第37話『王様の晩餐会!一枚のピザに込めた想い』
王宮に招かれたラ・ステラの面々。
豪華な晩餐会の場で、国王陛下のための一枚を焼き上げることに――。
緊張と期待が入り混じる中、果たしてピザは王様の心を掴めるのか?
巨大な大理石の階段を登り、金色の扉が開かれる。
そこには長く豪奢なテーブルと、煌びやかなシャンデリア、そして着飾った貴族たち。
その中央、玉座に座る人物――国王アレクシス陛下がこちらを見つめていた。
「そなたが噂の……ピザ職人か」
低く響く声に、レンは背筋を伸ばす。
「はい、陛下。レンと申します。
本日は、私の全てを込めた一枚をご用意しました」
案内役のラドミールが促し、レンたちは特設の石窯の前へ。
王宮の厨房でも窯はあるが、火加減や香りにこだわるため、自らの窯を持ち込んだのだ。
静まり返った会場で、レンは生地を広げ、ソースを塗る。
フレッシュバジルの香りが漂い、熟成チーズが生地の上に広がっていく。
ガルドが窯の温度を見守り、リリィが具材の最終チェックをする。
「……よし、入れるぞ」
レンが窯にピザを滑り込ませる。
薪の炎がパチパチと音を立て、黄金色の生地がぷくりと膨らむ。
やがて、表面がこんがりと焼け、チーズがとろける瞬間――。
「完成だ」
レンは銀の皿にピザを乗せ、王の前に恭しく差し出す。
給仕が一切れを切り分け、国王の皿に置いた。
国王はナイフとフォークで一口……。
静寂。
会場中が、その咀嚼を待って息を呑む。
やがて、陛下の口元が僅かに緩んだ。
「……これは、実に良いな」
その声に会場がざわめく。
「生地は香ばしく、柔らかい。
ソースは酸味と甘みの均衡が見事。
そして何より……温もりがある。
まるで、作った者の心が宿っておるかのようだ」
王はゆっくりと頷き、満面の笑みを浮かべた。
「レン、そなたの腕前、確かに受け取ったぞ。
この国に来てくれたことを、誇りに思う」
貴族たちも口々に称賛の声を上げる。
この日、ラ・ステラの名は王宮にも広まり、噂は瞬く間に国中へと広がった。
宴が終わり、王宮を後にするレンたち。
夜空の下、リリィが小声でつぶやいた。
「……ねぇレン。これって、もしかして店めちゃくちゃ忙しくなるやつじゃない?」
「……たぶんな」
レンは苦笑しながらも、心のどこかで少しだけ楽しみにしていた。
王様に認められたラ・ステラのピザ。
だが、その名声は思わぬ形で次の出来事を呼び込む。
次回は、**“王宮からの第二の依頼”**が届く――。




