43話『チーズ祭りと謎の批評家』

山奥で手に入れた幻のモッツァレラを使った新メニューを披露する日。

街の人々が集まり、店は祭りのような賑わいを見せる。

しかし、その中に正体不明の美食批評家が紛れ込んでいた――。

 昼前から、ラ・ステラの前は行列になっていた。

 張り紙にはこうある。


「本日限定! 幻のモッツァレラを使った特製マルゲリータ」


「……予想以上に来てるな」

 レンは汗を拭きながら笑った。

「そりゃあ、山奥でしか手に入らないチーズって聞いたら、みんな気になるでしょ」

 リリィがにやりと笑う。


 開店と同時に、チーズの甘い香りが通りまで漂う。

 生地は軽く、モッツァレラは舌の上でとろけ、トマトの酸味と絶妙に絡み合う。


 その時、カウンター席に一人の男が座った。

 黒い帽子を深くかぶり、分厚い手帳を開いて何やら書き込んでいる。

 無駄のない仕草と落ち着いた視線――常連ではない。


 リリィが小声で囁く。

「ねぇレン、あれ……例の“舌の悪魔”じゃない?」

「……美食批評家のカーティス?」

「そう、その人。書かれたら一流にも地獄にも落ちるって噂」


 レンは深呼吸して、特製マルゲリータを焼き上げる。

 いつも通りの工程、いつも通りの火加減。

 派手なことはせず、素材の力と技だけで勝負する。


 カーティスは無言で一切れを口に運び、目を閉じた。

 そして、もう一切れ、さらに一切れ……

 やがて小さくため息をつき、手帳に数行書き込む。


 帰り際、彼はレンにだけ聞こえる声で言った。

「――驕らず、素材に耳を傾けている。そういう料理は、記憶に残る」

 そして、何事もなかったかのように去っていった。


 数日後、街の食通たちが愛読する雑誌に記事が載った。

 タイトルはこうだ。


「職人の誠実さが生み出す、やさしい革命の味」

ラ・ステラのピザは、食べる者を笑顔にする。

それが料理人の本懐だろう――。

批評家の評価は、店の名をさらに広めることになった。

次回は、その評判を聞きつけた旧友との再会が待っている。

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