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7、冷徹王子の激怒


ゴルゾーは、ジジの冷徹な目を受けながらも、少しも動じることなく、立ち向かうような姿勢を見せた。冷気が周囲を包み込む中でも、彼の声は力強く響いた。


「待て、王子」ゴルゾーは冷笑を浮かべ、両手を広げてジジを見据えた。

「俺が金を貸した、それだけだ。返金を求めるのは、ただの商売だろう。何が悪い?」


彼は一歩踏み出し、ジジとの距離を縮めながら声を張り上げた。「誰が悪いって? お前だよ、王子!  俺が金を貸し、返済を求めているのに、それを邪魔するお前が悪いんだ! 商売に手を出す資格もないくせに!」



ジジはその言葉に冷ややかに眉をひそめ、氷のような視線でゴルゾーを睨んだ。ゴルゾーの言い分は、ある種まっとうだった。周囲の空気はますます冷たくなり、ゴルゾーの吐く息が白くなっていく。


「俺が金を貸したのは、きちんとした契約だ。そこの店主は、店も妻も、双子ちゃんも守りたいと贅沢言いやがってな、俺は善意で、こいつに金を貸してやったんだぜ。すぐに300ギリオンも貸してやった!そりゃあ利息が多少高くても、文句は言えねえんじゃねえの?」


300ギリオンは、この国の平均月収の3か月分だ。担保なしで即日、これだけのお金を貸してくれる業者は、まっとうなところではまずありえないだろう。

ジジは静かな声でモルガの主張に反論した。その言葉には鋭い冷徹さが込められている。「俺が悪いのか?人を脅し、命を弄ぶような商売をしているお前が罰を受けるのは、至極全うだと、俺は思うが」

ジジがの氷の魔術は、ピキピキとゴルゾーたちの足を凍らせていく。



ゴルゾーはその言葉に眉をひそめ、さらに身を乗り出すようにして反論した。「お前は何も分かっていない!商売は生き残るためにやっているんだ!誰かを傷つけてでも、金を回収する。それが当たり前だろう!」



「お前のやり方が商売だと?」ジジは低く、抑揚のない声で言葉を絞り出した。



「本当に商売と言えるのか?人の弱みに付け込んで金を貸して、返せない者を法外なさらに利息で追い詰め、強引に回収しているのは、王宮も把握済みだ。被害者からの訴えを聞いている。まさかモルガも……こいつらから借りているとは知らなかったが」



自分が力の限り支援していたお店で、こういうことがおこってしまったという事実に、ジジは少しやりきれなさを感じているみたいだと、コメットは思った。

少しバツが悪そうなモルガは、たばこを床に押し付け火を消した。



王宮がゴルゾーを危険視していたという事実に、ようやくはじめてゴルゾーは焦りを見せた。


「だ、だからよ。金貸しってのはそういう商売だ。返さない奴が悪い。自業自得だ」



ジジの目が鋭く光り、ゴルゾーに向けられた冷徹な視線は、まるでその背筋を凍らせるかのようだった。


「返せない者に対して、法的手続きも取らずに家財を没収し、脅迫して金品を奪う。さらには、返済期限を過ぎたら法定利率をはるかに超えた利息を要求し、絶対に返せない額まで膨らませて追い込んでいる。これが、もし合法だと思っているのなら、大きな間違いだ」



ジジはその言葉をゆっくりと噛みしめるように言った。


「君のやり方は、明らかに法令を違反している。脅迫や不当な金利を強要し、借り手に過度の負担を強いることは、明確に違法だ。トリアニス王国が定めている最大金利は6%。金貸しのゴルゾーのところでは、金利が15%だと、証言を得ているが、モルガにも聞けば、証人が増えるな」ジジはさらに一歩進み、一ミリも笑っていない目でゴルゾーを見据えた。「お前の商売は、ただの犯罪だ。」



ゴルゾーはその言葉に動揺し、凍った足はそのままに、自身の風魔法でジジを直接攻撃しようとした。

もちろん、王子に攻撃の刃を仕掛けた時点で、ゴルゾーは罪を重ねたことになる。





突如、店の奥から風が唸るような音を立てて吹き荒れた。ゴルゾーの手から放たれた風魔法が暴走し、店内を四方八方に吹き抜けていく。重たい木の棚が倒れ、積み上げられていた古い魔道具の箱が宙を舞った。

「うわっ——!」コメットが思わず身をかがめる。細かな魔法石がはじけ飛び、棚の隙間をすり抜けて床を跳ねる。彼女の長い髪も風に煽られて宙を舞い、視界が一瞬、白銀に染まった。



ジジはコメットを守るように片手で引き寄せ、咄嗟に腕を前に出し、冷静な顔のまま大きな水の膜を張り――ジジの氷魔法は水属性の応用だ――風を受け止めるように踏ん張った。その瞳には明らかな苛立ちが浮かんでいた。



「ゴルゾー、制御できていないぞ。これは暴風だ」



(立っているので精一杯……王子がいなければ飛ばされていたわ――)


「大丈夫かコメット、危険だから、俺につかまっていて」

「はい……!」


ゴルゾー自身も顔をしかめ、歯を食いしばりながら両手を広げ、風を押し返そうとしていた。足が固められている分、強風が逃げ場のないゴルゾーたちの身体を痛めつける「くっ……ちがう、こんなはずじゃ……!」彼の前髪が風に煽られ、棚の上の魔道具が次々に吹き飛ぶ。壁に掛けられていた年代物の羅針盤型魔道具が叩き落とされ、ガシャリと鈍い音を立てて砕けた。


「ああ、あの魔道具もレアものだぞ!?」ジジが悲鳴交じりに叫んだ。


壊れた場道具の破片が、ゴルゾーの風魔法によりどんどん宙を舞い、より危険な状態になっていた。精巧な歯車、手のひらほどの青い水晶、金属の接合部——もう二度と動くことはない、破片たちが、店内の人間に襲い掛かる。



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