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第33話『山の村の収穫祭!ピザと踊る秋の夜』

秋の実りを祝う山の村「レーベル村」に、出張出店の依頼が舞い込んだ。

地元食材を使った限定ピザで、村人たちを喜ばせたい――。

紅葉の山と香ばしい窯の煙、そして笑い声が交差する収穫祭の夜が、始まる。

 ある日の午後、ラ・ステラに一通の手紙が届いた。

 差出人は「レーベル村の村長代理」と名乗る人物。


『毎年恒例の秋の収穫祭に、ぜひ“ピザ屋”として出張参加していただけませんか?

村の若者たちが、どうしても“あの丸くて熱い食べ物”を食べてみたいと言っておりまして――』


「丸くて熱い食べ物……たぶんピザで合ってるな」

 リリィが笑いながら手紙を読む。


 荷車に食材と移動式の小型石窯を積み、レンたちは山を目指した。

 道中は紅葉が美しく、空気はひんやりと澄んでいる。


「空気がうまい! もうこれだけでピザ作りたくなるな!」

 リリィのテンションも上がっている。


 村に到着すると、広場にはすでに露店や飾りが設営され、祭りの準備が進んでいた。


 村の長老・ブレームさんが出迎える。


「いやぁ、来てくれてありがたい! 若い者が“王都で流行りの円い料理”を食べたいと騒いでいてのぉ」


「間違いなくピザですね、それ」


 地元の子供たちは、窯や生地の練り方に興味津々。

 リリィとエルザが簡単な調理体験を開くと、笑い声があちこちから湧き上がった。


「うちのカボチャも使っておくれ!」

「栗と山ぶどうも採れたてだよ!」

 村人たちがどんどん食材を差し入れてくる。


「……これは、地元の恵みでピザ作れってことだな」

 レンは嬉しそうに頷いた。


 焼きあがったのは、秋の味覚ピザ3種。


「山の実りピザ」

 カボチャのペーストに栗、山ぶどう、ナッツをトッピング。蜂蜜をひと垂らしした甘めの一枚。


「きのことハーブの薪火ピザ」

 地元産の舞茸と椎茸をたっぷり乗せ、香草とオリーブオイルで仕上げた香ばしい一枚。


「栗とじゃがいものクリームピザ」

 乳不使用の豆乳クリームで仕立て、素朴な味わいを引き立てたヴィーガン対応。


 日が暮れ、広場の焚き火が灯るころ。

 村人たちはピザ片手にベンチや藁の上で語り合い、歌い、笑い合っていた。


「うんまっ!」「これ、また来てくれっ!」

「わしの孫がこの“ぴざ”に夢中でなぁ~」


 レンはピザを焼きながら、ふと空を見上げる。

 満天の星が瞬いていた。


「……こういう夜も、悪くないな」


 祭りの最後には、村の若者たちが太鼓を叩き、踊りの輪ができる。

 いつの間にかリリィとガルドも加わって騒ぎ始めていた。


「レン! お前も踊れーっ!」

「いや、俺はピザが――ってリリィまで引っ張るな! ちょ、こらっ!」


 夜更け。

 祭りが終わり、静けさを取り戻した山の村。


「また来てくれよな! 来年もな!」

 子供たちが手を振りながら叫んだ。


 荷車を引くレンたちは、ぬくもりの余韻を背に、山道を下っていった。

山の秋とピザの香り、そして人の笑顔――。

この一夜が、ラ・ステラにとって大切な記憶となって残る。

次回は、ふもとの街で巻き起こる**「屋外マーケット騒動」**に巻き込まれることに。

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