第34話『野外マーケット大混乱!ピザ屋、流される!?』
ふもとの街で開かれる大規模な野外マーケットに出店したラ・ステラ。
しかし、突然の突風が吹き荒れ、テントや商品が空を舞う大混乱に――!?
果たしてピザ屋は無事営業できるのか。
山の村からの帰り道、ふもとの街エルモアで偶然チラシをもらった。
『月に一度の“星降る野外マーケット”開催!
生鮮から工芸品まで数百店以上が並び、音楽や大道芸もお楽しみいただけます!』
「これ出よ!」
リリィが即答する。
「うん、面白そうだな。新しい客層も掴めるかもしれない」
レンは頷き、急遽参加を決めた。
マーケット当日。
広場いっぱいに色とりどりのテントが並び、人波が絶えない。
香ばしい匂いや楽器の音が混ざり合い、空気そのものが賑やかだ。
「おーっ、今日は絶好の商売日和だ!」
ガルドも上機嫌で、肉の仕込みを始めている。
開始早々、ラ・ステラのピザは好調だった。
薪窯から焼きたての香りが漂い、列も伸びていく。
「マルゲリータひとつ!」「森の恵みピザも!」
「ありがとうございますー!」
……その時だった。
遠くで「風が強くなってきた!」という声が上がる。
次の瞬間――突風が広場を駆け抜けた。
「うわっ! テントがっ!」
隣の布製テントがバサッと舞い上がり、露店の果物が空中に踊る。
「レン! 窯が動いてる!」
リリィの叫びに振り向くと、移動式の小型窯がゴロゴロと転がり始めていた。
「おっとっとっと!」
レンとガルドが慌てて飛びつき、どうにか押さえ込む。
しかし混乱は続く。
リリィは転がる野菜を必死で拾い集め、エルザは吹き飛びそうなメニュー板を押さえつける。
大道芸人の帽子が空を舞い、風船売りの風船は一気に大空へ。
小さな子供が泣き出す声があちこちで響いた。
「……営業どころじゃないな」
「でも、このままじゃお客さんたちも困ってるよ」
レンは考え、即席で**「風よけピザシェルター」**を作ることにした。
窯と台を広場の壁際に移動し、飛んでこない位置にセッティング。
さらにピザ用の大きな天板を縦にして、風よけ壁を設置。
「さあ、避難がてら温かいピザ食べてって!」
リリィの呼びかけで、避難してきた客たちが集まってくる。
「うわ、あったかい……」「助かるー!」
冷たい風で体が冷えた人たちに、焼きたてのピザがじんわりと温もりを届ける。
やがて風は少しずつ落ち着き、夕方には再び穏やかな賑わいが戻った。
広場の人たちは、混乱の中で奮闘したラ・ステラを労いの拍手で迎える。
「お前ら、本当に助かったよ!」
隣の果物屋も感謝を述べる。
「まあ……風も悪くないね。こんな出会いもあるし」
レンは笑った。
突風に翻弄された一日だったが、ラ・ステラの評判はむしろ上がる結果に。
次回は、このマーケットで偶然知り合った放浪楽師との交流が、新たな物語を呼び込む。




