第27話『お城からのご注文!?王宮ピザ作戦、始動!』
異世界の街で人気を博すラ・ステラに、ついに王宮からの注文が!
だが、城内に食べ物を運び入れるには厳重な検査と儀式が必要で……?
レンと仲間たちは、“王様を唸らせる一枚”を焼き上げられるのか!?
「……これ、冗談じゃないの?」
レンは、依頼書を二度見した。
封筒には金の箔押し、中央には王家の紋章。
そこにはこう記されていた。
『国王陛下、貴殿の“金星のピッツァ”を所望す。
至急、王宮まで届けられたし』
「……ついに来たわね」
エルザが唇をつり上げる。
「うち、王様のおやつ係に昇格かも!」
「いやいや、そんな軽い話じゃ……」
「で、どうやってお城に持ち込むんだ?」
カウンターに肘をつくリリィ。
「それがな……これ、持ち込み検査がめちゃくちゃ厳しいんだ」
依頼書の裏面には、長々と注意事項が書かれている。
・食材はすべて“魔毒検査”を受けること
・持ち込む者は事前に身元調査
・城門通過時に“味見役”の試食が必須
・厨房入りには“衛生魔法”の儀式が必要
「これ、宅配じゃなくて冒険クエストだよな……」
翌日、王宮前。
白亜の城壁、黄金の門扉、その前にずらりと並ぶ近衛兵。
ラ・ステラの面々は、試作品のピザを保温魔法付きの木箱に入れ、列の先頭へ。
「止まれ! 身分証と搬入許可証を!」
「はい、こちら……」
書類を確認した衛兵が、厳しい目で頷く。
「……よし、通れ。ただし、毒見役の試食が先だ」
毒見役の女性が、ナイフで小さく切ったピザを口に運ぶ。
咀嚼――ごくり。
……そして、表情が一変した。
「……おかわりを!」
「いや毒見ってそういう趣旨じゃないでしょ!?」
「一応、問題なしです!」
笑顔の衛兵が親指を立てる。
続いては“衛生魔法”の儀式。
巨大な魔法陣の中心に立たされ、全身を光で洗われる。
「うわっ、くすぐったい!」
「なんか肌ツヤ良くなってない?」
「いやこれ、ほぼエステじゃん」
そんなこんなで、ようやく厨房への入場が許可された。
王宮の厨房は、磨き上げられた大理石の床、銀色の調理器具がずらり。
見習い料理人たちが慌ただしく行き交い、香ばしい匂いが漂っている。
「陛下の食卓は、今日の晩餐で披露されます。時間は日没まで」
執事がそう告げる。
「じゃあ、最高の一枚を焼こう」
レンはチーズの箱を開け、息を整えた。
石窯の炎が舞い、チーズが黄金に輝く。
焼き上がったピザは、専用の金縁プレートに乗せられ、絹のクロスで覆われる。
「……これで、陛下の元へ」
晩餐の間。
長いテーブルの奥、王冠を戴く国王が座している。
配膳役がクロスを外すと、熱気と香りが広がった。
「ほう……これが噂の“金星のピッツァ”か」
王はナイフとフォークで一切れを切り、口へ――。
「……うむっ! 美味い! 香りが豊かで、余韻が心地よい……!」
重臣たちがざわめき、料理長が驚きの目でレンを見る。
「この味……異世界の風だ!」
「褒美を取らせよう」
王は笑みを浮かべ、銀貨の袋をレンに渡す。
「これからも我が国の食卓を楽しませてくれ」
「光栄です、陛下!」
王宮を後にする帰り道、リリィがにやりと笑う。
「ねえレン……これ、“王宮専属ピザ屋”って名乗っていいよね?」
「いやまだ一回しか納品してないから!」
こうしてラ・ステラは、王様のお墨付きという最高の肩書きを得ました。
しかし次回は、その王宮経由で“ちょっと厄介な依頼”が舞い込みます。




