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異世界ピッツァ戦記〜魔王も並ぶ伝説の窯〜  作者: たむ


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12/102

第12話『ピザ窯は語る、薪の哲学と炎のロマン』

天空の蜂蜜ピザが大好評を博した《ラ・ステラ》。

しかしその裏で、一つの問題が忍び寄っていた――

そう、ピザ窯の限界である。

「……こりゃ、寿命だな」


 そう呟いたのは、村の大工・カルロじいさん。

 長年使ってきたレンガ製の窯は、ひびが入り、火のまわりも悪くなっていた。


「このままじゃ、安定した焼き上がりは望めんぞ、レン坊主」


「……修理じゃダメですか?」


「焼きの温度にムラが出るようじゃな。いっそ、新しく作り直したほうがええ」


 窯――それはただの設備ではない。ピザ職人にとって、魂そのものだ。


「じゃあ、作ろう。最高の窯を、ここに!」


 レンの決意に、カルロじいさんは腕をまくった。


「言ったな? 窯作りはピザより深いぞ。まずは薪からだ!」


「薪……ですか?」


「そうだ。窯に使う薪次第で、火力も香りも全てが変わる」


 というわけで、レンとリリィ、そしてカルロじいさんの三人は、村の外れにある焚き木の森へ向かった。


「ここには“オーク古木”や“ヒノキ火樹”がある。燃え方も香りも、それぞれ違う」


 レンは試しに、数種類の薪を集め、古い窯で焼き比べをしてみた。


・ヒノキ火樹 → 爽やかな香りがピザにほんのり移る

・オーク古木 → 長時間安定して高火力が保てる

・メープル枝木 → 弱火でじっくり、デザート系に向いている


「薪だけで、こんなに違うのか……」


「炎に耳を澄ませることじゃ。ピザは“焼く”ものでなく、“育てる”もんだ」


 窯の設計にもこだわった。レンが描いた理想は――


・ドーム型で熱が均一に回る形状

・薪口は広めで空気の流れをコントロール

・下部には灰を逃がすための排気孔も設置


 建材は村の粘土と耐火レンガ、仕上げはカルロじいさんの特製“灰漆喰”。


 そしてついに、**《ラ・ステラ》新窯・“ルーチェ”**が完成する。


「……行くぞ、初火入れだ!」


 火種は、焚き木の森で拾った一本の古木。

 それは、かつて村の宴を支えた祭壇の柱だったという。


 火が走り、窯全体に命が灯る。


「おお……あったけぇ……」


 リリィが思わず手をかざす。


 その火は、ただ温かいだけでなく、不思議な安心感があった。

 まるでこの村の歴史と共にある、家の灯りのようだった。


「焼くぞ、新窯一発目は――“クアトロフォルマッジ”!」


 4種のチーズと、天空の蜂蜜の相性を確かめる絶好のメニューだ。


 高温で一気に焼かれた生地は、外カリッ、中モチッ。

 チーズはほどよくとろけ、そこに蜂蜜がとろりと絡む。


「これだ……これが、《ラ・ステラ》のピザ……!」


 その夜、窯“ルーチェ”の炎は、村の空をほんのり赤く染めていた。

窯とは、ただの焼き場ではない。炎とともに生きる、職人の相棒だ。

これでまたひとつ、《ラ・ステラ》は進化した。

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