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雲海の王宮と誘われた王子  作者: ちやちや
第1章:祝祭の朝、そして不穏な雲
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第3話:窓の外の異変

祝祭の熱気が遠くから伝わってくる。扉の外でカイが警護しているおかげで、レオンは一応安心できるはずだった。しかし、胸の奥に広がるざわつきは増すばかりで、どうにも落ち着かない。

レオンは椅子に深く腰を下ろし、頭をかきながら小声でぼやいた。


「兄さんたち、本当に不仲なんだろうか……なんでみんなあんなに面白がるのかな」


アーサーは堂々としていて、常に民衆の中心に立つ王子。ヴィクトルは口数が少ないが頭が切れ、クールな印象を持たれている。性格の違いが“不仲説”を生んだのだろうが、レオンにはむしろ、二人が微妙に互いを気にかけ合っているように見えていた。


(そんなことを考えても、僕にはどうにもできない……)


そう思いながらもモヤモヤしていると――ふいに、窓のほうから何かが落ちるような音が聞こえた。金属が触れ合うような、鈍い音。

「……?」

レオンが立ち上がって窓辺を見る。外は夕暮れに染まりつつあるのか、雲海が赤く輝いていた。視線を凝らしても何も異常はない。

だが、その一瞬の油断を突くように、ガタンッと窓ガラスが揺れ、冷たい風が部屋の中に一気に流れ込む。


「え……?」


言葉を発する間もなく、黒いフードを被った人影が音もなく飛び込んできた。レオンは思わず後ずさりするが、相手は俊敏な動きで間合いを詰め、あっという間にレオンの喉元に何か鋭いものを突きつけた。


「動くな」


低く落ち着いた声。レオンは凍りつく。

扉の外からカイの声が聞こえる。「レオン様、大丈夫ですか!」 とドアを開けようとするが、フードの人物は「騒ぐな」と言わんばかりに刃をわずかに食い込ませる。


(嘘だろ……王宮の、この部屋で、こんなことが……)


呼吸すらままならず、レオンはただ相手の冷たい殺気を感じるしかなかった。

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