表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/11

第1話『ピザ窯と一緒に異世界転移!?』

深夜のピザ屋で働いていた青年・レン。

疲れとチーズの香りに包まれていた彼は、突如として――ピザ窯ごと異世界に転移してしまった!?

剣も魔法も関係なし、必要なのは小麦粉とチーズと、ほんの少しのオリーブオイル。

これは、ひとりの青年が異世界で「ピザ屋」を開くまでの、最初の一歩のお話。

 厨房に漂う、トマトとチーズの香り。


「……これで、全部っと」


 ピザ生地を冷蔵庫に戻し、チーズの袋をパチンと留める。清掃用の布巾でカウンターを拭いたところで、レンは大きく伸びをした。


「ふぅ~~~~。……今日も疲れた」


 大学に通いながら、週5のバイト。

 ピザ屋『ボーノ・ピッツァ』の深夜シフトはハードだが、もう3年もやっていると体が慣れてしまっている。とはいえ、毎晩の片付けが終わる頃には、腰が重く、眠気が全身に染みてくる。


 そして今日も、最後の最後に謎の好奇心が彼を襲った。


「このオーブン、何か……光ってね?」


 そう。店の奥に鎮座する、業務用の赤い石窯オーブン。

 高温で一気に焼き上げる本格派で、店の自慢でもある。だが、今夜のそれは、なぜか内部が青白く光を放っていた。


 レンは首をかしげながら、ぐっと顔を近づける。


「なんだこれ、電球が反射してるのか……って、うわっ!?」


 ズズズッ――という振動とともに、オーブンの中から突風のような吸引力が発生した。

 気づいたときには、レンの体がふわりと浮き、頭から窯の中に吸い込まれていた。


「あ、ちょ、待って待って!! 俺まだシフト中だか――」


 光が弾けた。


 目を開けると、空には二つの月が浮かんでいた。


 石畳の広場。木造の家々。遠くの丘に、羊のような生き物と、背中に羽を持つ人影。

 どこか異国風で、しかし現実には見たことのない景色だった。


「……え、何これ」


 レンはゆっくりと立ち上がる。スニーカーに冷たい石の感触が伝わる。


 だが、それ以上に驚いたのは、すぐ背後の巨大な物体だった。


 ピザ窯だ。


 そう、彼が勤めていた店の――あの赤いオーブンが、石畳の上に、まるで神殿のように鎮座していたのだ。


「いや、なんで!? オーブンも一緒に転移してるの!?」


 しかも、なぜか電源が入っている。うっすら中が温かい。


 混乱する頭を抱えながらも、レンは本能的に辺りを見回す。人々がざわついている。どうやら自分が「どこか別の場所」へ来てしまったことは確からしい。


「……異世界転移、ってやつか?」


 マンガやラノベでよく見る展開だ。でも現実で起きると、混乱しかない。


 そんなときだった。ガラガラッ、と窯の中から金属音。


「うおっ!?」


 慌てて振り返ると――窯の中から、なぜかピザボックスが出てきた。


「……マジかよ」


 中を開けると、アツアツのマルゲリータ。湯気が立ち、トマトとバジルの香りが広がる。


 その香りに引き寄せられるように、広場の片隅から、一人の少女が近づいてきた。


「……その丸いやつ、なんだ?」


 狼の耳と尻尾を持つ、獣人の少女だった。

第一話、いかがでしたか?

いきなり異世界へピザ窯ごと転移してしまったレン。

ですが、彼の冒険(というより日常)はまだ始まったばかり。次回は、謎の獣人少女との出会いからスタートです。お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ