第39話『天才発明家と機械仕掛けのピザ作り!?』
王妃様の依頼を果たしたラ・ステラに、今度は奇妙な発明家が現れる。
彼の発明品は“究極のピザを自動で作る装置”だというが……果たしてその実力やいかに?
昼の営業が一段落した頃、扉が勢いよく開いた。
ずかずかと入ってきたのは、ゴーグルを額にかけ、白衣を翻す青年。
背中には大小さまざまな歯車やパイプのついた奇妙な箱を背負っている。
「やあやあ、君がレン君か! ピザ職人の!」
「……そうだけど」
「私は天才発明家のドレクス! 世界初の“全自動ピザ製造装置”を完成させたのだ!」
リリィが怪訝そうに眉をひそめる。
「全自動……って、そんなの作ってどうすんの?」
「決まってる! 効率! スピード! そして芸術性!
この機械を使えば、君たちの店は一日千枚焼けるぞ!」
「……いや、そんなに売れないから」
レンは即答した。
しかしドレクスはお構いなしに、背負っていた箱をテーブルに置き、ガシャンガシャンと展開する。
パイプから蒸気が噴き、内部で歯車が回転し始めた。
「まずは見てくれ! ピザ生地を入れると――」
機械の口のような部分に生地を放り込むと、ギュイーンという音と共に自動で伸ばされ、
ソースがドバッ、チーズがドサッ、具材がバラバラッと投下される。
「おお、確かに早い……けど雑!」
リリィのツッコミが飛ぶ。
「仕上げはこれだ!」
ドレクスがレバーを引くと、下から炎がゴォッと吹き上がり、瞬く間にピザが焼き上がった。
ただし――片側は真っ黒、反対側は半生。
「……これ、食えるの?」
ガルドが眉をしかめる。
味見してみると、ところどころ焦げ苦く、ところどころ粉っぽい。
香りも悪くはないが、レンの手焼きとは比べ物にならなかった。
「……ドレクスさん、正直言うと、俺のやり方の方がいいと思う」
「な、なんだと!? この天才の発明を否定するというのか!」
その時、常連の子供たちが店に入ってきた。
ドレクスはふと顔をほころばせる。
「ならば、子供たちに作らせてみようじゃないか!
この機械は誰でも簡単にピザ職人になれるんだ!」
興味津々の子供たちが操作すると――
具材は盛大に床へ飛び散り、チーズは天井に貼りつき、粉が舞い上がる。
「わー!」「ぎゃはは!」
店内は一瞬で粉まみれになった。
レンは額を押さえて笑い出す。
「……まあ、これはこれで悪くないかもな。子供たちは楽しそうだし」
ドレクスもニヤリと笑う。
「だろう? これは効率のためじゃなく、“遊び心のための機械”なんだ」
結局、この発明品は「ピザ作り体験マシン」としてイベント時に活用することになった。
ドレクスは満足げに帰っていき、ラ・ステラにはまた一つ変な思い出が増えたのだった。
効率よりも、作る楽しさを残す――そんな教訓をくれた発明家との出会い。
次回は、ラ・ステラに遠方からの謎の予約客がやってくる。