第30話『城下祭りと暴走屋台!ピザVS串焼き頂上決戦!?』
城下町最大のイベント「春の大祭」に、ラ・ステラも初出店!
しかし、隣に陣取ったのは火花を散らすライバル――“串焼き屋台の帝王”だった。
屋台戦争の幕が、今上がる!
春の訪れを祝う城下祭り。
石畳の大通りは屋台で埋め尽くされ、色とりどりの旗が風に揺れる。
レンたちラ・ステラも今年初めて、屋台出店の許可を得て参加することになった。
「よーし、石窯の魔導温度計OK! 生地の発酵もバッチリ!」
レンが腕まくりをする。
「お客さんいっぱい来るといいなぁ〜」
リリィは浮かれ気味だ。
そんな彼らの隣に、巨大な鉄板と炭火台を設置する一団が。
ひときわ大きな声が響く。
「うおぉーっ! 今日も串焼き一本勝負だァ!」
褐色の肌に筋骨隆々、炎のような赤いハチマキ――それが串焼き屋台の帝王・ガルド。
「……あれ、なんか戦闘力高そうな屋台じゃない?」
「いやあの人、祭りになると必ず“売上勝負”ふっかけてくるって噂だよ」
エルザが小声で言う。
案の定、ガルドが仁王立ちで近寄ってきた。
「お前ら……ピザ屋か? 俺の隣で商売するなら、覚悟しろ!」
「覚悟って……別にケンカ売ってるわけじゃ――」
「祭りは戦だ! どっちが多く売れるか、勝負だ!」
「(いやこれ、ほぼ強制イベントじゃん……)」
昼過ぎ、祭りが最高潮を迎える。
ガルドの屋台からは、香ばしい肉の匂いが立ち込め、人だかりができる。
「串焼き五本!」「塩で三本!」
炎が爆ぜるたび、歓声が上がる。
一方のラ・ステラも負けてはいられない。
窯から焼きたてのマルゲリータを次々と送り出す。
「焼きたてピザいかがですかー! ハーブの香りが広がりますよー!」
リリィの声が商店街に響く。
「ふん、肉の香りには敵わんな」
ガルドが余裕顔を見せる。
「そうかな……ほら、こっちの列も伸びてきたぞ」
レンはピザ生地を高く放り上げ、空中で回転させるパフォーマンスを披露。
歓声が起こり、子供たちが目を輝かせた。
夕方、両屋台は怒涛のラッシュ。
肉の匂いとチーズの香りが通りでぶつかり合い、まるで香りの戦場だ。
「串焼き追加ー!」「ピザあと二枚お願いー!」
もう互いに息を切らしながら焼き続ける。
そして日暮れ。
祭りが終わり、結果が発表される。
売上枚数――ピザ:362枚、串焼き:361本。
「……え、一本差?」
「くっ……! 俺の負けだ……!」
ガルドは大きく息を吐き、そして笑った。
「いい勝負だった。お前ら、気に入った! 次はタッグを組もうぜ!」
「……え、タッグ?」
「そうだ! 肉とピザ、合わせたら最強だろうが!」
こうして、奇妙な同盟が生まれた祭りの夜。
空には打ち上げ花火が咲き、チーズと肉の香りがまだ漂っていた。
串焼き屋のガルドは、今後ちょくちょく顔を出す“肉担当”として仲間入り。
次回は、そのコラボメニュー開発で大騒動に……!




