第23話『食材ハンター、秘境のチーズを求めて!』
より美味しいピザを――そんな想いから、
レンとリリィが向かったのは、密林の奥地にあるとされる“幻の牧場”。
そこには、伝説のチーズを生み出す魔獣「アルプホルン・ヤギ」が棲んでいるという。
だが、現地で出会ったのはとんでもない“食材ハンター”だった!?
「レン、言っとくけど、あたし、虫が出たら全力で叫ぶからね」
「はいはい。叫ぶだけならいいけど、投げないでよ。特に俺を」
深いジャングルの入り口で、レンとリリィが立ち尽くす。
目の前には、青々と茂る巨木、奇妙な鳴き声、巨大な葉がうねるように重なっていた。
「これが“スミマリナ密林”か……チーズのためにここまで来るとは」
「いや、レンが行こうって言い出したんだけど!?」
今回の目的は、伝説の“アルプホルン・チーズ”。
魔力を含んだ草を食べて育つヤギの乳から取れる希少な食材で、
数年に一度しか採れないうえ、扱うには専門の知識が必要だ。
「噂だと、その牧場を守ってる“食材ハンター”がいてさ。
気に入られた人しかヤギを見せてくれないんだって」
「で、どうやって気に入られるの?」
「……気合?」
「雑!!」
密林を進む二人の前に、突然、茂みが揺れ――
「止まれッ! その足元、毒草だ!」
バサッと現れたのは、陽焼けした肌に、革のジャケットを羽織った、
野性味あふれる女性。肩には小型の魔獣鳥が乗っている。
「お前たち、ピザ屋か? ここは甘くないぞ」
「えっ、あ、はい……え、知ってるんですか?」
「噂は聞いてる。私はルカ=ノーラ。この密林の食材ハンターだ」
ルカは険しい顔をしながらも、どこか楽しげだった。
「チーズが欲しいなら、それなりの覚悟を見せてもらう。
“素材を見極め、愛し、敬う”――それが食の道だ」
「めっちゃ厳しい!」
「でも、ちょっとカッコいい……!」
そこから始まる、“食材サバイバル修行”。
ルカの指導は苛烈だった。
・毒草と薬草の見分け方(似てるけど即死)
・魔物を避けながらミルクを搾る(搾る前に懐かせる必要あり)
・ヤギに鼻歌を歌って信頼される(音痴はNG)
リリィは虫に叫び、レンは木の実でお腹を壊し、
それでも二人は粘った。
そして三日目――
「……よくやったな。お前たち、意外と根性あるじゃないか」
ルカが案内したのは、霧に包まれた清流のほとり。
そこには、ふわっふわの毛並みと、くりっとした瞳のヤギたちがいた。
「アルプホルン・ヤギ……!」
「こいつらが産むチーズは、湿度、音、魔力の波長すら関係してくる。
……扱えるのは、お前らみたいに“食に真剣”なやつだけさ」
レンはゆっくりと、ヤギの一頭に近づき、そっと頭を撫でる。
「君たちの力、少しだけ借りるよ。たくさんの人に、君たちの味を届けるために」
ヤギは穏やかに鳴き、寄り添うようにレンの手を舐めた。
ルカは満足そうに笑った。
「また食材が足りなくなったら、いつでも来な。
次は密林のハチミツでも案内してやるよ」
「……えっ、ハチミツ? それって、アレ?」
「うん、猛毒持ちの“ダークビー”のやつ」
「やっぱり帰ろっか!?」
異世界には、食材探しも冒険のひとつ。
次回は、このチーズを使った“新メニュー開発”回!
ピザは、まだまだ進化する……!




