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【短編】現代ドラマ短編シリーズ

このごろクラスに流行るもの

作者: 烏川 ハル

   

 リバイバルブームという言葉があるそうだけど、これもその一種なのかな?

 私たちのクラスでは最近、古い遊びが流行(はや)っています。スカートめくりです。

 もちろん、やるのは男子ばかりで、私たち女子は被害者側。迷惑な話です!

 お母さんに聞いてみると、スカートめくりが一番流行(はや)ったのは1970年代で、テレビのCMや漫画の影響だったとか。当時はまだお母さんも生まれていないし、お母さんが小学生の頃には、もうスカートめくりは下火だったそうです。


 そんな迷惑な遊びを復活させて、クラスで流行(はや)らせたのは、おそらく悪ガキグループの誰かでしょう。中野田(なかのだ)くんか元木山(もときやま)くん、清海(きようみ)くんあたりだと思います。

 いずれにせよ、それは私たち女子をターゲットに始まって……。でも、すぐに標的は変更されました。男子たちは、担任の東風間(こちま)先生を狙うようになったのです!


 ちょうど今も、私の目の前で……。


「チッ! 今日も『トリ会えず』か」

「また失敗だぜ! 明日こそ……!」

 きっちりスカートを押さえた東風間先生の横を、男子二人が走り去っていきます。

 鉄壁の防御に阻まれて、スカートめくりに失敗したようです。

「こら! 廊下を走っちゃいけません!」

 二人の背中に、東風間先生が注意を投げかけますが、注意はそちらだけ。「スカートをめくるな」とは言いません。

 まあ実際にはスカートまで手は届いていないし、彼ら二人の発言の中にも直接「スカートめくり」を意味する言葉は含まれていませんからね。もしスカートめくりの方を注意されても、きっと二人は「そんなことやってない」と返すのではないでしょうか。


 ちなみに、男子たちが直接「スカートめくり」と言わないよう、彼らの間で取り決めたのが『トリ会えず』。いわゆる隠語なので、本来ならば仲間同士でしか通じないはずなのに、もう私たち女子の間にまで知れ渡っています。

 この『トリ会えず』という隠語が成立したきっかけは、東風間先生のパンツに関する噂でした。

 東風間先生は年甲斐もなく、くまさんパンツみたいな動物プリントの下着をはいている。ただしクマではなくトリ、それも青い鳥のプリントが多いらしい。「幸せの青い鳥」の逸話に(ちな)んだラッキーアイテムだが、それは身につけている東風間先生自身だけでなく、目撃した者にも幸運を招く。偶然それを目にしたおかげで初めてテストで100点とれたとか、縄跳びの二重跳びが100回できたとか、そんな実例もある……という噂です。

 そこから「トリ(青い鳥)を見ることが出来なかった」つまり「トリに会えなかった」という意味で『トリ会えず』になったのでしょうね。『トリ会えた』ではなく『トリ会えず』の方が定着するくらいですから、それほど失敗が続いている(あかし)でもありますが……。


 問題は、東風間先生のパンツの噂です。

 あのしっかり者の東風間先生がそんなパンツをはいているなんて、ちょっとイメージできませんし、実際そんな姿を目撃した者は、クラスの女子の間には一人もいません。

 きっと根も葉もない噂だろう。私たちは最初、そう思っていましたが、ある時ひょんなことから、噂の出所(でどころ)を知ることになりました。

 なんと、それは東風間先生本人だったのです!

 スカートめくりの矛先を生徒から自分自身へと変更させるために、彼女が作り出した噂でした。

 自分自身を狙わせるのは「身を挺して」というよりも、防御に自信があるからでしょうね。

 そうとも知らずに、いつまでも無駄に東風間先生のスカートを狙い続ける男子たち。やっぱり彼らは、私たち同い年の女子から見ても、とっても子供ですね!




(「このごろクラスに流行るもの」完)

   

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