第2話:追跡者と、少女の決意
一方、王都の外れ。
レオンは依然としてフードの少女に連れられ、王宮から遠ざかる道を進んでいた。
(僕は……どこへ連れて行かれるんだろう……)
初めて王宮の外に出たレオンにとって、この世界は未知だった。
広がる大地、空気の冷たさ、王都の喧騒とは異なる静寂――
すべてが新鮮で、同時に不安をかき立てるものだった。
「歩くのが遅いな。」
少女はレオンを振り返ることなく、冷たく言い放つ。
レオンは肩を震わせながらも、何とか声を絞り出した。
「……僕を、どうするつもりなんだ?」
少女は一瞬だけ足を止めた。
「それを知ってどうする?」
「逃げるつもりはない。でも、君の目的くらい知っておきたい……。」
少女はレオンをまっすぐ見た。彼の目には、怯えよりも「知りたい」という意志が見える。
しかし、少女はすぐに視線を逸らし、歩き出した。
「……知るにはまだ早い。」
レオンは歯を食いしばるしかなかった。
(なぜ、僕は連れて行かれている? 本当に、ただの誘拐なのか?)
その時――
「おい、お前たち!」
遠くから男たちの声が響いた。
レオンと少女が振り向くと、数人の男たちが剣を構えて近づいてきていた。
彼らの服装は王宮の衛兵ではない。だが、ただの旅人にも見えない。
「お前ら、逃げても無駄だぞ。さっさとそのガキを渡せ。」
レオンは息をのんだ。
(……誰だ? こいつらは……?)
少女の表情がわずかに険しくなった。
「……チッ、もう追手か。」
少女はレオンの腕を引き寄せると、短剣を抜いて構えた。
「ついてこい。……捕まるわけにはいかない。」
レオンは唾を飲み込んだ。
一体、何が起きているのか――
自分を狙う者たちが、誘拐犯だけではないことに、彼はまだ気づいていなかった。