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6  お姉様の出現

 源頼光が詩織達の寝室の開き戸をおもいっきり開いた時、ミカは心音の首を片手でガッシリと掴み空中に吊り上げていた。

 心音は、眉間をしかめてうめき声を出している。


「来たか、頼光。わしの首を刎ねるなら刎ねるがいい。この女の首も跳ぶがな」


「うぬ、鬼め娘の体にとりついたな」


 そこに、定子も駆けつけた。


「構わん。頼光その女ごと切れ。その女は好かん」

 

「えっ、しかし」


 源頼光は、定子を見て躊躇した。


「斬らぬなら戴こうとしよう」

 ミカが口を開いて心音の頭に齧りつこうと心音を引き寄せた。

 その時、心音の目がかっと開かれた。強烈な眩しい光が発せられた、それと同時に心音の口からも光が発せられた。


「うわっ」

 ミカは、姿が消えるほど強烈な光につつまれて、余りの眩しさに目を瞑り心音を離した。

 心音が、そのままベッドに降り立つと、心音を覆うように強烈な光が発せられて人型が現れた。


「お姉様」

 定子は眩しさの中でその人型を見て、言葉を発した。


 光は、どんどん強くなっていくと、それに押し出されるようにミカから鬼の頭が出てきた。


 それを目に留めると源頼光は飛び出して鬼の首を斬り落とした。

 続いて、渡辺綱が鬼の首の切り口を掴んでミカの体から力づくで鬼の体を引き剥がした。


 しかし、ミカは白目を剥いて正気ではない。


「鬼の瘴気に当てられおって」


 定子は、ミカの襟元を掴むと平手で顔を叩いた。

 往復で何度も叩いた。


「誰が不気味だ」

 まだ叩いた。


「最初に言われた事を根に持っているのか中宮」

 一条天皇が呟いた。


「や、やめて」

 ミカが弱々しく手を上げる。


 定子は、まだ叩き続けた。


「これ中宮、もうよいのではないか」

 一条天皇が見かねて止めに入った。


 定子は、手を止めて息を切らして一条天皇を振り向いた。


「御上が言うのなら」


 そうして、定子は手を離した。


「はぁ、スッキリした」

 定子は上を向いて微笑んだ。


「後は、頼むぞ定子」

 光が落ち着いてきた人型がそう言うと、姿を消した。


「あっ、お姉様。久しぶりに会えたのに」


 定子は、悲しそうに光に向かって手をあげた。


 光が消えると心音は静かに横たわり、すやすやと寝息をたてる。


「あ、あなた方は何なの?」

 真っ赤になった頬っぺたを押さえてミカが体を起こした。


「ふん、気が付いたか」


「まったく、他の者達は術が利いて眠っておるのに、何故、お前には利かん」


「よいかよく聞け、我らは、お姉様の血を引く者を守る者」


「お姉様?」


「お姉様とは、神功皇后(じんぐうこうごう)の事」


「今しがた、お前から鬼を引きずり出したお方じゃ」


「古代、天皇に代わり国をまとめた。勇猛果敢にして慈悲深く神に愛されたお方である。いまや神の地位についておられる」


「我が最も愛するお方じゃ」


「そのお姉様の血族の血を飲めば1000年寿命が延びると言われている」


「それゆえ、お姉様の血族は化け物に命を狙われてきたのだ」


「我らはお姉様に頼まれた。我らにお姉様の血族を守って欲しいと」


 床まで届く髪を持つ中宮定子は、ミカを見下ろして話続ける。


「我の後ろにおるのは、源頼光(みなもとのよりみつ)渡辺綱(わたなべのつな)。酒呑童子を始めとする京に害なす数々の化け物を退治してきた者達。ゆえに、お姉様は我らに頼まれたのじゃ」


 定子の後ろにいる武者姿の二人の男が鞘に刀を納めてミカに会釈をする。






 





 

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