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雲海の王宮と誘われた王子  作者: ちやちや
第5章:追跡者たちの思惑
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第1話:交錯する足跡

森の静寂が、妙に耳に残る。


 木々の間を抜けながら、レオンは無意識に足元へ目を向けた。


 (……?)


 何かが違う。


 森の土は柔らかく、普通なら足跡は自然と消えてしまうはずだった。

 だが、そこには明らかに最近つけられた踏み跡があった。


 (僕たちのものじゃない。)


 息をのんだが、すぐにこのことをシエラに伝えるべきか迷う。


 まだ彼女を信用しているわけではない。

 彼女はレオンを誘拐し、どこかへ連れ去ろうとしている。

 目的すら明かさないまま。


 けれど、王宮の追手から逃げる手腕は確かだった。

 この足跡が敵のものなら、今は彼女の判断に従うべきかもしれない。


 「……。」


 レオンが足跡をじっと見つめたまま立ち止まると、前を歩いていたシエラが振り返った。


 「なにか気になるのか?」


 一瞬、返答に詰まる。


 (どうする……?)


 だが、その迷いは一瞬で吹き飛んだ。


 シエラの視線が鋭くなる。


 「……待て。」


 彼女の目がレオンの足元に向いた。

 そして、レオンが気になっていた足跡をじっと見つめる。


 (気づいた……?)


 「……少し前まで、誰かがいた。」


 レオンは驚いた。


 自分が指摘する前に、シエラが察知していたのだ。


 「どこに?」


 「まだ分からない。でも、近いはずだ。」


 シエラは短剣に手をかけ、目を細めた。


 「油断するな。何かが起こる。」


 レオンの背筋に寒気が走る。


 彼女の判断は間違いなく正しい。

 それだけは、もう分かっていた。


 (信用できるかは別として……。)


 その考えがまとまりかけた瞬間、森の奥から微かな物音がした。


 カサッ……


 レオンは息をのむ。


 次の瞬間、低く抑えられた声が闇の中から響いた。


 「見つけたぞ。」


 シエラがすぐに短剣を抜いた。


 「レオン、動くな。」


 レオンの手が、無意識に何かを掴むように固く握りしめられる。


 暗がりの向こうから、黒い影がいくつも現れた。


 (――何者だ?)


 疑問を抱いたまま、次の瞬間にはもう戦闘が始まろうとしていた――。

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