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異世界ピッツァ戦記〜魔王も並ぶ伝説の窯〜  作者: たむ


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20/102

第20話『湯けむりとチーズと休日と。ピザ屋、温泉でひと息つきます』

空中都市への配達ミッションも終わり、ひと休みが欲しいラ・ステラメンバー。

そんな時、村人のひとりが教えてくれたのは――

「この先に、極上の温泉郷があるよ」

それは、チーズのようにとろける休日の始まりだった。

「ふわぁ~……極上って言葉に弱いよな、俺ら」


 レンが大きく伸びをして、道端に腰を下ろした。


 空中配達から帰ってきたばかりの翌日、ラ・ステラは臨時休業中。

 リリィは扉に『本日、魂が休暇中です』という張り紙を貼って満足そうだ。


「ねえ、行こうよ! 温泉郷“ユノレッタ”って、チーズの蒸気風呂があるんだって!」


「それもう温泉じゃない、料理では?」


 ツッコミつつも、レンも行く気満々で荷造りを始める。


 馬車で揺られること半日。

 辿り着いた山間の温泉郷・ユノレッタは、静かな湯けむりと木の香りが立ち込める癒やしの地だった。


「……最高じゃないか、これ」


 さっそくチェックインした宿では、竹の囲いの露天風呂に、ほんのりチーズの香りが混ざった湯気がふわり。


「……ちょっと、湯がとろみあるの、気のせい?」


「“熟成チーズの湯”って書いてあるね」


「やっぱりチーズだった!!」


 それでも――


「はぁぁぁ……染みる……」


 お湯に肩まで浸かって、レンとリリィは無言で空を見上げる。


「……働いた分、ちゃんと休む。これ、大事だね」


「うん。あたし、このまま湯気になって消えたい……」


「ちょっと、店はどうするの」


 夜。

 夕食には“温泉卵チーズピザ”という、見た目も香りもトロトロな料理が登場。


「こんなん反則でしょ……」


 食事処でとなりの宿泊客も唸っていた。


「ふふふ……レン君、メニューに加えない?」


「真似できるか……いや、したいな……!」


 食後、リリィは浴衣姿で縁側に腰を下ろす。

 虫の音が、静かに夜を包む。


「……レンさ、なんであたしら、こんなとこでピザ焼いてるんだっけ」


「それ聞く? 今さら?」


「ううん、意味はないけど……なんかさ、ふとね」


「俺が勝手に巻き込んだようなもんだろ」


 レンが笑うと、リリィもふっと笑って、


「うん。楽しいよ。だから、よし」


 その笑顔が、夜の灯りに少し照らされた。


 帰り道、ユノレッタの職人からお土産をもらった。


「これ、温泉で発酵させた“とろけチーズ”。ピザに使うと、すごく伸びるよ」


 さっそくレンの目が輝く。


「温泉ピザ、試すしかない……!」


「完全に仕事モードだよ、この人」


 翌日から、ラ・ステラの新メニューとして登場した「とろけ湯けむりチーズピザ」は、

 評判を呼び、行列を作るほどの人気に。


「やっぱ、休暇って必要だなぁ……」


 ピザを焼きながら、レンはしみじみとつぶやいた。

たまには全力で休むのも、大事な仕事。

温泉で癒やされ、チーズでとろけて、心もほっこり――。

ラ・ステラのピザ、今日もおいしいです。

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