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異世界ピッツァ戦記〜魔王も並ぶ伝説の窯〜  作者: たむ


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101/112

第101話『港町の凱旋』

黒い渦を生み出していた海魔を討伐し、港町フェルナンドはようやく平穏を取り戻した。

嵐の海から帰還するレンたちを、港の人々が待っている――。

 アウロラ号が港へ戻る頃には、空は澄み渡る青に変わっていた。

 海面は鏡のように穏やかで、先ほどまでの戦いが嘘のようだ。


「……信じられないな」

 リリィが甲板から海を眺め、微笑む。

「もう、黒い渦は一つもない」

 ザハルが頷き、帆の具合を確認する。


 港が見えてくると、そこには大勢の人々が集まっていた。

 漁師も商人も、子どもたちも、全員が手を振り、声を張り上げる。

「おかえりー!」

「レンー! 生きてたかー!」


 その声に、レンは自然と笑顔になる。

 戦いの緊張が、ようやく解けた気がした。


 上陸すると、町長が真っ先に駆け寄ってきた。

「よくぞ戻った! そして……港を救ってくれた!」

 町長の後ろで魚商人たちも泣き笑いしながら握手を求めてくる。


 ガルドは照れくさそうに頭をかき、ヴァレッタは静かに剣を納めた。

 リリィは嬉しそうに子どもたちと抱き合っている。


「で……この黒い結晶、預ける」

 レンは町長に海魔の核を差し出した。

「危険だから、専門家に調べてもらったほうがいい」

 町長は神妙な面持ちで頷き、結晶を両手で受け取った。


「礼として、この港の者たち全員から感謝と……食材を贈ろう」

「え、食材?」

「山ほどあるぞ。港の倉庫に積んである」


 案内された倉庫の中は、魚介や小麦粉、オリーブオイル、香草でいっぱいだった。

「……ピザし放題だな」

 レンは呟き、仲間たちが笑う。


「せっかくだし、港の広場で大ピザ祭りでもやる?」

 リリィの提案に、レンは即座に頷いた。

「やろう。今度は戦いじゃなくて、ただの宴会だ」


 その夜、港町フェルナンドの広場には窯がいくつも並び、ピザの香りが夜風に広がった。

 人々は笑い、歌い、海の平穏を祝った。


 しかし――宴もたけなわの頃、レンの前に一人の旅人が現れる。

 フードを深く被り、低い声で言った。


「……あんたが、海魔を倒したピザ屋か」

「そうだけど?」

「なら、頼みたい仕事がある。次は……大陸の南だ」

港の平穏を取り戻したレンたちに、新たな依頼が舞い込む。

それは、まだ見ぬ土地と、未知の食材への旅の始まりだった。

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