表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/24

第十話「スパイが来たぞ!でも森が最強だった」

「うん……今日も芋は元気そうだ」


朝日を浴びながら畑を見回していた。

新しく植えた“黄金イモンゴ”は順調に育っており、葉の先がほんのり金色に輝いている。

すでに大量生産体制も整え、市場でも高い人気を誇っている。


「これで今月もイモ生活だな……!」


そう呟いたときだった。


「レント様ー!レント様ぁああ!!大変ですっ!」


森の入り口から、兵士・モリモが駆けてくる。


「なんだ、モリモ。また芋泥棒か?」

「違います!芋じゃなくて、人が、です!」


「ん? 人が盗まれたのか?」

「違います!森の外から、怪しい旅人が来ました!名前は……ええと……カッコいい感じで……“カレン”とか名乗ってました!」


「……なんでモリモが照れてるんだよ」

「そ、それが!やたらキザで、見た目も美男で……それに、森の地形や作物にやたら詳しいんです!」


――それは確かに、ただの旅人ではないかもしれない。


「怪しいなら、芋に聞こう」

「芋に、ですか!?」


「黄金イモンゴは人の心を感じるから、スパイかどうか見抜ける。名づけて……『芋心探査法』!」

「すげえ!!」


早速、“黄金イモンゴ”の一株の前にカレンを立たせた。

カレンは髪をかきあげながら微笑む。


「これは……とてもおいしそうな芋ですね」

「でしょ?」


レントがにっこり笑うと、芋がピクッと動いた。


「動いた……!」


黄金イモンゴが、葉をぴくぴくと震わせ、つるをそっとカレンの足元に巻き付けた。


「これは……!?マッサージ機能!?」

「違います!警戒モードだ!」


「バレたか……!」


カレンは跳ねのけるように後ろへ跳ぶと、懐から何かを取り出した。煙玉!


「さらばだ、農民ども!」


どかーん!


煙が辺りに充満するが、カレンは逃げられなかった。なぜなら、森の全植物が一斉に伸びて、足をからめ取り、空中で逆さに吊るしたからである。


「ふふん。森の国を甘く見たな。うちの森、防犯力高いんだぞ」

「ぐ……!」


吊るされたカレンは、葉っぱまみれで屈辱に震えていた。

そして、グランがどこからともなく登場。


「レント。こいつ、王国の隣国“ファムリア連邦”の情報員だな」

「さすがグラン!木のくせに物知りだな!」


「木を馬鹿にしてるのか褒めてるのか分からんが……まあよい」


その晩、カレンは“農業的尋問”を受けた。


「この苗木を見てみろ……これはな、“無限分裂トマト”……ちょっとでも栄養足りないと、周囲に暴発するぞ」

「そ、それって完全に武器じゃないか!」


「植物だ。どこをどう見ても、立派な“植物”だ」


俺とグランの地味な拷問(ただし心が折れるタイプ)によって、カレンはペラペラと話し始めた。


「わかった!話す!我々は、貴国の急成長に恐怖した!なぜ森の中から国家が出てくるんだと!植物で経済が回るわけないと!」

「失礼な!!」


俺はぷんすか怒った。


「植物は強い!焼いても蒸しても煮ても炒めても、主食にも副菜にもなる!どこがダメだというんだ!」

「なぜすべて食べる選択肢なんだ?」

「すみません……植物、なめてました……」


こうしてスパイ事件は解決。

とりあえずこのカレンという男は、植物監視付の牢(ツタ製)へと入れた。

だが、問題はこれだけではなかった。


翌日――


「レントさーん、王都からまた使者が来てますー!」

「あ、また?なんでだ?」


「今回の要件は……“隣国からの抗議”だそうです」

「……え?」


王都の役人が苦い顔で告げた。


「『そちらが育てた国家が、我々に圧をかけている』という通達がファムリアから届いております……」

「おかしいな?俺、圧力かけた覚えないんだけど」


ファムリアというと昨日捕まえたスパイの国だな。

直接ではなく王国を通じて文句を言ってくるあたり、腰抜け国に間違いはないだろう。


「……たぶん芋の圧、ですね」

「芋の圧て何!?物理的!?」


「市場を制した圧力です。最近、王都でも“黄金イモンゴパイ”が爆売れでして」


レントは思わず空を見上げた。


「なんか……俺、国家を築いたっていうより、植物で世界を支配しかけてる……?」

「レント様、誇ってください!あなたは“農の王”ですよ!」


「それ、微妙にかっこよくないな!」


こうして、森の国は再び世界に名を知らしめた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ