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異世界ピッツァ戦記〜魔王も並ぶ伝説の窯〜  作者: たむ


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32/106

第32話『ベジタリアンの試練!?肉なしピザで心を掴め!』

常連の紹介でやってきた新しいお客様は、徹底したベジタリアン。

肉も魚も卵も一切NG、乳製品すら避けるストイックさ。

肉好きガルドは早くも顔をしかめるが、レンは腕をまくる――。

 昼営業が落ち着いた頃、ラ・ステラの扉が静かに開いた。

 入ってきたのは、すらりと背の高い女性。

 深緑のローブに、首には木製のペンダント。


「……こちらが、レン様のピザ屋でしょうか」


「はい、そうですが――」


「私はルシア。菜食の信条を守る者です。

 友人から、あなたの料理なら私の心を動かせるかもしれないと聞きました」


 横で聞いていたガルドが、思いきり眉をひそめる。


「……つまり肉ダメってことか?」

「肉どころか、乳製品も卵もダメだって」

「(じゃあピザって何で作るんだ……?)」


「では、私の条件をお伝えします。

 肉類、魚介、卵、乳製品、一切使用不可。

 香辛料も過剰な刺激のあるものは避けてください」


「……ハードル高っ」

 リリィが思わず呟く。


 ガルドは腕を組み、完全にやる気ゼロの声で言った。


「そんなの、葉っぱ載せただけのピザじゃねぇか」

「ガルド、黙ってて」


 レンは考え込む。

 肉や乳製品が使えないとなれば、チーズの代替が必要だ。

 そして旨味は野菜とハーブで引き出すしかない。


「リリィ、豆腐とカシューナッツのストックある?」

「あるけど、何に使うの?」

「“ヴィーガンチーズ”を作る。豆腐とナッツをペーストにして、レモンと塩でコクを出すんだ」


 さらに、甘みのあるローストかぼちゃ、香り高いバジル、色鮮やかなパプリカを用意。

 トマトソースは玉ねぎとニンニクをじっくり炒め、自然な甘みを引き出す。


 30分後。

 窯から香ばしい香りが漂う。


「おお……見た目はちゃんとピザじゃねぇか」

 ガルドが珍しく感心した声を出す。


 焼きあがったそれは、黄金色の“チーズもどき”と、彩り豊かな野菜が華やかに散りばめられた一枚。

 レンは丁寧に切り分け、ルシアの前へ差し出した。


 ルシアは静かに口に運び、目を閉じる。


「……驚きました。

 チーズを使っていないのに、しっかりとしたコクがあります。

 野菜の甘みと香りが、心地よく広がります」


 そして小さく微笑む。


「これは……私の信条を守りながら、心を満たす料理です。ありがとうございます」


 その言葉を聞いて、ガルドがぽつりと呟く。


「……まぁ、肉は最強だと思ってるが……

 こういうのも、悪くねぇな」


「でしょ?」


 その日以来、ラ・ステラのメニューに**「森の恵みヴィーガンピザ」**が加わることに。

 菜食主義の客層から予想外の人気を集め、店の評判はさらに広がっていった。

肉の暴力ピザに続き、菜食の優しいピザも誕生。

次回はその両極端のメニューを持って、とある山間の村へ出張販売に――。

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