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雲海の王宮と誘われた王子  作者: ちやちや
第3章:逃亡と追跡の交錯
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第1話:王宮を包む静寂と緊張

レオンが王宮から姿を消して、二日が経った。


王都の広場や市場は、普段と変わらぬ日常を保っていた。

華やかな祝祭の余韻がまだ残り、民たちは表向き穏やかに過ごしている。


だが、王宮の内部はまるで嵐の前の静けさのように、異様な緊張に包まれていた。


第一王子アーサーは、連日王宮の少数精鋭の兵を動かし、レオンの捜索を続けていた。

焦りを見せないよう振る舞ってはいたが、その指示の端々に苛立ちが滲んでいる。


「……まだ何の手がかりもないのか?」


「申し訳ありません、第一王子。王都の出入り口を封鎖し、検問を強化しましたが、未だに……」


報告する兵士の声に、アーサーは拳を握りしめた。


(……あの時、俺がもう少し気を付けていれば……)


普段、堂々とした振る舞いを見せるアーサーだが、弟が誘拐された今、その余裕も薄れていた。


静寂の中、ひとつの影が彼を見つめていた。


「冷静になれ、アーサー。」


第二王子ヴィクトルが、低く落ち着いた声で告げる。


「お前は考えすぎると視野が狭くなる。王都を封鎖するのは手だが、それだけでは犯人を捕まえられない。」


「……じゃあ、どうするべきだと言うんだ?」


アーサーは苛立ちを抑えつつ、ヴィクトルを睨むように見た。

しかし、ヴィクトルは表情を変えず、書物をめくるように淡々と続ける。


「重要なのは、“なぜ”レオンが誘拐されたのか、そして誘拐犯の目的が何なのかを探ることだ。」


「目的……?」


「無意味な誘拐ではない。レオンは王族だが、政治的に重要な立場ではない。だとすれば、攫われた理由は別のところにある。」


ヴィクトルはアーサーを見据え、静かに言葉を続けた。


「王宮の歴史を調べ直してみる。誘拐犯が王宮に恨みを抱く理由があるのかもしれない。」


その言葉に、アーサーは一瞬黙り込んだ。

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