第3話:少女の秘密
森の奥深く、少女はレオンを連れて歩き続けていた。
やがて、小さな廃墟のような場所へとたどり着く。
「ここで休む。」
少女は短くそう言い、レオンに腰を下ろすよう促す。
レオンは息を整えながら、彼女を見た。
「……君の名前は?」
少女は一瞬、動きを止めた。
「名前?」
「名前ぐらいは教えてくれてもいいんじゃないか?」
レオンの問いに、少女は静かに目を伏せた。
しばらくの沈黙の後――彼女は小さく口を開く。
「……シエラ。」
「シエラ……か。」
レオンはその名を口にしてみる。
どこか聞き覚えがあるような気もしたが、思い出せない。
「君は、なぜ僕を狙ったんだ?」
シエラは一瞬だけ眉を動かし、淡々と答える。
「……お前は国について何も知らないのか?」
シエラはレオンの瞳を見つめる。
彼の瞳には、純粋な疑問が宿っていた。
(……王族なのに、何も知らないのか。)
シエラはふっと息を吐き、小さく呟くように言った。
「私の家族は……王国によって殺された。」
レオンは息をのんだ。
「……王国に?」
シエラは目を伏せる。
「正確には、“選抜式”のせいでな。」
選抜式――それは、王国の繁栄を願う祝祭の一つ。
だが、その裏に何かがあるのか?
レオンは困惑しながらも、シエラの言葉の真意を知りたくなった。




