表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雲海の王宮と誘われた王子  作者: ちやちや
第4章:揺れる運命と少女の秘密
14/19

第4話:隠された真実

王宮では、ヴィクトルが**「選抜式の過去」**について調べ始めていた。

王国の公文書が保管されている書庫に入り、埃を被った古い文献を開く。


重厚なページをめくる音だけが、静かな部屋に響いた。


「選抜式――王国の歴史を語る上で欠かせない儀式だ。」


王国の繁栄を願い、王族や貴族の前で選ばれた者たちが栄誉を受ける。

幼い頃から幾度も目にしてきたが、当たり前のように受け入れていたその祭典に、

今になって違和感を覚え始める。


(……何かがおかしい。)


今年の選抜式で、レオンが誘拐された。

単なる王族への敵対行為ではなく、何か“意図”があるのではないか。

その答えを探るために、ヴィクトルは書庫を訪れたのだ。


ヴィクトルの指が、ある記述の上で止まる。


「……これは。」


選抜式に関する記録の一部が、不自然に削除されていた。

ある年から、儀式に選ばれた者たちの名が綺麗に消され、行方が記されていない。


「なるほどな……“選ばれた者”の行方が、不自然に消えている。」


まるで、何かを隠すために、意図的に消されたように――。


だが、それだけではない。


他の文献をめくるうちに、彼の目にある言葉が飛び込んできた。


「王国の礎を支える――」


ヴィクトルの眉が僅かに動く。


もしかして…いや、まさかな。


急激に胸の奥に嫌な感覚が広がる。

手にした書物をもう一度読み返し、何度も確認する。


(これは……王国が公表している記録とは明らかに違う。)


もしこの記述が真実なら、王国が築いてきた栄光の裏には、決して表に出せない何かが存在していることになる。


(つまり……レオンを誘拐した者たちは、この事実に関わる何かを知っている……?)


沈黙の中で、ヴィクトルはゆっくりと拳を握りしめた。


国の記録に、偽りがある。

それはつまり、王国自体が“欺いている”ということだ。


(この国の真実は、俺たちが知っているものとは違うのか……?)


ふと、脳裏にアーサーの姿が浮かんだ。


第一王子である彼は、これを知っているのか。

それとも――すでに知っていて、黙っているのか。


ヴィクトルは静かに息を吐き、古文書を閉じた。


(もう少し調べる必要がある。)


レオンが攫われた理由も、選抜式の裏にある秘密も。

すべては、これが繋がっているはずだ――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ