表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ピッツァ戦記〜魔王も並ぶ伝説の窯〜  作者: たむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

102/105

第102話『南への誘い』

港町フェルナンドを救い、盛大な宴を開いたレンたち。

その夜、謎めいた旅人が南の地への依頼を持ちかけてきた――。

 宴の熱気はまだ続いていた。

 港の広場には人々の笑い声と、焼き立てピザの香りが満ちている。

 だがレンは、広場の隅に腰掛けたフード姿の旅人に視線を向けていた。


「南の……依頼?」

 レンが問い返すと、旅人は低い声で続けた。

「大陸南端に“サリオス”という古い港町がある。そこが今、ある問題を抱えている」


 リリィが興味津々で身を乗り出す。

「どんな問題?」

「食料が尽きかけている」

 旅人の言葉に、場の空気が少しだけ重くなる。


 ザハルが眉をひそめた。

「南端は交易の要だろ。なぜ食料が?」

「理由は不明だ。だが……“黒い病”という言葉を聞いた」


 “黒い病”――その響きに、ヴァレッタがわずかに目を細める。

「それ、港を襲った黒い渦と関係があるかもしれないな」

「そう思って、あんたらを探してた」

 旅人は懐から金貨の袋を取り出し、テーブルに置いた。


「これが前金だ。できれば、サリオスまで来てほしい」

 レンは金貨を見もせずに、仲間たちを見渡した。


 ガルドが肩をすくめる。

「ま、次の行き先は決まったな」

 リリィは笑顔で頷く。

「食料危機なら、ピザ屋の出番じゃん!」

 ザハルも渋い顔をしながらも同意する。

「調べる価値はある」


 レンはゆっくりと旅人に向き直った。

「わかった。引き受けよう。ただし……現地でピザも売らせてもらう」

「……好きにしな」


 翌朝――

 レンたちは港町フェルナンドの埠頭に立っていた。

 アウロラ号は既に補給を終え、南の海へ旅立つ準備を整えている。


「南の海は穏やかだといいけどな」

 ガルドがつぶやく。

「穏やかじゃなかったら、またピザで黙らせればいい」

 リリィが笑い、ヴァレッタも小さく笑った。


 船が港を離れ、再び水平線の彼方へと進み出す。

 潮風が頬を撫で、甲板に積まれた小麦粉と香草の匂いが混じる。


 レンは心の中でつぶやいた。

 ――黒い病とやらが、ただの病気ならいい。

 でも……もしあの海魔と同じ“何か”なら、きっとまた戦うことになる。

南への航路は、まだ静かだった。

だが、その先で待つのは、港の黒い渦を超える未知の試練かもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ