第4話:隠された真実
王宮では、ヴィクトルが**「選抜式の過去」**について調べ始めていた。
王国の公文書が保管されている書庫に入り、埃を被った古い文献を開く。
重厚なページをめくる音だけが、静かな部屋に響いた。
「選抜式――王国の歴史を語る上で欠かせない儀式だ。」
王国の繁栄を願い、王族や貴族の前で選ばれた者たちが栄誉を受ける。
幼い頃から幾度も目にしてきたが、当たり前のように受け入れていたその祭典に、
今になって違和感を覚え始める。
(……何かがおかしい。)
今年の選抜式で、レオンが誘拐された。
単なる王族への敵対行為ではなく、何か“意図”があるのではないか。
その答えを探るために、ヴィクトルは書庫を訪れたのだ。
ヴィクトルの指が、ある記述の上で止まる。
「……これは。」
選抜式に関する記録の一部が、不自然に削除されていた。
ある年から、儀式に選ばれた者たちの名が綺麗に消され、行方が記されていない。
「なるほどな……“選ばれた者”の行方が、不自然に消えている。」
まるで、何かを隠すために、意図的に消されたように――。
だが、それだけではない。
他の文献をめくるうちに、彼の目にある言葉が飛び込んできた。
「王国の礎を支える――」
ヴィクトルの眉が僅かに動く。
もしかして…いや、まさかな。
急激に胸の奥に嫌な感覚が広がる。
手にした書物をもう一度読み返し、何度も確認する。
(これは……王国が公表している記録とは明らかに違う。)
もしこの記述が真実なら、王国が築いてきた栄光の裏には、決して表に出せない何かが存在していることになる。
(つまり……レオンを誘拐した者たちは、この事実に関わる何かを知っている……?)
沈黙の中で、ヴィクトルはゆっくりと拳を握りしめた。
国の記録に、偽りがある。
それはつまり、王国自体が“欺いている”ということだ。
(この国の真実は、俺たちが知っているものとは違うのか……?)
ふと、脳裏にアーサーの姿が浮かんだ。
第一王子である彼は、これを知っているのか。
それとも――すでに知っていて、黙っているのか。
ヴィクトルは静かに息を吐き、古文書を閉じた。
(もう少し調べる必要がある。)
レオンが攫われた理由も、選抜式の裏にある秘密も。
すべては、これが繋がっているはずだ――。




