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第1話:追跡の果てに
レオンが王宮を離れて三日が経過していた。
王宮の警備網を掻い潜り、彼を誘拐した少女と共に逃げ続ける日々。
「……行くぞ。」
少女が短くそう言い、レオンの腕を引く。
目の前には鬱蒼とした森が広がっていた。
王宮のある王都から離れたこの場所は、人の気配がほとんどない。
鳥のさえずりと、木々のざわめきだけが辺りを支配していた。
「まだ逃げるのか……?」
レオンは息を切らしながら問いかけた。
少女は振り向かずに答える。
「当然だ。まだ追っ手は諦めていない。」
「それにしても……君は、逃げることばかり考えているな。」
レオンの言葉に、少女は足を止めた。
ゆっくりと振り向き、彼をじっと見つめる。
「私は“逃げる”んじゃない。目的のために進んでいるだけだ。」
「目的……?」
「お前を借りるって言っただろう。」
少女の瞳には、強い決意が宿っていた。
その目を見て、レオンは言葉を飲み込む。
この旅が単なる“誘拐”ではないことを、彼もまた薄々感じ始めていた。




