第21話『お届け先は海の中? 人魚姫とピザの秘密契約』
とろける温泉で癒やされたラ・ステラに、新たな依頼が舞い込む。
「海の底から、配達のお願い……?」
差出人は“アクワ・マーレ王国”、なんと――人魚の国!?
魔法と泡の中で繰り広げられる、ピザと友情の海中大作戦!
朝。ラ・ステラの店先に、一枚の濡れた羊皮紙が届いていた。
「……なんか、文字が……うっすら光ってる?」
リリィが眉をひそめ、羊皮紙を両手で広げると、そこにはこう記されていた。
『ラ・ステラ様へ
我らが王国は、あなた方のピザの評判を聞き及びました。
ぜひとも、我が王女へ一枚、届けてはいただけませんか。
ー アクワ・マーレ王国より』
「うわ、ついに人魚界隈までラ・ステラ中毒が……!」
「ピザって……水の中で配達できるもんか?」
「うん、さすがに今回ばかりは無理でしょ」
リリィが言いながら扉を開けると、そこには――
一匹のイルカが待っていた。背には、水中呼吸魔石と書かれた小さな箱。
「……こいつが、案内役?」
「やるしかないじゃん、これは!」
海辺まで運ばれたラ・ステラの移動店舗(特製ワゴン)は、魔石の力で“水中モード”に変形。
レンとリリィは呼吸用の首輪をつけ、イルカの導きで海中へ潜った。
「……ほんとに息できる。しかも髪がふわふわしてる」
「私、今すっごい水の中の妖精みたいじゃない?」
「うん、ピザ持ってるけどな」
海底に広がるのは、美しいサンゴの宮殿。
その中心には、透き通る声の王女・セレナがいた。
「よく来てくださいました。ラ・ステラのピザ、一度食べてみたかったのです」
「海の中じゃ焼けないけど……ここ、魔法釜あるじゃん」
「王国特製、泡の魔釜です!」
「泡の魔釜……!? 発酵が神速すぎる予感!」
泡の釜で焼いたピザは、表面がこんがり、内側ふわふわ。
海藻バジルと塩チーズを使った特別レシピが、王女セレナの口元をほころばせる。
「……ん……おいしい……幸せ……」
「ピザで人魚が昇天しかけてる……」
「この味、わたくしだけのものにしたい……」
王女のつぶやきに、レンとリリィは一瞬静まりかえる。
「つまり……“専属契約”ってことですか?」
「いっそ移住する? ピザ屋 in 海底?」
「いやいや、酸素問題が深刻だって!」
最終的に、週1回だけ“海底配達”ということで話がまとまり、ラ・ステラとアクワ・マーレ王国は“ピザ友好協定”を結んだ。
「人魚の国とも、繋がったね」
「異世界広すぎだろ、ほんと……」
帰り際、セレナが差し出したのは、小さな水晶のペンダント。
「この“海のしずく”を身につければ、海中でもいつでも声が届きます」
「これって……通信アイテム?」
「……注文専用です」
「本気だなこの人魚姫!!」
異世界でも、海の底でも、ピザは世界を繋げる魔法の円。
ラ・ステラの旅は、空を越え、海を越え――まだまだ広がっていきます。




