表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/24

十三話 行き先:エルセレナ王国。目的:植物。動機:ムフフ?

「「国を拡大しよう!」」


朝一番。目覚まし代わりの“ツルの物理攻撃”で叩き起こされた俺の耳に、リーファとグラン──森の国が誇る二大樹(文字通り)の声が響いた。

現在時刻、朝五時。まだ鳥も寝てるわ。


「……は? 何言ってるんだよ。森の国は今も順調に拡大してるだろ」


実際、独立してからたった数日で、うちの国は驚異的に成長している。

王国から「厄介な地」として押しつけられた広大な土地。その八割を、すでに領地にしてしまったのだ。

ちなみに王国の領地は大陸でも第三位の広さ。

そのうち四割が“厄介な地”って……王様、それ本当に俺にくれてよかったのか?

しかし人口が足りず大部分は森のまま。

草と木と木と木、たまにナス。


「そうじゃなくて、もっとたくさんの植物を育てようって話だ」


「いや、俺が過労死するわ!!」


そう、森の国で“育てるスキル”を持ってるのは、現時点で俺だけ。

ノアや他の住民たちにも力の兆しはあるけど、今のところ“最初のひと育て”は全部俺の役目。

つまり、植物が増える=レント死亡へのアクセル。


「そんなに新しい植物、どっから持ってくるんだよ? また雑草から生み出すのか?」


すでに俺が雑草から育てた新種、二百種オーバー。自分でも怖い。

スキルには想像力が大事って話だけど、俺の脳内にはもう野菜がしゃべって踊る幻覚しか浮かばない。


「それなら問題なし(ノープロブレム)! エルセレナ王国に行けば未知の植物がたくさんある」

「いやいや、うちはすでに“種の交換協定”を結んでるだろ?」


実際、その協定のおかげで、向こうにはうちのナスやキャベツを送り、こっちはあちらの謎植物を多数ゲットしている。

交換した植物たちが、勝手に走り回っているのは今や日常茶飯事。


でも、リーファとグランはなぜかそろって首を振る。


「魔王軍の動きが怪しい今、正式な国同士の交流も難しくなっている」

「じゃあ、あれは?」


俺が指さした先には、昨日から滞在して焼き芋を食べ続けているリシュテリア【一応・エルセレナ王国の使者】。

列に並ぶ姿を見るのも三日目、もはや森の国民より馴染んでいる。


「……あれは例外というか、論外というか」


あっさり切り捨てられるリシュテリア。

イモを頬張りながらこっちを見て、泣いてた(ような気がした)。


そういえば最近、王国やファムリア王国の使者はよく来るけど、遠方の国からは手紙ばかり。

言われてみれば、魔王軍の

リシュテリアのエルセレナ王国は、その中でも最遠の国だ。


「国の発展は他国との交流にかかっている。我らが“育てる国”を守るには、じっとしていられん!」

「いやいやいや、待てって。道中で魔王軍に出くわしたらどうすんのよ?」


「それならご心配なく」

「うおっ!? おまっ……どこから現れた!?」


俺の背後から突然バロズ登場。元・魔王軍前線指揮官で、今や我が国の住民(というか隣人)。

すっかり森の国にも馴染み、農作業にも参加している。ちなみに今日の服は「ナス柄エプロン」。


「魔王……彼が本気で動く時は、各国に正面から攻め込むときでしょう。今はせいぜい雑兵くらいしか出歩いていませんよ」

「ほほう、さすが元・敵幹部。安心感が分厚いな……!」


「ご希望なら私が護衛しましょう。あなた様に傷一つつけさせません」

「んー、でもなあ……まだ不安が……」


「なんだレント、ビビってるのか?」


リーファが煽ってくる。目がめっちゃ笑ってる。


「へっ、ビビり大将だな」


グランまで加勢してきた。誰かこの木、斧で伐って!

と、そのとき。影からカムイが静かに登場し、俺にささやいた。


「エルセレナ王国はエルフの国……ムフフな店も多いと聞く。ワンチャン森の国に連れてこれるかもな」

「行きます。新種の植物のために!!」


こうして、俺たちの“エルセレナ王国行き”が決定した。


【外交:エルセレナ王国へ買い出し(予定外のやる気)】

【周辺国:魔王軍の気配にガクブル中】

【森の国:今日も豊作。そして元気】

【焼き芋:今日もリシュテリアが並んでる】

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ