第19話『お届け先は空の上!? 雲の国の空中宅配バトル!』
レンたちのピザ屋「ラ・ステラ」に届いた、奇妙な依頼。
なんと、配達先は“空の上”!?
空中に浮かぶ王国で、ピザの香りが風に乗る!
その日、「ラ・ステラ」には一通の羽のついた封筒が届いていた。
「また妙な郵便が……」
リリィが封筒を開くと、中には金色の文字でこう書かれていた。
「天空王国クラウドリアの王女・セレスタより、至急、ピザのご注文を賜りたく――」
「クラウドリア……って、あの雲の上にある空中都市の?」
「うそでしょ、またファンタジー入ってきた……!」
リリィが盛大にツッコミを入れる横で、レンは目を輝かせていた。
「これは行くしかない! 空を駆けて、ピザを届けるんだ!」
そして翌朝。
村の魔道具屋で借りたのは、なんと――空飛ぶ配達バイク「ソラ・デリバリー号」。
「すっげえ……なんか箒のデカいやつに座ってる気分」
「揺れたら終わるって顔してるね、レン」
後部座席のリリィはすでに震えていた。
「出発だ――ピザ、空を翔ける!」
レンの掛け声と共に、バイクは大空へ舞い上がった。
上空は風が強く、空気も薄い。
雲の海を突っ切ると、やがて目の前に現れたのは――
「すご……浮いてる街だ……」
白い大理石の城と建物が、巨大な浮島の上に広がっている。
「ようこそ、クラウドリアへ」
出迎えたのは、純白のドレスをまとった少女。
彼女こそ、依頼主の王女セレスタだった。
「あなたがピザを焼く方ですね? わたくし、大のチーズ好きでして」
「お任せあれ! 本日のお勧めは“天空のマルゲリータ”! 太陽のチーズ入りです!」
だが、ピザを焼こうとしたその時。
セレスタの側近が慌てて駆け込んできた。
「姫! ライバル国家“グレイヴクラウド”の無人飛行艇が接近中です!」
「また嫌がらせ!? 今度は空中配達を邪魔するつもりね!」
……まさかのピザ阻止作戦。
「それなら――俺たちが、空中配達でぶち抜きます!」
「言ってる意味が全然分からないけど、たぶん格好良いのは分かった」
空中バイクで、敵の飛行艇群をかいくぐるレンたち。
ピザボックス片手に風を切る!
「リリィ、そっちから来る!」
「わかってる! ソース飛ばすなよ!」
まさかの“空中ピザ・ドリフト”で空中機雷を回避。
そして――
「セレスタ姫! ピザ、配達に参りました!」
空中からテラスの王女へ、美しく弧を描いて飛ぶピザ。
「見事……この芳醇な香りと、黄金のチーズの輝き……! これが“伝説のピザ”……!」
後日。
「王国の新聞に載ってたぞ、空飛ぶ配達人“ピザナイト”って」
「やめて、恥ずかしい……」
「空飛んだんだから、むしろ誇っていいと思う」
ラ・ステラの看板には、ひとつ新しい文字が加わった。
【配達エリア:空中都市対応】
空だろうが雲だろうが、ピザはどこでも届ける!
「ラ・ステラ」の配達範囲は、ますます拡大中!?
次回は、ちょっとのんびり温泉回……?