第24話『新メニュー開発会議、ピザの未来を語ろう』
幻のチーズを手に入れたレンとリリィたちは、さっそく“新メニュー”の開発へ。
だが、集まった仲間たちによって、会議はどんどん脱線していき――
果たしてまともなピザは生まれるのか!?
「いいか、今日の議題はひとつ!」
レンが手をパンと叩いて宣言する。
テーブルの上には、チーズ、ハーブ、果物、瓶詰めの何か(?)など、材料がずらりと並ぶ。
「幻のチーズ“アルプホルン・チーズ”を使った、新メニューの開発!」
「おお〜〜!」
「いいぞぉ〜〜!!」
集まったのはおなじみのメンバー。リリィ、エルザ、オルコット、そしてなぜか見学中のポンコツ冒険者シーナまでいる。
「さて……誰から案を出す?」
「はいはいはーーい!!」
リリィが勢いよく手を挙げる。
「このチーズ、くっっっそ美味しいから! ここは王道に、“究極のチーズピザ”じゃない!?
ほら、名前も『天空のチーズ・シンフォニー』とかさ!」
「名前がもうだいぶ浮いてるんだけど……?」
「あと“究極”って言っちゃったら、もう次が作れないよね?」
次に手を挙げたのは、エルザ。
エルフの彼女は、森の素材にも精通している。
「このチーズ、加熱すると香りが華やかになるわ。
そこに野生の木の実と、軽くスモークした魔獣ベーコンを添えたらどう?」
「それって……なんかワインに合いそう」
「お酒提供は法律と年齢がネックだね」
「異世界でも酒税は重いのか……」
「うぅ〜〜ん、みんな真面目すぎるよ!」
ぶんぶんと手を振り回しながら、今度はシーナが立ち上がる。
「いっそデザートピザにしようよ! 例えば、『甘いマシュマロとイチゴと……チョコと……』」
「ちょっと待って、それはチーズと合わせるのか?」
「いや、チーズは抜いてもいいよ!」
「開発テーマ、どこいった!?」
レンは思わず頭を抱えつつ、にやりと笑う。
「……まあ、みんなで好き勝手言い合ってる時間も、嫌いじゃないけどね」
その後も、議論は続いた。
・チーズ×トリュフオイルで香り重視
・チーズ×魔界の唐辛子で激辛系(なお危険)
・チーズ×フルーツとハチミツでデザート風
・チーズ×スライム粘液で…没!(異臭)
議事録は混迷を極めていたが、最終的に“複数の新作案”がまとまっていく。
「ふう……やっと試作品第一号が焼き上がった」
窯から取り出されたのは、黄金色に焼けたピザ。
表面にトロリと溶けるアルプホルン・チーズ。
そこにほのかにスモーキーな香りのベーコンと、ハーブの緑が鮮やかに映える。
全員で一切れずつ取り、口に運ぶ。
「……」
「……う、うま……!」
「ふわって香って、とろけて、最後に甘みがくる感じ……!」
「これ……これ、売れるやつだ!!」
「名前はどうする? 」
「ん〜、シンプルに『ラ・ステラ・スペシャル』?」
「王道だけど、ちょっとつまんないかも」
「じゃあ『幻の金色ピザ』は?」
「それもう怪しい通販番組じゃん!」
「『レンの奥義・チーズ千本爆裂』とかは?」
「採用する気ゼロだろ!?」
最終的に、ピザの名前は『金星のピッツァ(ピッツァ・ディ・ヴィーナス)』に決定。
“ラ・ステラ=金星”の店名と、“幻のチーズ”を掛け合わせた逸品だ。
「さあ、あとは明日から販売スタートだな!」
「爆売れの未来が見える〜〜!」
「責任も爆上がりの予感〜〜!!」
食材を集めて、仲間と語って、アイデアを出して――
ピザって、こうやって進化していくんですね。
次回は、いよいよ「開店当日」!果たしてお客さんの反応は!?